( 269666 ) 2025/02/25 03:47:08 0 00 (撮影/写真映像部・松永卓也、以下同)
著名人に「お金」に対する思いや考え方を聞く不定期シリーズ「私とお金」。第1回は「私が社長です」の広告でおなじみ、全国でホテルを展開するアパホテルの社長・元谷芙美子さん。創業50年以上、アパホテルは日本を代表するホテルチェーンに。東京・赤坂にあるグループ本社の社長室に現れた元谷さんはミニスカート姿で、年齢を感じさせない。今日のファッションコンセプトは「お正月」。帽子についた真っ赤な繭玉は「難を転じる」縁起物として親しまれている南天の実をイメージしたものだそう。立春の穏やかな昼下がり。明るくパワフルで、元気いっぱい。ずばり「お金」について聞きました。
――社長にとって「お金」とは?
お金を貯めることにまったく興味がなくて、お金って使うためにそばにいてくれると本当に思っています。夫(編集部注:アパグループ会長の元谷外志雄さん)もとてもいい人で、「使い切って生きなさい」って、いつも言ってくれています。老後だって「ワシがついているし。なんの心配もいらない」って。お金だけでなく人生すべてに心配なことがありません。こんな幸せな人生で良いのだろうか。
■お給料はほとんど撒いている
――「宵越しの金は持たない」主義だそうですが、貯金も全然ないと聞きました。
生活費として毎月入ってくるお給料はほとんど撒いている(使っている)から、貯蓄額は50万~60万円くらいです。本当ですよ! 貯金通帳を見せてもいいですよ。買い物に行ったり、お嫁さんや部下、お客さんに何かちょっと買ってあげたり、ご飯に行ったりで、毎月楽しく使い切ります。
――ずばり、毎月どのくらいのお給料がありますか?
生活費で使う分だけです。100万円だったり80万円だったり。頂いた分は全部使い切ってきました。実際には、会社の給料としては何億もいただいていると思います。でもそのほとんどを会社に上納していて、ホテルなどの投資に使ってもらっています。株式を上場しておらず、創業者一族のオーナーの一人なので、できることだと思います。
――手元に入るお金はまわして蓄えずに生きてきた、と。
貯めておくのが気持ち悪いくらいです。とどまった水は腐る。会長は投資にまわし続け、人生を事業に捧げてきました。「金持ちになる」ことは意識しないで、一生懸命に仕事をしたあとは必ず「信用」がついてくる。ずっとそう信じて「会社ファースト」で生きてきました。何億も貯金をすることが必ずしも「しっかり生きている」ことにつながるとは言いづらいと考えています。
■とんでもなくチャンス
――将来が不安だからと地道に貯蓄をすることを優先して、投資にお金をまわせない人もいます。
貯めるだけはだめですよ! お金を牢屋に入れているようなもの。絵に描いた餅。お金は使ってあげなきゃ、死んでしまう。息ができない。たとえば不動産投資。今の日本の不動産価格の上昇はやや終焉に近いけれど、それでも安くてまだ買い時だと思います。夫と起業したのが1971年。そのあとすぐに(政策)金利は10%近くになりましたから、当時に比べると今は10分の1以下。とんでもなくチャンスに満ちていると思います。
元手がなければ銀行に行って借り入れの相談をしてみてもいいと思います。たとえば「2千万円借りたいんですが」と聞いて断られるのか、借り入れできるのか。それはまさにリトマス試験紙みたいなもの。自分の実力を知るためにも一度行ってみてもいいと思う。実力を知らずに息つぎも十分にせず走っているから、疲れてしまって「無理だわ、できないわ」となる。それではもったいない。
――昨今の新NISAなどの投資ブームについてはどう見ていますか?
投資は良いことだと思うけど気をつけなきゃいけないことも多い。自己責任の世界だから。ただ、お金に関心を持つ大きなきっかけになると思う。おおいに勉強してみなさん幸せになってほしい。ただ、できれば投資はしっかりと実社会で学んだほうがいいと思います。
――お金に対する向き合い方を教えてください。
愛おしんで大切に使う。私はお金を使うことに対する恐怖心がまったくないので、小さなチャンスがあったらひるまずどんどん投資します。ワクワクしながら使います。お金は夢を叶えてくれるものだから。お金は元気に撒いてくれる人のところによってくるんじゃないかなって思ってる。私、人生もですが、お金に関しても失敗したことがないんです。実力以上に幸せになって、日本一に届くところまで会社も大きくなって本当に幸せ。コロナ禍で感染者のために、ホテルを行政に提供したときも、少し迷いましたが、今にして思えばみなさんに感謝してもらって本当に良かったと思っています。お金は人や周囲に感謝しながら使うことが大切ですね。
会長のおかげであんみつ姫みたいに守られてここまでやってきた。実力以上に評価していただいて今こうして幸せでいます。私、ハウス栽培の社長だから(笑)。だからこそみんなに感謝して、誰よりも努力しないと。誰よりも成果を出して、周囲の方たちにそれを還元する。これが生き甲斐です。会社をつくって以来ずっとそういう考えです。感謝は物に対してもそうです。10年前に買ったユニクロの洋服も大切に着ています。
■封筒に38万4千円
――お財布を持たないと聞きました。
「お金は大切に使いましょう」と筆で書いた封筒に入れて持ち歩いています。使った金額はその都度封筒に書いています。今はちょうど先月末にお給料が入ったばかりだから封筒に38万4千円入っています。
――家はいくつ所有していますか?
具体的に数えられるのは大きいおうちが3つくらいかな。夫から銀婚式でホテルを1つ借金付きでもらいましたが、おかげさまで完済しました!
――最後に改めてお金が貯まる秘訣を聞かせてください。
お金は心を潤す魔法の湧き水みたいなものかな。なくなるものじゃなくて、湧いてくるもの。どんどん可愛がって使ってあげてまわしてあげれば天下のまわりもので、湧いてくる清水のようなものだと思っています。お金を愛でて、愛でて、愛でてあげるんです。
(構成/AERA dot.編集部・大崎百紀)
元谷 芙美子(もとや ふみこ)/1947年、福井県生まれ。福井県立藤島高等学校卒業。アパホテル株式会社代表取締役社長。夫・元谷外志雄(現アパグループ会長)が1971年に創業してから公私ともに支え、1994年にアパホテルの社長に就任。2006年に早稲田大学大学院公共経営研究科修士号を取得し、2011年には同博士課程を修了。新都市型ホテルをコンセプトに、アパホテルネットワークとして全904ホテル12万9527室(2025年2月4日現在)を展開中。アパグループは、創業以来53年黒字経営を続け、2024年11月期は連結で売上高約2200億円、経常利益約700億円で、ともに過去最高を更新。
大崎百紀
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