( 271864 )  2025/03/04 05:00:35  
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政府の備蓄米の保管場所について記事が紹介されている。

外国人が投機目的で買い占めた米が、民間保管施設や個人宅に保管されている例が紹介され、米不足が起きた一因として指摘された。

しかし、高額で売れずにトラブルも生じており、日本人の主食である「米」の性質や取り扱いを理解せず、不安定な状況となっていることが紹介されている。

(要約)

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倉庫内に保管されている政府の備蓄米(時事通信フォト) 

 

 全国のスーパーで販売されている米の平均価格が5kgあたり3892円(2月16日までの一週間、農林水産省調べ)まで上昇した。一年前は5kgあたり約2000円で、対前年同期比較で90%上昇した計算で、日本人の主食である「米」が足りず、価格が高止まりしている。1918年米騒動の前には買い占めなどの米穀投機が発生し、それがさらに庶民の怒りを買った。「令和の米騒動」でも投機目的の買い占めが発生していると言われるが、買われた米はどんなもので、どこに保管されているのか。ライターの宮添優氏がレポートする。 

 

 * * * 

「あなたたちが私たちを悪いというから、商品がマッタク売れないよ!どうするの?」 

 

 筆者の取材に対し、こうまくし立ててきたのは、群馬県南部在住のベトナム国籍の男性(40代)。男性が同郷の仲間数人と暮らす平屋の賃貸住宅の玄関脇には、群馬県産や茨城県産と書かれた米袋が何十と積み上がっている。しかし、袋に記載されるはずの生産地などの情報欄は空欄のまま。風湯で肌寒いとはいえ、居室から流れてくる暖房の空気も、米袋を直撃しているような状況だ。 

 

 これらの米は昨年秋から今年にかけて、仲間うちで日本国内の農家やブローカーを訪ねて買い集めた「新米(の玄米)」なのだという。玄関に積み上げられた米袋を見て「米の管理は適切なのか」と質問したところ、男性は血相を変えたのだ。 

 

「うちのお米は怪しくない、ちゃんとしていますよ。日本のお米。あなたが来て、悪く言うから売れない!」(ベトナム人の男性) 

 

 米価が急上昇し「令和の米騒動」という言葉が定着しつつある昨今。農業に関わる実績が全くない「ブローカー」などが買い占めていることが、今般の米不足の原因の一つ、と指摘する声も相次いでいる。一方、冒頭で紹介した事例を含め、実際に「米を貯め込んでいる」という複数の日本国内の事業者、日本在住の外国人に取材すると「高額転売」を狙った彼らの目論見は、実はことごとく外れている事もわかる。前出ベトナム人男性から「米の営業」を受けたという、埼玉県在住の飲食店経営の男性(60代)が振り返る。 

 

「今年になって急に店に来て”お米あります、買ってくれ”とチラシを置いていった。そんなもん、いくら米が足りなくても、怪しくて買うわけがないでしょう(笑)。というか、ほとんどの飲食店は米屋や食料品の卸業者に年間を通してお願いをしているわけ。だから、多少の値上がりはあっても、米が入ってこないということはないし、訳のわからない業者に頼むわけがない。こちらも客商売だし、何より食べ物ですよ。食べ物を、怪しいところから買おうなんて、現代の日本人は思わないでしょう」(飲食店経営の男性) 

 

 

 埼玉県内で雑貨輸入業を営む中国籍の女性(50代)も昨年秋頃、ビジネス仲間の中国人や東南アジア人らと一緒に金を出し合い、大量の「新米」を購入した。現在も県内の貸倉庫に「保管」していると話すが、トラブルになっていると打ち明ける。 

 

「知らない業者から”米を安く売らないと(米を貯め込んでいると)日本人に言いつける”なんて、仲間内からの脅迫みたいなこともある。しかも、高値で売れると思っていたのに、SNSやアプリ(フリマアプリ)を使ってもほとんど売れない」(中国籍の女性) 

 

 女性は2024年から2025年にかけて、本職の雑貨輸入業で付き合いがある同郷出身の経営者から「米を買わないか」と何度も打診された。また、その際に「米は値上がりしているから必ず儲かる」とも念押しされたという。しかし、手元に届いた大量の米は、それぞれ産地名の記載もなく、袋もバラバラの米だった。 

 

「料理店をやっている(同胞の)友達に見せても、これは買えない、レベルの低い米だと笑われました。自分たちで食べようにも確かに美味しくない。保管も出来ないし、なんとかして売りたい」(中国籍の女性) 

 

 日本人の食事には絶対に欠かせない「米」だから、足りなくなれば高くても日本人は「買う」に違いない、そんな思惑が米を買い占める外国人たちにはあったのかもしれない。しかし、欠かせないものだからこそ、それは絶対的に安心できるものでなければならない、という日本人の感覚までは理解できなかったのではないか。 

 

 東京都内の米問屋の男性店主(50代)が吐き捨てるように言う。 

 

「今回の米不足は政府の減反政策が影響していることも間違いないが、普段米屋から米を買ってくれている人たちには、多少高くとも、不足なく行き渡っています。要は、スーパーで買うことが出来ていた安い米が、よくわからない人たちに買い占められたんですよ」(米問屋店主) 

 

 店主は、保管状態のよくない買い占められた米の行方に気をもんでいるとも話す。 

 

「まもなく冬も終わる。買い占められた保管状態の悪い米は、暖かくなるとコクゾウムシなどの害虫も湧くでしょう。一般の方々が思うより、米の保存は温度管理など難しいのです。虫が湧けば、品質が落ちて食べられたものじゃなくなる。ちょうどのその頃、政府が放出する備蓄米も世間に出回り、米価が値崩れを起こすかもしれない。そうなると、質の悪い買い占め米は行き場をなくす。それがどこに出回ってしまうのか、とういうことです」(米問屋店主) 

 

 

 例えば、政府が放出を決めた大量の「備蓄米」は、単一ブランドの米として販売されるわけではないという。様々な備蓄米が「ブレンド」された上で、市場に出回る可能性が高い。すると、需要がなく、行き場がなくなった保管状態の悪い「買い占め米」までが、どさくさに紛れて市場に流通してしまう可能性もあると説明する。確かに、出所不明の怪しい米だろうが、混ぜられてしまえばわからないのだ。 

 

「米問屋のうちにまで、外国人業者から米を買わないか、としきりに電話が来るようになったよ(笑)。おそらく、余っている米があるのでしょう。様々な銘柄を揃えているというが、実物を見た同業者は”ニセモン”と笑っていた。すでに、古米だろうが何だろうが混ぜた、偽の”コシヒカリ”なんてのも出回っているんだから」(米問屋店主) 

 

 日本人が愛してやまない「米」。足りない、高いと大騒ぎしていたが、まだまだ「米」に翻弄される日々は続きそうだ。 

 

 

 
 

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