( 272724 )  2025/03/07 06:05:57  
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自民党は今夏の参院選に向けて若年層の支持を失っており、国民民主党やれいわ新選組が支持を伸ばしている。

これは、SNSの発展により、自民党のバラマキと増税に依存するビジネスモデルが批判されているためだ。

保守とは、「良きものを後世に伝える」ことであり、時代に即した政策を展開すべきと説かれている。

国の発展を願うことは自由主義でも社会主義でも基本的であり、「愛国」だけでなく、支持されるべき政策の提案が重要である。

(要約)

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(c) Adobe Stock 

 

 今夏の参院選を前に自民党に危機感が充満している。石破茂政権の内閣支持率や自民党の政党支持率は比較的安定しているものの、若年層の支持が落ち込んでいるためだ。逆に、昨秋の総選挙で議席を4倍増した国民民主党に加え、れいわ新選組は18歳から30代で支持を拡大する。なぜなのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。 

 

 戦後何十年にも渡って自民党政権は「バラマキ」と「増税」を繰り返すことで求心力を維持するビジネスモデルを展開してきた。しかし、SNSの発展により、その実態が白日のもとにさらされ、保守層からの支持を加速度的に失っている。従来であれば、メディアによる情報統制や政権寄りの論調によって批判をかわすことができたが、個人が自由に情報を発信できる環境が整ったことで、もはや隠し通せなくなったのである。 

 

 そもそも、国の発展を願うことは、自由主義国家であれ社会主義国家であれ、基本的な国家運営の前提である。「愛国」的な姿勢は保守の一要素にすぎず、愛国心があるからといって即座に「保守」とは言えない。事実、中国や北朝鮮、かつてのソ連は、国家への忠誠と愛国心を強調してきたが、それらは決して「保守」ではなかった。むしろ、独裁体制や国家統制の強化に結びつくものだった。 

 

 では、「保守」とは何か。それは、単なる現状維持ではなく、「良きものを後世へと送り届ける」ことに尽きる。伝統や制度の中には、時代に適応しながら守るべきものもあれば、逆に悪習として断ち切らなければならないものもある。単に古いものを守るのではなく、本質的に価値あるものを継承し、時代に即した形で発展させていくことこそが「保守」の本質である。 

 

 例えば、政府が設立したこども家庭庁は、その予算規模が7兆円にも及ぶにもかかわらず、少子化対策として実効性のある施策を打ち出せていない。出生率を改善するどころか、的外れな政策に巨額の税金が投入され、その挙句、新たな「子育て支援金」という形で国民に増税を押し付けるという有様だ。これは「保守」どころか、むしろ国家が国民の自由を奪い、財産を収奪する社会主義的政策に近い。 

 

 

 効果のない施策を続けることで、将来的にはさらなる税負担と財政悪化を招く悪循環を生み出している。 

 

 こども家庭庁の担当者の発言を聞いていても、彼ら自身が自らの施策に対して確固たる効果を見出せていないことが明らかだ。存在意義すら自覚できていない機関に7兆円もの税金を投入することが「保守」の名に値するはずがない。同様に、「新しい資本主義」「半導体支援」「大阪万博」「教育費無償化」など、近年政府が次々と打ち出してきた政策の多くは、税金を湯水のごとく投入することで成り立っている。にもかかわらず、それらが持続的な経済成長や国民生活の向上にどれほど寄与するのかは極めて不透明である。むしろ、国民の負担が増し、政府への依存を強めるだけの政策に過ぎないのではないか。 

 

 こうした状況において、「減税」と「規制緩和」は、日本人一人ひとりの価値観と自由を尊重する政策である。個人や企業が活発に活動できる環境を整え、市場の力を最大限に引き出すことこそ、健全な社会の発展に寄与する。「良きものを後世に伝えていく」という保守の精神は、政府の介入を最小限にとどめ、市井の人々が自由に創意工夫しながら社会を支えていく仕組みを維持することにある。 

 

 SNSの普及により、情報発信の独占は崩れつつある。かつては政府や大手メディアが情報をコントロールし、国民に都合の良い価値観を押し付けることが可能だった。しかし、今や個人がメディアとなり、自由に情報を発信できる時代となった。その結果、国家による強制や欺瞞的な政策が次第に暴かれ、国民の間で批判が広がっている。こうした流れの中で、自民党的な全体主義的支配は徐々に揺らぎつつある。我々はまさに、その変革の瞬間を目の当たりにしているのである。 

