( 274409 )  2025/03/13 06:10:17  
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高校無償化について日本維新の会の前原誠司氏は、教育の質の改革も重要であり、無償化によって私学を選ぶ子供が増えることは子供にとって良いことだと述べた。

また、公立学校が高いだけで選ばれる環境が変わり、質の競争が生まれると指摘し、高校の統廃合が必要だと主張した。

さらに、大学までの教育も無償化すべきで、質の改革が必要だと述べた。

(要約)

( 274411 )  2025/03/13 06:10:17  
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高校無償化によって「子ども目線で質の高い、あるいは特色のある学校をつくらなければ、選ばれなくなる環境ができる」と話す前原氏 

 

政治ジャーナリストの青山和弘が政党や各界の論客をゲストに招き、日本の政治を深掘りする「青山和弘の政治の見方」。今回はゲストに日本維新の会 共同代表の前原誠司・衆議院議員を迎え、党として掲げている「教育無償化」政策の意義について、じっくり聞いた。 

※記事の内容は東洋経済の解説動画シリーズ「青山和弘の政治の見方」の下記の動画から一部を抜粋したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。 

 

 ――今回、日本維新の会が推し進めた「高校教育無償化」については、多くの批判が出ています。無償化より先に、世界で戦えるレベルの子どもたちを育てるために教育や先生のレベルを上げることのほうが重要ではないか、という主張も聞かれますが、前原さんはどう受け止めますか?  

 

 そのとおり、無償化だけでいいとはまったく思っていません。教育の質の改革も大事です。高校教育に関しては、(無償化によって)私学を選ぶ子どもが増え、公立の地盤沈下につながるというふうに言われることも多いのですが、僕はそれでいいじゃないか、と思うんです。 

 

 なぜなら、子どもの目線で見たときに、私学に行きたかったのに親の経済的事情で諦めざるをえなかった子が、私学に行けるようになるわけです。その学校に魅力がある、あるいは強い部活動があるからかもしれない。選べるようになるのは子どもにとっていいことです。 

 

 この場合(選ばれなくなった)公立は安さだけがアドバンテージだったということで、それは高校の本当の魅力ではない。自由に選べることによって、質の競争が生まれます。子ども目線で質の高い、あるいは特色のある学校をつくらなければ、選ばれなくなる環境ができるわけです。 

 

 もちろん、公立高校でも非常に努力して魅力やレベルの高いところはたくさんあります。でも、何にせよ子どもは減っていき、定員割れの学校は増えていきます。統廃合していかないと、もう無理です。 

 

 例えば私の地元、京都府東山区は昔、11学区・11小学校あったのですが、今いくつになっていると思いますか?  

 

■水産高校を出た人は水産の仕事に就いているか 

 

 ――3分の2くらいの数でしょうか。 

 

 たった2つです。京都市内のど真ん中でこれで、しかもいずれも小中一貫校。そうでなければもう学校のボリュームを保てないんです。そういうことをにらんだら、高校の統廃合は進んでいくべきことです。 

 

 

 ――特化型の公立高校が担ってきた工業や漁業の人材育成があると思いますが、そういった学校が生徒を集めづらくなるという声もあります。これも「子どもの目線で見れば仕方ない」となるのでしょうか。 

 

 自民党の小野寺(五典)政調会長と話をしているときに、実際に今のような指摘をされました。小野寺さんは気仙沼の出身で、水産大学を卒業され、教鞭をとっておられた経験もお持ちの方です。 

 

 そんな小野寺さんに「水産高校を出た人がみんな水産の仕事に就いているんでしょうか?」と聞いたら、「そうでもない」と正直におっしゃっていました。教育で誘導したとしても、やっぱりその産業そのものを魅力的にしていかないと意味がないでしょう。 

 

 ――もう1つよくある指摘が、最近増えている中高一貫校についてです。そういった学校は仮に無償化されても高校から入ることができないので、教育の機会を増やすことにつながらないですよね。 

 

 まず1つ言えるのは、中学校までは義務教育です。その立て付けの中で公立が義務教育の役割を果たし、私学はそれに対してプラスアルファのチャレンジをしているわけです。公立の中でしっかりサービスを提供できる前提があるため、(私立を含めた)無償化はいかがなものかと。 

 

 一方で高校は義務教育ではなく、でも99%の子どもは通っている。その点が中学校とは異なります。 

 

 私は、高校無償化の次は大学無償化を実現したいと思っています。いちばん大事なのはここです。なぜなら、親の年間所得が1000万円以上の家で、18歳のお子さんの大学進学率はおよそ62%。対して所得が400万円以下の場合、同28%になります。 

 

 もちろん、専門学校や高校を卒業して社会で活躍されている人はたくさんいますし、みんなが大学に行かなければならないとも思いません。が、親の所得によって大学進学率が変わること、そして大学に進学した子どものほうが生涯収入が平均で7000万円以上高いことは見逃せません。 

 

 

 親の所得格差が子の教育機会格差、ひいては所得格差につながっているという、格差の固定化が起こっていると。なので教育については、結果は不平等でもいいけど、機会は平等に与えられる環境にしていきたい。そうすると高等教育まで無償化するというのは当たり前の道筋なんですね。 

 

 ただこれと同時に、私は大学の質的改革が必須だと思っています。 

 

■「Fラン」大学は間違いなく淘汰される 

 

 ――逆に無償化することで、質の悪い大学にも生き残りのすべを与えてしまうことにはなりませんか?  

 

 それはないです。高校と同じで、競争が激しくなりますから。いわゆる「Fラン」とされるような大学は間違いなく淘汰されていきます。 

 

 無償化と併せて必要だと思う「質的改革」が2つあります。1つは、バイト三昧などで授業に出ない子、学ばない子は無償化の対象にしないこと。これは納税者の理解を得られないからです。なので入学の門戸は広く、一方で卒業を難しくする必要があります。 

 

 2つ目は、大学の経営や在り方そのものです。日本の大学は海外から見ると相当遅れています。単純な良し悪しではないですが、例えばハーバード大学と東京大学を比べると、いくつも違う点がある。 

 

 ハーバード大学は何に最も力を注いでいるかというと、スタートアップ創出。1990年代から30年間あまりで約4000社をつくっています。その中からユニコーン企業(創業10年以内で評価額10億ドル以上の未上場企業)は70〜80ほど生まれています。 

 

 そしてハーバード大学卒のスタートアップ成功者などが、大学に寄付をする。それによってつくられた基金が今、5兆円くらいあるんですね。しかも大学はそれを運用している。現在の学長は学者出身ではなく運用のプロで、平均利回り11%で運用しています。 

 

――日本お大学にも、例えば東大にも基金はありますよね?  

 

 東大にも一応、基金はあります。ただ、年間で入れているお金が2億円ちょっと。ハーバード大学とは3ケタ違います。一方で、国立大学なので国から多くの運営交付金ももらい、授業料も上げている。なので、こういう大学の構造そのものがまず変わらなきゃいけない。 

 

 無償化について批判の声を上げてくださる方がいるのは、私はありがたいことだと思っています。少なくとも無関心ではないということなので。関心を持ってくださっている皆さんに、いやいや無償化だけじゃないんですよ、大学改革もセットで行っていくべきなんですよと伝えたい。 

 

 それで、話は元に戻りますが、親の所得に関係なく優秀な子はいっぱいいるわけです。そういう子に道を開く。それが無償化だと思っています。 

 

青山 和弘 :政治ジャーナリスト、青山学院大学客員研究員 

 

 

 
 

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