( 272884 )  2025/03/08 03:45:53  
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百条委員会が兵庫県の斎藤知事に関する内部告発問題の調査報告書を作成し、県議会が承認した。

報告書では、パワハラやおねだりなどの疑惑について一定の事実を認定し、県幹部の対応を非常に不適切と厳しく批判した。

斎藤知事は再選後、報告書に対する対応や反省の様子は見せておらず、県議会で再び不信任決議が出る可能性がある。

維新の不祥事により、報告書が厳しくなり、百条委員会には第三者委員会も設置されている。

県職員の間では、斎藤知事の態度変化や不明瞭さに懐疑的な声があり、県政は不安定な状況が続いている。

(要約)

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百条委員会の調査報告書が県議会で了承されると斎藤知事は議員らを凝視した 

 

 兵庫県の斎藤元彦知事らに対する内部告発問題で、県議会の百条委員会が作成し、3月5日に県議会が可決・了承した調査報告書は、斎藤氏の「パワハラ」や「おねだり」などの疑惑について、一定の事実を認定した。また、斎藤氏ら県幹部が、内部告発をした元西播磨県民局長を特定し、懲戒処分するなどした対応については、「非常に不適切」「公益通報者保護法の違法状態が継続している可能性がある」などと厳しく断罪した。昨年11月の知事選で再選して間もない斎藤氏だが、県議会から再び進退を問われる可能性が出てきた。 

 

 調査報告書は、元県民局長が作成した内部告発文書の7項目のうち、「パワハラ」については「斎藤知事の言動、行動については、パワハラ行為と言っても過言ではない不適切なものだった」とほぼ認定。「おねだり」については「一定の事実が記載」されているとした。阪神とオリックスの優勝パレードの寄付金集めで信用金庫等に県補助金を増額してキックバックさせたという疑惑については、「一定の事実が記載」されているとしながらも、「本件については、背任容疑の告発状が県警に受理されており、捜査当局の対応を待ちたい」と判断している。 

 

 7項目のうち5項目について「虚偽とは言えない」などの判断で、斎藤氏が「嘘八百」と言っていたこと自体が嘘だった、といえる調査報告になっている。 

 

■「嘘八百ではなかった」 

 

 記者会見した百条委員会の奥谷謙一委員長は、こう話した。 

 

「元県民局長の文書は、事実無根でもないし、嘘八百ではなかったというのがわれわれの調査結果です。知事および県当局は、今一度振り返って、しかるべき対応をとってほしい」 

 

 だが、斎藤氏はこの調査報告書について報道陣に問われると、「一つの見解だ」「適法な可能性もある」などと言い、対応を改めたり、反省したりする様子は見せていない。 

 

 これまで斎藤氏は、百条委員会で委員から「パワハラを認めて反省すべきではないか」と問われると、 

「パワハラかどうかは、百条委員会が判定すること」 

 などと言って判断を避けてきた。だが、百条委員会が「パワハラ行為と言っても過言ではない」と判断した後も、反省の言葉はなかった。 

 

 

■「再び斎藤おろしが吹き荒れる」 

 

 県議会はこれからどう対応するのか。自民党県議のB氏がこう話す。 

 

「県議会では、再び斎藤おろしの嵐が吹き荒れそうな予感がある」 

 

 昨年9月、県議会は、百条委員会が結論を出す前に斎藤知事の不信任決議案を可決した。斎藤氏は失職したが、再選を目指して知事選に出馬。劣勢が予想されていたが、SNS展開や「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が斎藤氏の応援のために立候補する「2馬力」選挙を繰り広げた結果、11月の県知事選で勝利し、知事に返り咲いた。 

 

 B氏は、百条委員会の調査報告書が斎藤氏に厳しい内容になっていることを踏まえてこう話す。 

 

「百条委員会の調査報告が出た後に県議会が不信任を決議し、それからの知事選であれば斎藤知事の再選はなかったはずだ」 

 

 斎藤氏が知事に再登板後、元県民局長の内部告発の真偽や元県民局長の私的情報が外部に漏洩した問題について、百条委員会とは別に、県が第三者委員会を設置して、調査にあたっている。 

 

 B氏によると、斎藤氏が再選されて4カ月足らずであることも考慮し、県議会の「斎藤おろし」の動きは第三者委員会の結論が出てからになりそうだという。 

 

 百条委員会の調査報告書が斎藤氏らに厳しい内容となったのには、維新の不祥事が大きく影響している。斎藤氏が再選を果たしてから、維新は斎藤氏を支える姿勢を強め、百条委員会でも、「公益通報者保護法に違反」とする報告書案の内容に維新の委員は反対していた。 

 

 だが、百条委員会の委員でもあった維新の岸口実県議と増山誠県議が、NHK党の立花氏に、斎藤氏を厳しく追及していた県議らを誹謗中傷する真偽不明の文書や、非公開の百条委員会の録音データを提供していたとして、2月に党から処分を受け、百条委の委員を辞職。維新は「反対意見」を撤回した。 

 

■Aさんは兵庫県内の経営者か 

 

 ちなみに、岸口氏は、立花氏に文書を渡した会合には、よく知る人物と同席したと説明したが、その人物の名前は「民間人」だとして説明していない。立花氏も「Aさん」としか明かしていないため、「Aさんは誰」という言葉が一時はSNSでトレンドにあがるほどだった。 

 

 先の自民党県議B氏によると、 

「ある元県議が最初は口利きをして、Aさん周辺につなぎ、立花氏に問題の文書を渡したという噂が県議会で広がっている」 

 という。 

 

 そこで、この元県議に電話したところ、こう話した。 

「岸口氏のことは昔から知っているが、そんな事実はまったくありません。問題になってる『Aさん』というのは、現場に立ち会った人物と、ウラで絵を描いた人と複数いると思いますよ。私の知る『Aさん』は県内で会社を手広く経営する岸口氏の支援者と聞いている」 

 

 元県議がいう「Aさん」の携帯電話を何度か鳴らすが、応答がない。会社に電話をしても、 

「今日は不在です」 

 というばかりだった。 

 

■「斎藤氏の下ではやっていけない」 

 

 一方、県職員には、百条委員会の調査報告書の効力について懐疑的な声がある。報告書を読んだという現役の職員はこう話す。 

 

「内部告発があってから、それまで傲慢な態度だった知事は一変して、やたら丁寧になりました。急に態度を変えたので反対に、『何を考えているかわからない』と話す幹部もいます。知事は百条委員会でパワハラ認定をされ、ここまで大騒ぎになったんですから、普通なら自ら身を引くでしょう。けど、知事に自ら辞める様子はゼロです。知事の性格からいって、百条委員会の報告もこたえていないでしょう。 

 

 県職員として県民のために一生懸命、仕事をしたいですが、斎藤知事の下ではやっていけない。目を付けられないよう、目立たないように淡々と過ごすのみです。私もそろそろ幹部織につく年齢ですが、正直、幹部職にはなりたくない。同僚もそう言っています」 

 

 兵庫県政はまだまだ落ち着きそうもない。 

 

(AERA dot.編集部・今西憲之) 

 

今西憲之 

 

 

 
 

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