 

 そうした結果が、最近の国政政党の支持率調査にも表れているようだ。 

 

 NHKの世論調査(2月)によれば、自民党を支持する人は全体で31.3%いる。だが、年代ごとに違いがある。80歳以上では48.5%の人が支持しているが、30代以下では16.2%にとどまる。国民民主党の支持率も30代以下では16.2%あり、50代以下では自民党と競争する力を持っている。衆院選では、国民民主の比例票は259万票(令和3年)だったが、最新の選挙では617万票に増えた。 

 

 

 わずか数年で倍以上の支持を集めた背景には、従来の支持層とは異なる人々の流入がある。減税が現役世代の保守層の支持を広げているのだ。 

 

 国民民主党が変わった背景には、有権者の意識の変化がある。これまで国民民主は「改革中道政党」として、与党とも野党とも一定の距離を取りながら独自の路線を模索してきた。だが、最近では103万円の壁打破などの減税政策、そして保守的な政策を打ち出す場面が増えた。かつて安倍晋三政権を支えた保守層の一部が、自民党ではなく国民民主を選んだという指摘もある。 

 

 国民民主の存在感は、今後の選挙にも影響を与える。次の参院選では、同党がどこまで議席を伸ばすかが注目される。これまで自民党は、野党を分断することで「1強」体制を維持してきた。だが、今回の選挙では国民民主が積極的に候補者を擁立し、野党勢力の一部を取り込みながら自民党にも対抗しようとしている。 

 

 自民党議員の多くは「野党同士で争ってくれれば、自民党にとって有利になる」と計算しているようだが、国民民主が保守的な立場を強めたことで、自民党の票を根こそぎ奪っていくのではないだろうか。 

 

 これまで日本の政治は、自民党が強い支持基盤を持ち、野党は細かく分かれて争うという構図だった。しかし、国民民主が勢力を伸ばせば、このバランスが崩れる可能性がある。 

 

 気になるのは、山本太郎氏率いる「れいわ新撰組」の伸長だ。れいわ新選組は全体の支持率が2.1%だが、30代以下では4.2%と倍の支持を得ている。こちらも立憲民主党が若者の支持が弱いのに反して、現役世代において存在感を示している。 

 

 れいわは、消費税の撤廃を掲げる一方で、法人税に累進性を導入して上げると言っている。つまり高い収益を持つ企業に重罪を課すというものだ。消費税については大いに賛同したい。石破首相が消費税は「安定財源」であるという表現をよくするが、これの意味するところは、不景気であろうとも税収が変わりにくいという意味だ。しかし、よくよく考えてみれば、不景気になってしんどいのは政府の財政だけではなく、国民の財布も同じである。 

 

 ちなみに産経新聞とFNNが2月22、23日実施した世論調査では、18~29歳の自民支持率は11.8%で、トップの国民民主(18.9%)に抜かれている。30代は自民党が11.2%であるのに対し、国民民主は15.9%、れいわ新選組は14.4%で3位だった。40代は自民が19.4%、国民民主11.9%、れいわ11.5%の順になっているが、若年層では少数野党2党の方が人気を得ていることをうかがわせる。 

 

 

 政府が安定的に税金を国民の財布から徴収することができるということは、国民は不景気になっているにもかかわらず、景気が良いときと同等の税金を取られるということになる。海外では貧困層をますます貧困に追い込む「SIN TAXES」(罪税)とも呼ばれることがある。 

 

 こんな非倫理的な税金は、さっさと廃止にするのが良いというものだ。しかし、法人税を上げるのは慎重になるべきだろう。法人税を上げることで、雇用や賃上げが抑制されることは多くのデータが示唆するファクトである。 

 

 れいわと国民民主、共通するところは、「減税」ということに他ならない。 

 

 有権者の頭の中にも、バラマキをした後に増税するのは理解できるが、減税した後に増税するのは意味がないという意識が、これから強くなっていくのではないだろうか。 

 

 バラマキで支援団体の選挙協力や献金を集め、増税をし続けた自民党型ビジネスモデルは、終わらせなくてはいけない。ここまで減税が国民から求められているのに、自民党にそれができないのは、バラマキと増税のセット売りが、自民党にとってよほどおいしい仕組みなのだろう。口先では「減税に賛成」と言いながら、大阪では増税を繰り返し、国会では減税予算を潰してきた維新にも同じことが言える。 

 

小倉健一 

 

 

 
 

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