( 274406 ) 2025/03/13 06:03:38 0 00 日産自動車の内田誠社長が11日の取締役会で退任に追い込まれ、後任にメキシコ出身のイバン・エスピノーサ氏が決まった。40歳代の新トップの下で若返りと執行体制のスリム化を進め、再建を急ぐ。ただ同氏の経営手腕は未知数な上、リストラや他社との提携模索など課題は山積しており、立て直しは難航も予想される。(向山拓)
オンラインで記者会見を開く内田氏(左)とエスピノーサ氏
「従業員の一部から信任を得られなくなった」「新しい経営体制に移行し、再スタートを切ることが最善だと判断した」
内田氏は11日のオンライン記者会見で、経営刷新の理由を説明した。
エスピノーサ氏は自動車の調査会社などを経て、2003年に日産のメキシコ子会社に入社。新車の仕様や投入計画を定め、自動車会社で花形ポジションの一つとされる商品企画畑を歩んだ。24年には45歳の若さで商品企画の最高責任者に就いた。
取締役会議長の木村康氏(ENEOSホールディングス名誉顧問)は選任理由について「グローバルな経験を有し、情熱とスピード感を持って日産の発展をリードしてくれる」と説明。バトンを託す内田氏も「自他共に認めるカーガイ(車好き)で、力強く牽引(けんいん)してくれる」と評した。
だが、内田体制を支えてきたエスピノーサ氏が今後どれだけ経営改革を加速させられるかは見通せない。
内田氏は19年12月に社長に就任。その前の19年3月期に551万台あった世界販売台数は、25年3月期に約340万台に落ち込む予想で、約4割減少する。
内田氏は会見で「経営責任を問う声が、社外だけでなく従業員からも出てくるようになった」と話した。
目下の課題は、経営基盤の立て直しと新たな連携先の構築だ。
日産は25年度に約6000億円の社債償還を迫られる。大手格付け機関は、日産の格付けを「投機的」との水準に位置付ける。
次世代車の開発で大規模な投資が必要になる中、信用力の回復を急がなければ資金調達コストの上昇も懸念される。昨年11月に発表したリストラ策に対しても、社内外から踏み込み不足との声が根強い。
単独での生き残りが困難となる日産にとって、経営統合協議が破談となったホンダに代わる提携先の模索も課題だ。エスピノーサ氏は会見で「日産にはまだまだ潜在力がある」と述べ、自力再建に意欲を見せた一方、ホンダとの再交渉の可能性についてはコメントを避けた。
長期的には、ガバナンス(組織統治)の一層の見直しも欠かせない。日産は、経営会議に相当する「エグゼクティブ・コミッティー(EC)」のメンバーを11人から8人にスリム化すると発表、意思決定のスピードを速めたい考えだ。
一方、業績悪化を招いた現経営陣を続投させてきた8人の社外取締役は、全員が続投する方向だ。日産幹部は「全員の留任はあり得ない」と話す。今回の社長候補者もエスピノーサ氏のほか2人の現役外国人幹部にとどまり、外部候補を含めた提案もできなかった。
企業統治に詳しい近畿大の芳沢輝泰准教授は「業績を低迷させた内田氏を選んだ責任は大きい。取締役会にも責任はある」と話す。
仏自動車大手ルノーは11日、「提携事業に対する内田氏の関与と支援に敬意を表する。日産が再建計画を実行・完了させる意向であることを歓迎する」とのコメントを出した。エスピノーサ氏については「日産とルノーの間で近年確立された関係の継続に熱心であると確信している」とした。
日産の記者会見の主なやりとりは次の通り。
内田社長 今の日産の最優先事項は、足元の状況から一日も早く脱却することだ。従業員の一部から信任を得られなくなったことなどを踏まえ、新しい経営体制に移行し、再スタートを切ることが最善だと判断した。
エスピノーサ氏 世界中の才能あふれるチームと緊密に協力しながら、この会社に安定性と成長を取り戻していきたい。
――経営改善に臨む意気込みは。
エスピノーサ氏 日産にはまだまだ潜在力がある。多くの可能性を発揮できると思っている。
――ホンダと再び経営統合協議を行う考えはあるか。
エスピノーサ氏 臆測の内容についてはコメントできない。まずはチームで協力して、将来への取り組みを進めたい。
――米中事業の課題は。
エスピノーサ氏 米国のラインアップを強化しようとしている。最近は中国で新型車を発表した。今後に期待してほしい。
――業績低迷の責任は取締役会にもあるのでは。
木村康取締役会議長 責任の重大さを全員が認識している。現在の社外取締役は留任するが、新体制を明確に構築することが私どもの責任だと考えている。
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