( 270729 )  2025/02/27 17:39:17  
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自民党、公明党、そして野党第2党の日本維新の会が2025年度政府予算案の修正で合意したことで、石破茂政権が予算成立を確実としました。

しかし、維新内での対立や不祥事などにより今後の参院選は厳しい戦いが予想されています。

また、吉村氏を中心にした維新の党内対立や政党支持率の低下が懸念されており、各党の協議も続いています。

吉村氏に対する党内批判も相次いでおり、今後の維新の運営には懸念が残る状況です。

(要約)

( 270731 )  2025/02/27 17:39:17  
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(写真:時事) 

 

 自民、公明両党と野党第2党の日本維新の会(維新)が25日、2025年度政府予算案の修正協議で「教育無償化」「社会保険料引き下げ」などで合意したことで、石破茂政権が切望する予算成立が確実となった。これにより、前半国会の最大の焦点だった予算案をめぐる与野党攻防は「“円満決着”の形」(自民国対)となり、石破首相ら政府与党幹部と維新の吉村洋文代表(大阪府知事)ら幹部は、それぞれ「安堵」と「得意満面」の表情だ。 

 

 ただ、急転直下にもみえた今回の自公維合意の舞台裏では「複雑怪奇な駆け引き」(同)もあり、改めて「吉村維新」の前途の多難さを浮き彫りにした。なかでも、吉村氏を軸に「大阪党」の色彩を強める維新は、昨秋の衆院選での「敗北」を受けての党内の“東西対立”による内紛が激化する一方、兵庫県知事選に絡む地方議員の「不祥事」も抱えているため、「今回の“成功”とは裏腹に、参院選は厳しい戦いを強いられる」(選挙アナリスト)ことは避けられそうもない。 

 

 25日夜の自公維合意の経緯や結末については、NHKや民放テレビ各局のニュースや情報番組で大きく取り上げられ、中央紙もほとんどが26日付け朝刊の1面トップで報じるとともに、政治面でそれぞれ分析・解説記事を展開した。「報道ではまさに維新の日」(民放幹部)となったが、その一方で兵庫県知事の内部告発問題をめぐる維新県議の処分問題も取り上げられ「明暗が交錯する報道内容」(政治ジャーナリスト)となったことで、「維新の政治的立場の危うさ」(同)も露呈した。 

 

■「成果」を自賛する吉村氏に党内批判相次ぐ 

 

 吉村氏は、合意を決めた自公維党首会談で「これからも公約を実行する。少しでも社会を変えるため前に進めていきたい」と与党との政策協議の成果を自賛した。しかし、そこまでに至る党内手続きが混迷を極めたことで、吉村執行部の威信低下は否定できないのが実態だ。 

 

 そもそも修正協議では、維新側の内部対立ばかりが際立った。25日昼過ぎからの両院議員総会でも、執行部に距離を置く議員からの異論、反発が相次ぎ、2度の休憩を挟んでの夕方、ようやく多数決で3党の合意文書案への賛成を決めるという経過をたどった。結果的に教育無償化などの〝戦果〟は得たものの、党を率いる吉村氏の政治姿勢や、幹部の根回し不足への批判はなお根強く、「今後の党内運営の円滑化につながりそうもない」(東京維新幹部)との厳しい見方が広がる。 

 

 

 今回の自公維合意について、石破首相(自民党総裁)は党首会談で「精力的に粘り強く協議され、合意にこぎ着けたことに、心から敬意を表する」とまずは担当者をねぎらった。そのうえで石破首相は、「与野党の建設的な協議と合意は意義深い。合意事項の実現に向け、責任と誠意をもって対応する」と真剣な表情で同席した3党幹部に改めて今後の誠実な対応を促した。 

 

■3月3日以降の衆院通過でも「年度内成立」は可能 

 

