( 271349 )  2025/03/02 05:50:21  
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政府が備蓄米を放出する事態がコメ価格高騰を助長し、転売業者が増加していることが報じられている。

農水省は市場に15万トンの備蓄米を放出すると発表し、需給調整の影響や在庫確保競争が価格高騰の要因とされている。

複数の業者が在庫確保のため行動し、中国人向けSNSで転売が活発化している。

転売業者が米を仕入れ、飲食店やネットオークションなどで販売していることが報じられている。

(要約)

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コメ高騰で備蓄米を放出する事態に(倉庫内に積み上げられた政府の備蓄米。時事通信フォト) 

 

 米の価格高騰が止まらない。政府は備蓄米の放出を発表したが、この事態に乗じて急増しているのが“転売ヤー”だ。彼らは何者で、いかにして“商品”を仕入れ、どのように売っているのか──実態に迫った。【前後編の前編】 

 

 2月上旬、厳寒の新潟県。“売り主”に指定されたスーパーの立体駐車場に赴くと、男女2人組が白いミニバンに乗って現われた。車から男女が降り、訝しげな表情の女性が早口の中国語で「どこから来たのか」など聞いてくる。「コメの転売ヤー」と接触した瞬間だ。 

 

 昨年夏頃から続く米の価格高騰は収まる気配がない。農水省によると今年1~2月の5kg当たりの平均小売価格は3688円と、前年同期比82%増だった。都内のスーパーなどでは5kgのコシヒカリが1袋4000円超で売られるケースも見られる。 

 

 2月14日、農水省は政府備蓄米100万トンのうち15万トンを市場に放出すると発表。価格高騰の理由が「米の流通の目詰まり」にあるとし、その「円滑化」を目的に備蓄米を放出するという。 

 

 そもそも2024年産米の生産量は前年比18万トン増と不作ではなかった。 

 

「令和の米騒動」が起きた要因について、農業ジャーナリストの松平尚也氏は「農水省による長年の需給調整の影響」と「業者間の在庫確保競争」を指摘する。 

 

「農水省は米の消費量減少に応じて生産を抑制する政策を長年続けました。供給に余裕のない状況が常態化するなか、インバウンド需要を含む消費の回復などが要因となって、昨年6月末時点の米の民間在庫量は前年同期比41万トン減と記録的な低水準に陥りました。 

 

 この在庫不足が昨夏の価格高騰を招き、新米の流通以降も多くの業者が在庫確保に動きました。農協の買取価格より高値で取引する業者が増え、さらなる価格高騰を招いたと言えます」 

 

 米の流通は、農家から農協が集荷し卸業者を経て市場へ供給されるルート(およそ半数)と農家が業者や個人と直接取引するルートに大別される。 

 

 千葉県いすみ市で米の製造・販売を手掛ける「新田野ファーム」代表取締役の藤平正一氏が言う。 

 

「昨年の暮れ頃から、新規の仲卸業者や街中の米屋さんが直接買いに来るようになった。うちが業者に売る令和6年産米は1俵(約60 kg)で3万9000円だけど、農協の買取価格は同じ1俵で2万円。生産コストを考えたら農協より業者のほうがいいが、自分たちの販売ルートを持たない農家は農協に出すしかないですよね」 

 

 価格高騰を好機と捉えて参入する買取業者が増えるなか、注目を集めるのが「転売ヤー」だ。とりわけ中国人向けSNSで日本の米の転売をめぐるやり取りが活発で、〈本日新潟コシヒカリ15袋入荷。飲食店歓迎〉〈千葉の米わずかに入荷。東京付近配送可能〉などの中国語の投稿が連日のようにアップされている。 

 

 新田野ファームにも、転売目的で米を仕入れに来たという。 

 

「1月からつい最近まで、『5俵でも10俵でもあるだけください』って中国人が来ていたよ。『そんなに出せない』と断わったけど、ワンボックスカーにどこかで買った5俵分くらいを積んでいたな。仲間の飲食店やネットオークションに出しているらしいよ」(藤平氏) 

 

 後編記事《【コメ転売の現場】中国人向けSNSを通じて“転売ヤー”に接触 中国人カップルは「どこから来た?」と質問、「同胞を助けるためにやっている」と語る飲食店主も》では、実際に中国人向けSNSを通じて、転売ヤーに接触を試みた結果について、詳細にレポートしている。 

 

※週刊ポスト2025年3月14日号 

 

 

 
 

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