( 271936 ) 2025/03/04 06:21:52 0 00 米の価格高騰が止まりません
米の価格高騰が止まりません。政府は先月、備蓄米の放出を発表しましたが、値下がりに転じるどころか、むしろ上昇傾向に。その背景には一体、何があるのでしょうか。農業経済学が専門、東京大学大学院・鈴木宣弘特任教授が解説します。
スーパーの棚から米が消えた去年8月。それ以降、価格は上がり続け、いまや5kg4000円超え。わずか半年で約1.5倍にまで跳ね上がっています。(大阪市内のスーパー)
約41万tが”行方不明”?
この背景に”行方不明米”の存在が指摘されています。 去年のコメの生産量は679万t、前年より約18万t増加しています。一方で、大手集荷業者が集めた量は221万t(1月末)と、前年比で約23万t減少しています。つまり、あわせて約41万tが”行方不明”となっています。
農林水産省は、「”売り渋り”業者によって流通が滞っている」「大手業者が競争で集荷できていない」などと見立てています。
これに対し、鈴木特任教授は「そもそも行方不明ではない」「去年の生産量”約18万t増”という数値は、政府の過大見積ではないか」と指摘します。
「単純にお米が足りていない」と鈴木氏
そもそも生産量は正確な数字ではなく、田んぼを調査して”このくらいとれる”という推計です。実際、生産量が約18万t増えていることについて、全国の生産者から「そんなに収穫できていない」という声が相次いでいるということです。
また、玄米から白米に精米をするとき、精米できる割合は例年だと9割ですが、去年は米の品質があまり良くなく、8割だったということです。つまり鈴木氏は”行方不明”ではなく、「単純にお米が足りていない」としています。
なぜ推計がずれたのかという質問に対し、鈴木氏は…
(鈴木氏) 「猛暑の影響が考えられます。これまで見込んでいた数値から実際の収穫量が減ったり、あるいは品質が低下し主食米にできる割合が減ったりしています」 「ここ数年、実際の数値との乖離が大きくなっています。調査方法などを精査・検証する必要があると思います」
値下がりに転じるどころか、むしろ上昇傾向に
また、江藤農水大臣は先月、「備蓄米放出により、米をストックしていた人が流通に乗せようとする。それにより価格も安定するのでは」と述べていました。しかし、値下がりに転じるどころか、むしろ上昇傾向となっています。
鈴木氏は「売り渋っている業者があるならば、備蓄米放出のタイミングで価格が低下に転じるはず。しかし、価格が上がっているということは、米が足りていないことが原因ではないか」と述べます。
(鈴木氏) 「投機的に米を隠し持っていることは、そんなにないと思います。”行方不明米”については、流通業者に集まらなかったものであり、”別ルートに流れた”という意味です。農家から直接購入するなどする人が増えました。本当は米が足りてないわけで、それを『売るために隠している』と政府は表現し、流通に責任を転嫁している可能性があります」
備蓄米放出の効果について「価格が下がるとしても限定的・一時的」
鈴木氏は、備蓄米放出の効果について「価格が下がるとしても限定的・一時的」としています。
備蓄米は大手スーパーなどには並びますが、町の小売店には届きません。これは大手集荷業者のところに備蓄米が放出されるためです。また、政府が備蓄米を放出の条件について、1年以内に買い戻すとしています。つまり一時的に価格が下がったとしても、買い戻しのタイミングで再び市場からコメが足りなくなり、根本的な解決になりません。
東京大学大学院・鈴木宣弘特任教授
鈴木氏は、「政府は米が足りていないことを認めたうえで、生産者に増産を促すべき」としています。
(鈴木氏) 「生産者にとっては、増産すると価格が下がってしまう可能性があります。そうしたときにも所得を得られるよう、政府が補填をつくらなければならなりません」
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