( 271934 )  2025/03/04 06:21:52  
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日本では米の価格が高騰し続けており、政府の備蓄米の放出が効果的ではないことが指摘されています。

行方不明米や誤った生産量の見積もりなどが背景にあるとされています。

鈴木宣弘特任教授は、営利目的で米を隠し持つ業者よりも、単純に米が足りていないことが原因ではないかと述べています。

備蓄米放出の効果も限定的で一時的であり、政府は生産者に増産を促す必要があるとしています。

(要約)

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米の価格高騰が止まりません 

 

 米の価格高騰が止まりません。政府は先月、備蓄米の放出を発表しましたが、値下がりに転じるどころか、むしろ上昇傾向に。その背景には一体、何があるのでしょうか。農業経済学が専門、東京大学大学院・鈴木宣弘特任教授が解説します。 

 

 スーパーの棚から米が消えた去年8月。それ以降、価格は上がり続け、いまや5kg4000円超え。わずか半年で約1.5倍にまで跳ね上がっています。(大阪市内のスーパー) 

 

約41万tが”行方不明”? 

 

 この背景に”行方不明米”の存在が指摘されています。 去年のコメの生産量は679万t、前年より約18万t増加しています。一方で、大手集荷業者が集めた量は221万t(1月末)と、前年比で約23万t減少しています。つまり、あわせて約41万tが”行方不明”となっています。 

 

 農林水産省は、「”売り渋り”業者によって流通が滞っている」「大手業者が競争で集荷できていない」などと見立てています。 

 

 これに対し、鈴木特任教授は「そもそも行方不明ではない」「去年の生産量”約18万t増”という数値は、政府の過大見積ではないか」と指摘します。 

 

「単純にお米が足りていない」と鈴木氏 

 

 そもそも生産量は正確な数字ではなく、田んぼを調査して”このくらいとれる”という推計です。実際、生産量が約18万t増えていることについて、全国の生産者から「そんなに収穫できていない」という声が相次いでいるということです。 

 

 また、玄米から白米に精米をするとき、精米できる割合は例年だと9割ですが、去年は米の品質があまり良くなく、8割だったということです。つまり鈴木氏は”行方不明”ではなく、「単純にお米が足りていない」としています。 

 

 なぜ推計がずれたのかという質問に対し、鈴木氏は… 

 

(鈴木氏) 

「猛暑の影響が考えられます。これまで見込んでいた数値から実際の収穫量が減ったり、あるいは品質が低下し主食米にできる割合が減ったりしています」 

「ここ数年、実際の数値との乖離が大きくなっています。調査方法などを精査・検証する必要があると思います」 

 

 

値下がりに転じるどころか、むしろ上昇傾向に 

 

 また、江藤農水大臣は先月、「備蓄米放出により、米をストックしていた人が流通に乗せようとする。それにより価格も安定するのでは」と述べていました。しかし、値下がりに転じるどころか、むしろ上昇傾向となっています。 

 

 鈴木氏は「売り渋っている業者があるならば、備蓄米放出のタイミングで価格が低下に転じるはず。しかし、価格が上がっているということは、米が足りていないことが原因ではないか」と述べます。 

 

(鈴木氏) 

「投機的に米を隠し持っていることは、そんなにないと思います。”行方不明米”については、流通業者に集まらなかったものであり、”別ルートに流れた”という意味です。農家から直接購入するなどする人が増えました。本当は米が足りてないわけで、それを『売るために隠している』と政府は表現し、流通に責任を転嫁している可能性があります」 

 

備蓄米放出の効果について「価格が下がるとしても限定的・一時的」 

 

 鈴木氏は、備蓄米放出の効果について「価格が下がるとしても限定的・一時的」としています。 

 

 備蓄米は大手スーパーなどには並びますが、町の小売店には届きません。これは大手集荷業者のところに備蓄米が放出されるためです。また、政府が備蓄米を放出の条件について、1年以内に買い戻すとしています。つまり一時的に価格が下がったとしても、買い戻しのタイミングで再び市場からコメが足りなくなり、根本的な解決になりません。 

 

東京大学大学院・鈴木宣弘特任教授 

 

 鈴木氏は、「政府は米が足りていないことを認めたうえで、生産者に増産を促すべき」としています。 

 

(鈴木氏) 

「生産者にとっては、増産すると価格が下がってしまう可能性があります。そうしたときにも所得を得られるよう、政府が補填をつくらなければならなりません」 

 

 

 
 

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