( 273624 )  2025/03/10 06:20:16  
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2025年11月をもって日産自動車がADバンの生産を終了することを発表。

これにより日産の商用車ラインナップに影響が出るとともに、日産ディーラー営業マンは代替案を提供する難しさに直面する。

トヨタのプロボックスが小型商用バン市場で独走し、日産の存在感が低下する可能性がある。

商用車市場の動向によっては、EV車種であるe-NV200の再評価やセダンラインナップの充実が求められる可能性もある。

(要約)

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ADバン(画像:日産自動車) 

 

 日産自動車は、2025年11月をもってADバン(AD)の生産を終了することを正式に発表した。 

 

 この決定により、これまで法人ユーザー向けにADバンを提供してきたディーラー営業マンは、大きな提案材料を失うことになる。既存のADバンユーザーに対してはもちろん、新規の提案材料を見つけることが求められる。 

 

 法人営業の定番車種として長年親しまれてきたADバンの消失は、日産の商用車ラインナップにとって痛手となるだろう。今後、国内市場における商用車の勢力図がどのように変化するかが注目される。 

 

プロボックス(画像:トヨタ自動車) 

 

 ADバンは、ビジネス用途に特化したコンパクト商用バンとして長年愛されてきた。しかし、日産自動車の経営状況や他社とのシェア競争が影響し、市場から姿を消すこととなった。この影響で、日産の商用車ラインナップはますます厳しくなっている。 

 

 現在、日産の商用バンとしては 

 

・NV200バネット 

・キャラバン 

 

が残るが、ADバンのような小型商用車がなくなることで、日産ディーラーの営業マンは 

 

「顧客に対する代替案を提示する」 

 

ことが難しくなった。特に、ADバンはトヨタのプロボックスと並ぶ法人向けの定番車種であり、これを取り扱っていたディーラーにとっては、大口法人顧客の流出を防ぐことが重要な課題となる。 

 

 そのなかで、日産ディーラーの営業マンはどのように対処すべきか――。まず考えられるのは、 

 

「軽バンへの誘導」 

 

だ。現在、日産はスズキのOEM車であるクリッパーを軽バン市場に投入しており、ADバンユーザーのなかには「積載量は少なくても燃費がよいほうがいい」というニーズを持つ層もいる。これらのニーズを掘り起こす営業戦略が求められる。 

 

 もうひとつの選択肢は、乗用車で代用する方法だ。しかし、現状ではe-POWER搭載のノートしか選択肢がない。ホンダとの提携が終了したため、フリードのOEM供給は難しく、プロボックスの代替にはなり得ないという問題もある。 

 

 

営業マンのイメージ(画像:写真AC) 

 

 ADバンの消滅により、トヨタのプロボックスは小型商用バン市場で独走態勢に突入することが確実となった。かつてはトヨタ、ホンダ、日産が激しい競争を繰り広げていたが、法人向け商用バン市場におけるトヨタの影響力はますます強まるだろう。 

 

 実際、プロボックスは 

 

・燃費性能 

・耐久性 

・全国のトヨタディーラーによる充実したアフターサービス 

 

を強みとして、多くの法人ユーザーから高い評価を得ている。現在、これに対抗できる車種はなく、日産ディーラーの営業マンにとっては、法人向けの提案が一段と難しくなるだろう。 

 

 また、中型クラスの商用バン市場では、トヨタのハイエースが圧倒的なシェアを誇っている。日産のキャラバンも一定の存在感を示しているが、車両の信頼性やリセールバリューなどを考慮すると、ハイエースの優位は揺るがない。 

 

日産自動車のロゴ(画像:写真AC) 

 

 今後の商用車市場では、トヨタの一強がさらに際立つ可能性が高い。日産が軽バン市場にシフトする可能性もあるが、ADバンの代替車種が法人営業で十分に提案できない以上、従来の顧客流出リスクは避けられない。 

 

 一方、商用車市場には新たな動きがある。電気自動車(EV)の商用バンの普及が進むなかで、 

 

「e-NV200」 

 

などが再評価されるかもしれない。EVはランニングコストの低減や環境規制への対応という観点から法人需要が高まると予想され、今後の市場動向によっては、日産も再び存在感を発揮できる可能性がある。 

 

 さらに、商用車以外の市場でも日産ディーラーは厳しい状況に直面するだろう。かつては5ナンバーサイズのセダンが法人向けに人気を集めていたが、現在日産が提供するセダンはスカイラインのみだ。過去には 

 

・ラティオ 

・ブルーバード 

・シルフィ 

・ティアナ 

・フーガ 

・シーマ 

 

といった多様なセダンラインが存在し、法人ユーザーにも広く支持されていた。実際、ブルーバードシルフィを13年以上使用している法人ユーザーもおり、代替案としてノートやキックスが提示されても、セダンの使い勝手のよさに魅力を感じているため、買い替えには至っていない。このような法人ユーザーのニーズに対し、トヨタのカローラが主要な選択肢となるのは明らかであり、セダンラインナップの充実が求められているだろう。 

 

 結論として、ADバンの消滅は日産営業マンにとって厳しい状況を生む一方で、新たな市場の変化を生む契機となる可能性がある。商用車市場は今後、トヨタの独走を軸に進む一方で、EVの普及によって新たな局面を迎えるだろう。 

 

 販売現場では、これらの変化を敏感に察知し、柔軟な提案力が求められる時代に突入している。営業マンひとりひとりの能力、すなわち人間力の向上こそが法人ユーザーの心を掴むカギとなるだろう。ドライなビジネスシーンにおいても、義理人情”が依然として強く残っている。日産の営業マンに 

 

「残された道」 

 

は、まさにここにあるのかもしれない。 

 

宇野源一(元自動車ディーラー) 

 

 

 
 

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