( 273584 )  2025/03/10 05:34:13  
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昨年、生活保護の申請が12年で最高を記録。

高齢者が困窮しやすく、年金だけでは生活できない現実。

申請に二の足を踏む高齢者も。

厚生労働省によると、昨年の申請は25万5,897件で、高齢者世帯が最も多い。

生活保護は一生受けるものではなく、困窮した人を支援し再建をバックアップする。

不正受給があるため、生活保護にネガティブな印象があり、SNSで違法行為が拡散されている。

不正受給の件数は3万2,090件で、生活保護の受給者は困難な現状にある。

(要約)

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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

昨年、生活保護の申請が過去12年で最高を記録しました。困窮する人のなかでも多いのが高齢者です。「年金だけでは生きていけない」。それが高齢者の現実ですなのです。しかし困窮しながらも「生活保護だけは……」と申請に二の足を踏む高齢者も。それも現実です。 

 

東京から電車で1時間ほどの街に住む、高橋弘子さん(仮名・82歳)。住まいは市営団地、家賃は8,000円強と格安。それでも生活は苦しく、生活保護を受けているといいます。 

 

――モノの値段があがっているでしょ。年金だけではとても生きていけないもの 

 

高橋さんが受け取る年金は月5万5,000円ほど。一方で高橋さんが住む街において、82歳高齢者の最低生活費は6万3,000円ほど。年金との差額と家賃分、合わせて月2万円弱をもらっているといいます。 

 

厚生労働省『令和6年度被保護者調査』によると、昨年1年間の生活保護申請は25万5,897件。前年818人、割合にして0.3%増え、この12年間で最も多くなりました。単身者世帯の増加とともに、昨今の物価高の影響が大きいと考えられます。 

 

昨年12月時点で生活保護を受けている人は200万7,364人、165万2,199世帯。世帯種別でみると、最も多いのが高齢者世帯で90万2,810世帯。生活保護を受ける半数以上が高齢者です。ちなみにほかは障害者世帯が22万8,846世帯、傷病者世帯が18万6,548世帯、母子世帯が6万2,510世帯。いかに困窮している高齢者が多いことがわかります。 

 

生活保護は原則、一生受けるものではありません。困窮している人たちを助けるとともに、そのような人たちの生活再建をバックアップするものです。前述のとおり昨年は過去12年間で最多の申請数を記録しましたが、一方で22万8,594人世帯が保護廃止となっています。もちろん廃止の理由は経済的自立や傷病の完治だけでなく、受給者の失踪や死亡なども含みます。 

 

――私の場合、死ぬまで生活保護を受けないと生きていけないわね 

 

10年前に夫を亡くした高橋さん。600万円ほどの遺産がありましたが、この10年で徐々に取り崩し、そしてゼロになってしまったといいます。 

 

――十分なお金ではなかったけれど、でも夫が残してくれたお金と年金で、なんとか死ぬまでやっていけると思っていた。でも無理でした。やっぱり、最近の物価高は異常ですよ 

 

遺産が底をついたときの絶望感……今も忘れないといいます。 

 

 

本当は生活保護を申請したくなかったという高橋さん。世間での生活保護の風当たりは強く、そのため「生活保護だけは使いたくない」「周囲の人や家族に(生活保護を受けていることを)知られたくない」という人は多いもの。生活保護に対してネガティブな印象を受ける人が多いのは、不正受給の存在があります。 

 

厚生労働省の資料によると、2020年、不正受給の件数は3万2,090件。1件当たりの金額は39万4,000円でした。件数ベースでみると2%、金額ベースでは0.4%と程度とされています。不正の内訳をみていくと、「稼働収入の無申告」が最も多く1万5,878件。続いて「各種年金等の無申告」が5,678件、「稼働収入の過小申告」が3,551件と続きます。 

 

また昨今、SNSの普及により、「生活保護なのにパチンコをしている」などという画像が広く拡散。「不正受給なのでは?」という疑念により、生活保護、そのものへの風当たりが強くなっています。 

 

そのようななか高橋さんは「別に世間の目はどうでもいい」といい、それよりも「生活保護を受けるようになったら、もう抜け出せないことが嫌だった」と話します。 

 

――生活保護を受けて生活を立て直して、そして生活保護から卒業する……今後、生活保護を頼らずに生きるためには、年金が増えないと無理。でもそんな未来、ないじゃない。生活を立て直すことなんてできずに、死んでいく……もう生きていても辛いだけよ 

 

生活保護は国民の権利として認められているもので、必要であれば誰もが使える制度。ただ社会全体が困窮しているなか、生活保護を受けている人のほうがよい暮らしをしている……そんな逆転現象が解消されない限り、肩身の狭い思いをしながら保護を受ける現状は変えられそうもありません。 

 

[参考資料] 

 

厚生労働省『令和6年度被保護者調査』  

 

厚生労働省『社会保障審議会生活困窮者自立支援 及び生活保護部会(14回)資料5』 

 

 

 
 

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