( 274106 ) 2025/03/12 05:18:55 0 00 米価格の高騰が続いている(イメージ)
米価格の値上がり率が過去最高となっている。農水省の調べではスーパーでの販売数量・価格は2月17日週で米5キロあたり3939円と、前年同期比なんと94%増と高騰が続いている。
かつてない“値上がり”に消費者からは悲鳴があがるなか、政府は備蓄米21万トンを市場に放出する方針を決定したが、そもそも日本人の米の消費量は下がり続けている。農林水産省によると、一人当たりの米の消費量は1962年の118.3キロから2022年には50.9キロと、60年で半減しているのだ。
こうした現状を踏まえて、米農家は複雑な思いを抱いている。米農家のリアルな本音を紹介しよう。
広島県で米作りをしているMさん(70代男性)は、「米を食べてくれなくて、作っても売れなくなっていたのに、価格が上がると文句を言われるなんて」とボヤく。
Mさんは50年以上米作りに関わってきている大ベテラン。米価格の高騰については、「むしろ本来あるべき価格に近づいているのでは」と冷静だ。
「『米が高い』『なかなか売っていない』などと騒がれていますが、私に言わせると、『高いと思うなら自作するしかないですね』と。自分たちに都合の悪いときだけ消費者として主張されると、寂しい気持ちになりますね。どちらかというと今までが安かったことに気づいてほしいです」(Mさん。以下「」内同)
Mさんは「米作りは儲からない」とキッパリ断言する。では、なぜ儲からない米を作っているのか問うと、「代々受け継いできた土地で、農業をするという使命感でしかない」と答えた。それでは、どれほどまでに儲からないのだろうか。
「一昨年前まで、農協の買い取り価格が30キロで6000円ほど。たとえば10a(単位:アール。1aは100平方メートル)の田んぼで米を作ったら、収穫量は570キロほど。これを農協の買い取り価格に換算すると11万円前後です。私のところでは50aぐらいの田んぼで米を作っていているので、2800キロ強を収穫して年間60万円の売上にしかならないんですよ。とても米だけで食べていける金額ではありません」
Mさんは「米以外にトマトや茄子などの野菜を作っているほか、元々不動業をしていたため何とか生活をすることができている」と台所事情を打ち明けるが、農業はどうしても天候に左右されるため、収入は安定しない。
Mさんは、「日本人の農業離れが加速するのでは」とため息を付く。「消費者の求めるレベルがどんどん上がり、ますます儲からなくなる」というのが、その理由だ。
「米は農水省の基準でランク付けされ、当然“おいしいお米”に人気が集まりますが、最近の消費者は農薬の使用や虫の混入などにどんどん敏感になっていて、疲弊する農家も多いですよ。たとえば米にわく“コクゾウムシ”なんてのがいますよね。農家が苦労して衛生管理を徹底していても、そもそも農業は自然の中で行われるので、こうした害虫がわく可能性をまったくのゼロにすることはできない。それなのに、農家にクレームがくることはしょっちゅうです。美味しい綺麗な米が低価格で食べられると考えるほうがおかしいんです」
人材確保のため新卒の初任給があがっているという報道もあるが、「農家だって収入をあげてくれないと誰もやらなくなりますよね」とMさんは話す。そして、「農家も頭を使う時代が来た」と続ける。
「農家は自分の農地でいくら儲かっているのかきちんと把握していない人も多く、税金を払うときに『今年はこれくらい儲けた』と初めて売り上げを確認する人がいるくらいです。だから米作りが赤字なのか黒字なのか、はっきりしないままなんとなく農業を続けている。それだと結局儲け分が正確にわからないし、“適正価格”もわからない。全ての農家がきちんと収支を計算すべきなんです」
かように農業の厳しさを訴えるMさんは、「自分の代で終わらせる」と決めている。
「私は東京の大学を出て、新卒時はサラリーマン。その後実家を継いで農家になりましたが、安定した給料をもらっていた時代が恋しいです。収入が安定しないのは農家の宿命ではありますが、これだけ儲からないのであれば、もはや米は高級品とか嗜好品になっていくしかないですよね」
美味しい米が安定して食べられるのは、流通はもとより裏で努力している農家がいることを忘れてはいけない。
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