( 271691 ) 2025/03/03 06:33:06 0 00 会談で言い合いとなったトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領=ワシントンで2025年2月28日、ロイター
トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の2月28日の会談が決裂したことで、トランプ氏が目指すロシアとウクライナの停戦の先行きは一層見通せなくなった。一方で、停戦が実現しない段階でも米政権はウクライナへの軍事支援の停止を検討しているとの報道もあり、ウクライナにとっては厳しい局面が続きそうだ。
米紙ワシントン・ポストは、米政権が会談の決裂を受けて、ウクライナへの軍事支援の停止を検討していると報じた。数十億ドル(数千億円)規模のミサイルや砲弾などの供与差し止めが含まれるという。
また米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、当局者や専門家は、ウクライナは米国の支援がなくても少なくとも数カ月は現在の戦闘能力を維持できる可能性が高いとみている。ただその後は弾薬不足に陥り、兵器の一部も使用できなくなる恐れがあるという。
会談の決裂はウクライナにとって大きな痛手だ。与党・共和党からはゼレンスキー氏を批判したトランプ氏やバンス副大統領に対して「米国が利用され、軽んじられる日々は終わった」(ジョンソン連邦下院議長)などと称賛する声が相次ぐ。親ウクライナとして知られる共和党重鎮のグラム上院議員でさえも、ゼレンスキー氏の辞任に言及した。
一方で、民主党からは「ウクライナや同盟国をあざけることは、プーチン露大統領にだけ利益をもたらす茶番だ。トランプ氏とバンス氏は米国は信頼に値しないと世界に伝えている」(リード上院議員)などと批判する声が上がっている。
そもそも会談の決裂の背景には、ロシアを巡る根本的な意見の対立があった。ウクライナはこれまでロシアが停戦合意を破ってきたことから、停戦後のロシアの再侵攻を防ぐため、米国が関与する形での「安全の保証」が必要だと訴える。
トランプ氏は「プーチン氏は自身(トランプ氏)を尊敬しており、約束は守る」と主張。安全の保証も欧州が担うべきだとの考えだ。会談ではトランプ氏が「私とプーチン氏は多くの苦難を経験した」と述べるなど、親近感をみせる場面すらあった。
トランプ氏のロシア寄りの姿勢は容易には変わりそうになく、ウクライナや欧州との隔たりは大きい。トランプ政権は今後もロシアとの関係改善に向けた取り組みを進めるとみられる。
一方で、停戦の重要性にも引き続き言及している。トランプ氏は会談後、SNS(ネット交流サービス)に「和平に応じる準備ができれば戻ってくればいい」と投稿するなど、ウクライナとの交渉の可能性は否定していない。米側はウクライナの出方を見ながら今後の対応を検討するとみられる。【ワシントン松井聡】
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