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2024年3月16日以降、関西・中京圏と北陸方面の移動は、敦賀駅で在来線特急と北陸新幹線の乗り換えが必要になる。

北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業して1周年を迎え、新幹線と在来線の乗り換えが発生する背景には、フリーゲージトレインの開発が失敗したことがある。

(要約)

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2024年3月16日以降、関西・中京圏と北陸方面の移動には、敦賀駅で在来線特急(左)と北陸新幹線(右)の乗り換えが必要となってしまいました 

 

 北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業してから、3月16日で1周年を迎えます。首都圏と石川県西部や福井県のアクセスは飛躍的に向上した一方、在来線特急「サンダーバード」「しらさぎ」は敦賀駅止まりとなり、関西・中京圏と北陸方面の移動には、敦賀駅での乗り換えが必須となってしまいました。 

 

 新幹線開業にあわせて建設された敦賀駅の設備は、3階が新幹線ホーム、2階がコンコース、1階が在来線特急用ホームという3層構造。新幹線と「サンダーバード」「しらさぎ」を乗り継ぐ利用者は、階段やエスカレーターなどで上り下りする必要があります。2022年9月に開業した西九州新幹線の武雄温泉駅では、新幹線「かもめ」と在来線特急が対面で接続していることを考えると、決して便利であるとはいえません。 

 

 JR西日本や、新幹線の設備を建設した鉄道・運輸機構でも、これをよしとしていたわけではありませんでした。 

 

 北陸新幹線では、当初は「フリーゲージトレイン」の導入が予定されていました。日本では、新幹線と在来線ではレール幅が異なり、そのままでは直通できません。これを車両側で対応するという思想で開発が進められたのがフリーゲージトレイン。実用化されていれば、かつての特急「サンダーバード」のように、大阪~金沢・富山間が乗り換えなしで移動できる……はずでした。 

 

 しかし、フリーゲージトレインの開発は難航し、少なくとも北陸新幹線延伸開業には間に合わないことに。後に開発自体も断念されてしまいます。その結果、敦賀駅で新幹線と在来線の乗り換えが発生することは避けられなくなり、JR西日本と鉄道・運輸機構は対応を迫られました。 

 

 この段階で、先述した武雄温泉駅のように、新幹線と在来線特急を対面で接続するという案は検討はされました。しかし、6両編成の「かもめ」と6または8両編成の在来線特急が接続する武雄温泉駅に対し、敦賀駅では新幹線は12両、在来線特急も6~12両と、輸送力が大きく異なります。加えて、博多方面の在来線特急と長崎方面の新幹線という1方向の接続である武雄温泉駅に対し、敦賀駅では大阪方面からの「サンダーバード」と名古屋方面からの「しらさぎ」という2つの列車が、1つの新幹線「つるぎ」に接続します。このように、利用者数が武雄温泉駅より多くなり、2列車接続も求められる敦賀駅では、対面での接続はかえって混乱を招くと考えられたのです。 

 

 JR西日本と鉄道・運輸機構では、実際に対面接続用の配線などを検討していたようで、JR西日本刊行の「建設技術」(31号・2018年)に配線図が記載されています。これによると、新幹線ホーム階に在来線が乗り入れる構造で、2面4線のホームのうち、2線を新幹線、残る2線を在来線特急が使用するというものでした。実際に建設された敦賀駅新幹線駅舎は、新幹線ホーム、在来線特急ホームとも2面4線という余裕のある構造。仮に対面接続案の構造で建設されていれば、利便性は高くなるとしても、運用上のボトルネックとなっていたことは避けられなかったのではないでしょうか。 

 

西中悠基 

 

 

 
 

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