( 273886 ) 2025/03/11 06:46:51 0 00 9週連続値上がり…“コメ価格”下がる?備蓄米15万トン入札が始まる
10日から始まった政府備蓄米の入札。政府が放出する備蓄米の量は、全部で21万トンで、その第一弾として、青森県産『まっしぐら』や、宮城県産『ひとめぼれ』など、15万トンが市場に出されます。
落札した業者は、原則として1年以内に同じ量のコメを国に戻し入れることが条件です。入札は10日から始まり、12日まで。落札されたコメが店頭に並ぶのは、今月下旬以降の見通しです。
江藤拓農林水産大臣 「(Q.この放出によってどんな効果を期待しているのか)何度も申し上げているように価格に着目しているわけではないと。しかし、流通が改善して、スタックが解消されれば、当然、価格は下に向かうということを期待していないのかと言われれば、そうあってもらいたいと」
期待が集まる備蓄米の放出。しかし、10日に発表された全国のスーパーでのコメの販売価格は、5キロあたり3952円と9週連続の値上がりです。
現場では、こんな異変も起きています。
栃木県さくら市のコメ農家。田植えの時期は毎年4月下旬で、この時期の田んぼは、まだ“土だけ”の状態ですが、2025年産の新米は、すべて“売約済み”になっていました。
岡田農園 岡田伸幸代表 「まだ田植えすらしていないので、まだ何もないのに売れているというのが初めて。争奪戦といっても過言ではないと思うような過熱具合」
コメ農家にとっては、買い取り先が決まって安心できる反面、不安もあるといいます。
岡田農園 岡田伸幸代表 「昨今、異常気象もあるし、それだけ作り切れるのかという不安はある」
こちらの農家は酒米の面積を減らし、主食用に充てる対応を取るそうです。
千葉で100年以上続くコメ農家は、コメの生産だけでなく、ほかの農家からコメを仕入れ、スーパーなどに販売する集荷業者でもあります。
米のたけやま 伊藤享兆社長 「例年だと、ここ(倉庫)に2万俵のお米がストックされるので、例年と比べて1割以下。見ての通りスカスカです」
また、コメの仕入れ価格は、去年2月の時点で、1俵あたり1万5500円でしたが、9月に2万5500円に。今年1月には、さらに値上がりし、3万8000円と、1年も経たない間に倍以上に跳ね上がっています。
米のたけやま 伊藤享兆社長 「各社がスタックしているコメがあるとするならば、備蓄米と同時に危機を感じて出してくるとは思いますが、価格の上昇はなくなっても、価格の下落はないのではないかと」
広島県にある業者は、全国からコメを買い付け、飲食店やスーパーなどに卸しています。今回、入札に参加したJA全農を通じて、備蓄米を仕入れようとしていますが、価格が下がるのは、まだ先とみています。
食協 武信和也社長 「政府備蓄米が全国に行きわたれば、価格もある程度、下がると思うが、(備蓄米が)行きわたる前に現在は、もう5月・6月の商談に入っている。価格も5月・6月は、今のままの値段を出している現状」
備蓄米放出の効果について問われた農水大臣。
江藤拓農林水産大臣 「21万トン出した以上は、政策効果がなければ、さらに追加もする。しっかり流通のスタックを解消して、消費者の苦労を解消するよう努力したい」
◆備蓄米の放出で、コメの価格は安定するのでしょうか。
コメの価格が高止まりしている背景には、一部の業者がより高く売れるタイミングで売ろうと、“投機的な買い集め”をしているとの見方もあります。備蓄米を放出することで、コメの流通量を増やしつつ、コメを抱え込む業者に価格が下がるかもしれないと思わせ、コメが市場に出回るようにする狙いもあります。
◆店頭価格はどうなるのでしょうか。
2人の専門家に聞くと、いずれも値下がりするとの見方です。
農業政策に詳しい日本総合研究所の三輪泰史チーフスペシャリストは「備蓄米は安い価格で売り出され、それに引っ張られてほかのコメも少し安くなる。値下がり幅は当初100円〜200円ほどで、買い占めていた業者もコメを売り出すようになり、6月には5キロたり3400円ほどに下がる」といいます。
一方、農業経済学が専門の宇都宮大学・小川真如助教は「値上がりの影響を強く受けているのは、外食などの業務用。放出された備蓄米は、まずそちらに流れ、その後、スーパーなどに波及する可能性がある。小売価格は、5キロたり3800円ほどまで下がれば、効果があったといえる。備蓄米が含まれるブレンド米は安くなる一方、高値のままのコメ、価格が上がるコメもある」といいます。
◆長期的には、コメの価格はどうなるのでしょうか。
日本総研の三輪さんは「今年が豊作なら、5キロあたり3000円まで下がる可能性もある」といいます。宇都宮大の小川助教も「豊作なら、5キロあたり3500円まで下がる可能性はある」としていて、値下がりの幅に差はあるが、いずれも、作柄が良ければさらに安くなるとの見方です。
また、コメの価格には、消費者一人ひとりの行動が関係しているとの指摘もあります。
日本総研の三輪さんは「今回、放出される備蓄米は、日本の年間消費量の3%足らず。値下がりしたコメを“少し多めに買おう”という消費行動が広がると、すぐに品薄感が出て、値上がりしてしまう。焦らずに必要な分だけ買うという消費者の行動も求められている」と話します。
テレビ朝日
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