( 273194 )  2025/03/09 03:48:32  
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大阪市は、大阪・ミナミのグリコ看板近くの戎橋下に「万能塀」を設置し、座り込みやごみポイ捨てを防止する取り組みを行う。

塀設置により若者の犯罪やトラブルを防ぐ一方で、NPOからは排除されるとの懸念も示されている。

橋の下は以前は若者の集まる場所であったが、新型コロナ禍以降は減少している。

市は若者支援策として宿泊施設の提供も行っており、若者問題に対応するために柔軟な対応を取る方針である。

(要約)

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万博期間中に大阪市がグリコ看板近くの戎橋下に設置する「万能塀」のイメージ図=大阪市提供 

 

 大阪市は近く、大阪・ミナミのグリコ看板近くの戎橋下に「万能塀」を設置し、座り込みができず長時間、滞在しにくいようにする。付近は観光客らによるごみのポイ捨ても目立ち、2025年大阪・関西万博に向け、観光スポットの環境を改善する。グリコ看板下周辺は「グリ下」と呼ばれ、戎橋下にも一時期よりは減ったが居場所のない若者も姿を見せており、支援するNPOからは「排除されていると感じるのではないか」と心配する声が出ている。 

 

 戎橋の下は腰掛けたり、座り込んだりできる座面スペースがある。市は高さ2メートル、長さ約20メートルで鉄製の万能塀の設置工事を12日に始める予定で、月内にも完成する見込み。座面スペースを塀で覆い隠すことで座り込みやごみのポイ捨て防止を図る。長時間滞在しにくくすることで若者らが犯罪やトラブルに巻き込まれるのも防ぐ。万博期間中は塀のままで、閉幕後は座面に斜めのパネルを設置する方針だ。 

 

 ミナミの支援拠点で若者に居場所を提供しているNPO法人「D×P」(同市中央区)によると、橋の下はかつて、外国にルーツを持つコミュニティーの人々が集まっていた。20年に新型コロナウイルスが感染拡大すると橋の下も空き、そこに居場所を求める若者が集うようになった。多い時には30人ほどに上ったという。 

 

 新型コロナ禍が収束し、ミナミににぎわいが戻ると橋の下の若者も減った。それでも時間帯によっては10人程度がいるという。 

 

 2月中旬、午後7~8時ごろに取材すると、グリコ看板前の遊歩道は多くの外国人旅行者がスマートフォンで記念撮影しており、真っすぐ歩けないほどだった。一方、戎橋の下はまばらで、1月27日から市内全域で路上喫煙が禁止されているはずだが、外国人旅行者とみられる男性が喫煙していた。 

 

 橋の下の腰掛けられる部分には、たばこの吸い殻やジュースの空き容器などのゴミが残されていた。この時間は若者の姿はなく、市は「観光客や遊歩道の利用者がポイ捨てしたとみられるごみを確認している」とする。 

 

 ◇「もう少し議論があっても」 

 

 「万能塀」が居場所のない若者の孤独感を強めてしまわないかと懸念する声もある。 

 

 D×Pの今井紀明理事長は2月、東京都内であった記者会見で、「(万能塀は)若者にとっては排除されていると感じてしまうと思う。もう少し議論があってもよかった」と訴えた。 

 

 市は23年8月に府などと「グリ下会議」を設置。D×Pなどと若者への支援策を充実させてきた。ただ、D×Pスタッフの1人は「支援拠点を利用する若者らが実感しているのはグリ下の監視カメラ設置や塀設置。こうした環境整備だけ知ると、『行政は追い出そうとしている』と受け取ってしまう」と懸念する。 

 

 市は18歳以上の若者も利用できる一時的な宿泊施設として、西成区内にアパートの個室2部屋を確保。12月からは浪速区の大国町駅近くにWi-Fiのついたアパート5部屋を借りる契約を結び、家具などを準備して利用できる態勢を整えた。原則2週間程度の滞在を想定し、状況によっては数カ月程度に延長するなど柔軟な対応をする。D×Pが支援する若者受け入れにつなげたい考えだ。 

 

 横山英幸市長は「追い出して終わりではない。集まる子どもの根本的な問題を解決する必要がある。行き場所がない若者には丁寧に対応して関係機関につなぐなど行政をあげて対応していきたい」と話している。【長沼辰哉】 

 

 

 
 

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