( 270494 ) 2025/02/27 05:05:58 1 00 2024年の家計調査によると、世帯の消費支出は前年比1.1%減の30万243円だった。 |
( 270496 ) 2025/02/27 05:05:58 0 00 自動車とガソリン(画像:写真AC)
総務省が発表した2024年の家計調査によると、ふたり以上の世帯の月間平均消費支出は30万243円となり、物価変動を除いた実質支出は前年同期比で1.1%減少した。消費支出の減少は2年連続であり、個人消費の回復にはまだ時間がかかると見られる。
一方、国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は約460万円。可処分所得の伸び悩みが続くなか、家計の支出を見直す動きが活発化している。そのなかでも、大きな固定費のひとつである「クルマの維持費」に注目が集まるのは当然の流れといえる。
パーク24が実施した「クルマの維持費」に関する調査(2025年2月7日発表)によると、クルマを保有しない人の約3割が「維持費の負担」を理由にクルマを手放している。では、こうした決断は本当に「賢明な選択」と言えるのだろうか。
タイムズクラブ会員5244人を対象に行われた調査の結果(画像:パーク24)
今回の調査では、クルマ保有者の44%が月額2万円以下の維持費で済んでいる一方、2万円を超える層も増加傾向にある。とりわけ影響が大きいのは
・ガソリン価格の上昇 ・自動車保険料の値上げ
だ。さらに、車検代や税金といったコストも家計に重くのしかかる。
維持費の負担が増すなかで、特に都市部では
「カーシェアリングや公共交通の活用で十分ではないか」
という考えが少しづつ広まりつつある。しかし、クルマを手放したことで生じるデメリットにも目を向ける必要がある。
クルマの維持費削減は短期的には家計にプラスの影響をもたらす。しかし、移動コストの総額を考えたとき、それが本当に合理的な選択であったかは慎重に検討すべきだ。
例えば、都市部であれば鉄道やバスの利用が中心となるが、週末の遠出や雨の日の移動ではタクシーやレンタカーを使う機会が増えるだろう。
仮に月に2回レンタカーを利用し、1回あたり1万円かかるとすれば、それだけで月2万円の出費となる。さらに、日常的にタクシーを利用する機会が増えれば、年間の交通費は予想以上に膨らむ可能性がある。
また、地方都市や郊外では公共交通の利便性が低く、クルマなしでは生活の自由度が大きく制約される。特に通勤や子どもの送迎が必要な世帯では、クルマを手放すことで日々の負担が増えるケースも少なくない。
自動車保険のイメージ(画像:写真AC)
クルマの所有には単なるコスト以上の価値がある。例えば、「好きな時間に移動できる自由」は、公共交通に依存する生活では得難い。特に高齢者にとっては、移動手段の確保が生活の質に直結する。
また、クルマは単なる移動手段ではなく、家族や友人との時間を豊かにするツールでもある。週末のドライブや、買い物の利便性など、「クルマがあるからこそできること」が意外と多いことに、手放してから気づく人も少なくない。
維持費の負担を考えると、従来の「所有する」発想を変えることも選択肢となる。例えば、サブスクリプション型のカーリースを利用すれば、初期費用を抑えつつ定額でクルマを持つことができる。また、短距離移動はカーシェアリング、長距離移動はレンタカーという使い分けもひとつの方法だ。
企業側もこうした変化に対応し、新たなモビリティサービスを次々と打ち出している。例えば、あるカーシェアリング企業では、定額制で乗り放題のプランを導入し、都市部での「クルマ離れ」に歯止めをかけようとしている。
自動車(画像:写真AC)
「維持費が負担で手放した」
という判断は、一見すると合理的に思える。しかし、実際の生活において「クルマがあることの価値」を見落としてしまうと、結果的に不便を感じる場面が増え、別のコストが発生する可能性がある。
重要なのは、単にコストを削減することではなく、「自分のライフスタイルにとって、最適なモビリティの形は何か?」を考えることだ。クルマを持つかどうかは、単なる家計の問題ではなく、生活の質そのものに関わる選択なのである。
鶴見則行(自動車ライター)
|
![]() |