( 270674 )  2025/02/27 16:31:25  
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2019年から、歌舞伎町のTOHOシネマズ周辺に集まる未成年たちが「トー横キッズ」と呼ばれ、その活動が問題として度々報道されている。

この記事では、未成年と警察の関係に焦点を当てており、未成年たちが警察の存在を常に気にしている様子や一斉補導に対する対応などが記されている。

一斉補導の際に警察から逃れようとする未成年や、逮捕される大人たちも報じられている。

記事の最後には、ライター自身が未成年のナナと20代のタクヤのエピソードを通じて、未成年の問題に直面する現実も描かれている。

(要約)

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筆者提供 

 

 歌舞伎町「TOHOシネマズ」周辺に溜まる少年・少女たちが「トー横キッズ」と呼ばれ始めたのは2019年のことだった。以来、未成年による援助交際、暴行行為、オーバードーズなど、犯罪の温床として度々メディアに取り上げられるようになった。しかし、問題はいまだ解決していない。「トー横キッズ」の現地取材を続けるライター・ツマミ具依がその実態を届ける。第1回は「トー横キッズと警察のいびつな関係性」について――。 

 

トー横キッズが溜まる歌舞伎町の「シネシティ広場」 

 

「あのー、“私服”ですか?」 

 

 私がトー横に顔を出すようになった当初、トー横キッズに何度も言われたセリフ。“私服”とは、私服警官のことだ。 

 

「警察って、警察か聞かれたら正直に答えなきゃいけないんだって。だから聞いてるの」 

 

 トー横に通う未成年は、警察の存在を常に警戒している。中高生が警察を「私服」と俗称で呼ぶのは異様であるが、共通の言葉を使いこなす連帯感も感じる。 

 

 警視庁少年育成課の発表によると、2024年1月~11月にトー横周辺で補導された少年・少女は725人で、同期比138人減となった。人数が減ったのは、単純にトー横キッズの全体数が減少しているだけとはいいがたい。 

 

「今日、一斉補導があるらしいから気を付けて」 

 

 彼らが常日頃から気にしているのが、一斉補導だ。無論、一斉補導が警察から事前に告知されることはない。だが、警察が普段より多数目撃されたり、過去の傾向から予想がついたりすると、お互いに注意を呼びかけあったり、SNSで情報が流れたりする。繰り返されている一斉補導は、いまや情報戦なのだ。 

 

22時には人だかりができていた 

 

 12月7日の一斉補導もそうだった。22時、セブンイレブン新宿東宝ビル店前には30人ほどのトー横キッズが集まっていたが、徐々に人が減っていく。自宅に帰る人や仲間の家に泊まる人は駅へ向かい、ホテル暮らしをする人は宿に戻った。そして23時には未成年の姿はなくなり、10人程度の成人組だけが残った。 

 

 23時過ぎ、複数人の私服警官がトー横に現れ、地雷系ファッションの女子に声をかけた。6人の私服警察が女子を取り囲み、それだけで威圧感がある。「わたし未成年じゃないんだけど」と19歳の女子は不満げにいう。身分証を見せて持ち物検査に従うが、それでも警察は引き下がらず、親に連絡を入れさせていた。 

 

「おつかれー」 

 

 警察が去って女子が輪に戻ると、仲間がねぎらいの言葉をかけた。そんな傍ら、別の仲間が「私服、あっちにもいるよ」と情報共有をしていた。警察という共通の敵がいることは、仲間意識を高める種となっていることを感じた。 

 

 補導によって状況が好転した人も、少なからずいると信じたい。しかし、そんなケースは共有されることはなく、ただただ警察ヘイトの感情が広がっている。 

 

 一斉補導とともに報じられるのが、未成年誘拐の疑いで逮捕される大人たちだ。夏のある日、私も危ういことがあった。 

 

 

「今新宿駅にいるんだけど、ナナ(仮名・15歳)が終電逃しちゃって。こっち来てくれない?」 

 

 23時頃、焦った口調でLINE通話をかけてきたのは、タクヤ(仮名・20代前半)だ。言われた通り、私はトー横からJRの改札付近へ駆け足で移動すると、立ちすくむナナとタクヤを見つけた。タクヤはスカイブルーのジャージ、ナナはピンクのドンペンサンダルを履き、家路を急ぐ大人の中で二人は遠目でも目立っている。ツインテールのナナは、身長が140㎝ほどしかなく、見るからに子供だ。 

 

「このまま俺と2人でいると、明らかにヤバいから」 

 

 傍から見れば誘拐と疑われる状況だ。女性の私がくることで、その疑惑は多少緩和されるだろう。親との関係に悩むナナは「どうしたらいいかわかんない」とうずくまる。タクヤは事の経緯を説明しながら、私にこう話した。 

 

「ナナ、親には友達の家に泊まるって言ってあるんだって。『勝手にして』って親に言われてて、明日の朝にはすぐ帰るし、捜索願い出されるってことはまずないから」 

 

 それって……。 

 

 私は察した。タクヤは、暗に私の家に泊めてあげてほしいと言っている。家出生活が続く彼は、ときどき自殺をほのめかすこともあったため、本当に困ったときがあったら私の家を頼っていいと伝えていた。だが、それは彼が成人していることが前提にあるからで、未成年を泊めることは想定していなかった。 

 

ツマミ具依 

 

 

 
 

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