 一方、与野党が基本合意した今後の予算委の審議日程をみると①27日午前の旧安倍派会計責任者参考人招致とそれを受けての「政治とカネ」の集中審議②27、28両日の分科会審議――などとなっており、政府与党が目指してきた2025年度予算の自然成立が決まる3月2日までの衆院通過は「事実上断念せざるを得ない」(自民国対)のが実態。ただ、参院は自公が過半数を維持しているため、「3日以降の衆院通過でも審議が順調なら、年度内成立は十分可能」(同)との見方も少なくない。 

 

 そうした中、自民、公明両党は26日も国民民主、立憲民主両党との修正協議を継続した。これについて与党幹部は「自民は維新との合意を『部分連合』と位置づけ、夏の参院選までの政権運営の円滑化を目指しているが、今後の維新との連携はなお不透明だ」と分析。「だからこそ、野党第1党の立憲民主や、国民的支持を集める国民民主との政策協議をやめるわけにはいかない」と表情を引き締める。 

 

 今回の自公維合意の内容や経過を踏まえ、各党幹部の間では「今国会で立憲民主などが内閣不信任決議案を提出しても、維新は反対せざるを得ない」(自民幹部)との見方が広がる。しかし、吉村氏は合意後の情報番組出演などで、「内閣を信任するかしないかは、時点での政治情勢次第」とあえて踏み込んだ言及を避けている。その背景には党内の「自民に寄り添うことで、維新の政党支持率の低下につながるとの不満や批判の顕在化を避けたい思惑がある」(東京維新幹部)との指摘もある。 

 

 

■悩みは「共産党との最下位争い」の政党支持率 

 

 そこで多くの維新幹部が不安視しているのは、昨秋以来の各種世論調査での政党支持率の低迷だ。主要メディアが実施した世論調査の中で、テレビ朝日が自公維合意直前の2月22、23の両日に実施した調査の政党支持率をみると、維新は4.7%で主要7党の中ではれいわ新選組(5.1%)も下回り、共産党(3.3%)との最下位争いとなっている。もちろん、今回の「教育無償化」などへの評価での支持率アップは見込めるが、「あくまで一時的なものとなる可能性が大きい」(世論調査専門家)との厳しい見方が多い。 

 

 そうした状況について、吉村氏の党運営に厳しい注文を付けるのが、橋下徹元大阪市長とともに「維新の生みの親」を自認する松井一郎元大阪府知事だ。同氏は自公維合意に合わせて25日夕刻に配信された地元・関西テレビの単独インタビューの中で「今の維新は古い政治の体質がしみ込んでしまった。残念で仕方ない」などと現在の吉村体制への失望や不満を語った。 

 

 松井氏はまず、兵庫県知事の内部告発問題を巡る維新県議の対応について「そもそも秘密会にしようと決めたのがおかしい。秘密会じゃなくオープンでやり、プライバシーのことがあるなら、議事録でその部分だけ黒塗りすればよかったのにそれをやらなかったことが一番の問題」と指摘し、「その時点で僕らが作った時の維新とは違う。僕や橋下さんのときはどんな会議でもクローズで物事を決めることはなかった」と断じた。 

 

■創業者・松井氏は「吉村一強」からの脱皮を求めるが… 

 

 松井氏はさらに、大政党となった維新の党運営について「吉村さんにすると、2011年に一緒に公募してきたメンバーを守っていきたい。僕や橋下さんは、維新は政策を実現する道具だから 、守りたいなんて一言も言ったことはなかった。そこは、我々と吉村さんが同じ感覚でというのは無理がある」と指摘。 

 

 そのうえで松井氏は「(吉村氏は)そういう中で頑張ってくれてるので、サポートする人たちがもっと前面に出る必要がある」と“吉村一強”の党運営からの脱皮を訴えた。しかし、維新関係者の間では「内紛が拡大しつつある現状では、吉村氏の下での維新の結束強化は極めて困難」との悲観論が支配的で、吉村氏の苦悩はまだまだ続きそうだ。 

 

泉 宏 :政治ジャーナリスト 

 

 

 
 

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