( 268964 )  2025/02/23 04:37:59  
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自動車と自転車の事故が増加しており、特に未成年者による事故も多い。

未成年者が自転車事故を起こした場合、親も責任を負う可能性があり、日頃から監督する必要がある。

事故を防ぐためには交通ルールの遵守や安全な運転方法を指導することが重要だ。

自転車事故の損害賠償責任は「個人賠償責任保険」で補償されるが、自賠責保険は存在しないため、保険には事前に加入する必要がある。

親が子どもに交通ルールを教えるだけでなく、自らも模範となる運転を心がけることで事故を減らすことが重要である。

(要約)

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自転車に乗って道路を走行する子ども(画像:写真AC) 

 

 自動車と自転車による事故は、現在も頻繁に発生している。日本損害保険協会(東京都千代田区)の「自転車事故と保険の自転車事故の発生状況」によれば、2023年の自転車乗用中の交通事故件数は7万2339件に上り、交通事故全体の23.5%を占めている。2016年以降、増加傾向が続いているのが現状だ。 

 

 自転車乗用中の交通事故死傷者数を年齢別に見ると、 

 

・14歳以下:11.2% 

・15~19歳:18.5% 

 

を占め、若年層が全体の約3割に達している。このように、未成年者による自転車事故は少なくない。 

 

 兵庫県西宮市の交差点では、10歳の児童が運転する自転車と自動車が衝突する事故が発生した。一般的に、自転車と自動車の事故では自動車側の過失が大きいと考えられがちだ。しかし、この事故をめぐる訴訟では、そうしたイメージを覆す 

 

「自転車側の過失100%」 

 

という判決が下された。このニュースを知ったとき、一児の母である筆者(小島聖夏、フリーライター)の頭にある疑問が浮かんだ。自転車を運転していたのは10歳の小学生で、責任能力も賠償金の支払い能力もない。では、賠償責任は誰が負うのか。 

 

 未成年者の監督責任は親にあるため、子どもが過ちを犯した場合、親にも責任が発生する。では、自転車で事故を起こしたとき、保護者にはどのような責任やリスクが生じるのか。 

 

芝生の広場で自転車に乗る子どもたち(画像:写真AC) 

 

 東京都交通安全協会(東京都中野区)のウェブサイトによると、小学校高学年(11~12歳)以下の子どもは「事理(道理)を弁識する能力のない者(責任無能力者)」に該当し、未成年者の監督責任者である親に損害賠償責任が生じるとされている。 

 

 また、未成年の責任無能力者を監督する親は、交通事故そのものの責任を負うのではなく、「監督を怠った責任」に基づいて損害賠償義務が発生するとも説明されている。これは民法第714条に定められた規定であり、親には法的責任があるということだ。 

 

 小学生が自転車事故を起こした場合、責任は事故を起こした本人だけでなく、親権者にも及び、損害賠償義務が発生する。そのため、保護者は子どもが事故を起こさないよう、日頃から監督責任を果たす必要がある。では、こうした事故を防ぐために、どのような対策を講じるべきなのか。 

 

 

親子でサイクリングをする様子(画像:写真AC) 

 

 兵庫県西宮市で発生した事故は、児童の不注意が原因だったが、適切な注意を払っていれば回避できた可能性が高い。保護者には、日頃から交通ルールを守る重要性や、安全な自転車の乗り方を指導する責任がある。しかし、このケースでは十分な指導が行われていなかったため、事故につながってしまったと考えられる。 

 

 事故が起きたのは、信号機が設置されているものの見通しの悪い交差点だった。こうした環境では、自転車もクルマも信号を守ることが前提であり、進行方向の信号が青になったとしても、細心の注意を払って交差点に進入する必要があった。 

 

 実際に事故に遭ったクルマの運転手は、青信号を確認した上で、アクセルを踏まず徐行して交差点に進入した。しかし、そこへ赤信号を無視した児童が自転車で飛び出し、クルマと衝突してしまった。 

 

 幸いにも、クルマはほぼ停止状態だったため、児童はケガを負わずに済んだ。しかし、もし運転手が見通しの悪さを考慮せずスピードを上げていたら、重大な事故につながっていた可能性がある。 

 

 判決では、クルマ側に過失はなく、自転車側の過失が100%と認定された。その根拠となったのは次の点だ。 

 

・クルマは交差点手前で減速し、徐行していたこと 

・児童は自転車を歩道上で徐行せず、信号を確認していなかったこと 

・交差点の見通しが悪く、クルマ側は赤信号を無視した自転車が飛び出してくることを予測できなかったこと 

 

 さらに、ドライブレコーダーの映像から、児童が歩道上で徐行していなかったことや、信号が赤だったことが確認された。その結果、クルマの過失は認められず、自転車側に過失100%の判決が下された。 

 

 この事故は、児童が信号を守っていれば防げた可能性が高い。保護者には、子どもに自転車の危険性をしっかりと伝え、安全に乗るための指導を徹底する責任がある。 

 

自転車に乗る家族(画像:写真AC) 

 

 日本損害保険協会のウェブサイトには、「判決認容額」(裁判で加害者に支払いを命じられた金額)と「事故の概要」が掲載されている。 

 

 その中には、男子小学生(11歳)が夜間に自転車で走行中、歩行中の女性(62歳)と正面衝突した事故の事例がある。この事故で女性は頭蓋骨折などの重傷を負い、意識が戻らない状態となった。判決で認められた損害賠償額は9521万円にのぼる。他にも9330万円、9266万円といった事例があり、自転車事故であっても被害の大きさによっては数千万円の賠償金を支払わなければならない。未成年であっても、その責任から逃れることはできない。 

 

 自転車には事故に備えた保険があるが、自動車事故とは異なり、被害者救済のための自賠責保険が存在しない。そのため、自転車事故の損害賠償責任は「個人賠償責任保険」で補償され、自分自身のケガは「損害保険」によってカバーされる。それぞれの保険に加入する必要がある。 

 

 近年、自転車事故は増加傾向にあり、各保険会社から補償内容や保険料、加入方法が異なる多様な保険商品が提供されている。そのため、自転車に乗る際には、自分や家族に適した保険を選ぶことが重要だ。また、子どもには交通ルールを改めて確認させ、自転車でも加害者になり得ることをしっかりと伝えるべきだろう。 

 

 たとえ親が十分に注意を促していたとしても、子どもがつい危険な運転をしてしまうことはあり得る。しかし、万が一の事故が起きてからでは遅い。日頃から交通ルールを徹底させることはもちろん、大人自身も模範となるような運転を心がけることで、自転車事故の発生を少しでも減らすことにつながるはずだ。 

 

小島聖夏(フリーライター) 

 

 

 
 

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