( 274681 ) 2025/03/14 06:01:28 0 00 日本維新の会が自公と大連立を組む可能性について、きっぱり否定する前原氏。その理由とは?
政治ジャーナリストの青山和弘が政党や各界の論客をゲストに招き、日本の政治を深掘りする「青山和弘の政治の見方」。今回はゲストに日本維新の会 共同代表の前原誠司・衆議院議員を迎え、本予算に賛成した背景や、自公「少数与党」と今後どう対峙していくのかなどについて、じっくり聞いた。 前編:「高校無償化で公立淘汰」起きてしかるべき理由
※記事の内容は東洋経済の解説動画シリーズ「青山和弘の政治の見方」の下記の動画から一部を抜粋したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。
――今回日本維新の会は、新年度予算案の衆議院採決で賛成に回りました。維新の主張で予算案に反映された部分は、高校教育無償化に向かう過程の1100億円だけ。それをもって115兆円あまりの予算案全体をよしとするのか? それでは与党ではないか? という批判があります。
与党ではありません。われわれは教育の無償化、そして社会保険料を下げる改革について与党との合意を得た、つまりわれわれの政策実現をしたということをもって大局的に賛成したのであって、われわれ自身が与党の補完勢力であるとは決して思っていません。
たった1100億円か、「年収の壁」撤廃(178万円への引き上げ)なら7.6兆円じゃないか、という批判もよくされますが、今の額だけを比べるんですか? という点は指摘したいです。
教育関連は令和7年度は1100億円ですが、その後は高校の私学加算の無償化、全国の小学校給食の無償化、0〜2歳の保育料の軽減も始まります。これらを合わせれば毎年1兆円程度が国民の可処分所得にプラスになる。もちろん、1兆円と7.6兆円に開きがあるのも事実ですが。
「年収の壁」に関しても、国民民主党さんが呼びかけてくれればわれわれとしては一緒にやっていく用意はありました。私は昭和の人間なので、Xや記者会見経由だけでなく実際に会って、国民民主と維新、両方の要望をまとめて与党にのませようじゃないかというご提案があれば、喜んでやっていました。
また、社会保険料に関してはまさにこれからのことです。目標は4兆円、1人当たり6万円の削減。自公には出しえない玉をわれわれから投げ続ける、そういう座組みをつくるわけです。どのくらいの成果を出せるかわかりませんが、われわれは野党なので妥協するつもりもありません。
■所得税より負担重い社会保険料をどう下げる
――国民負担の状況を考えると、所得税の減税よりも、より負担額の大きい社会保険料のほうを下げるべきという考え方はありますよね。
まったくそのとおりです。よくモデルケースで申し上げるのは、年収350万円の方でざっくり、所得税は7万円なのに対し、社会保険料は50万円。税と違って法改正が必要なく、負担がどんどん上がっています。労使折半なので、個人だけでなく会社側の負担も増えています。
国民民主党が旗振り役となって所得税減税に取り組まれたことを批判するつもりはないし、むしろ一緒にやれればいいと思っていたくらいですが、その前提で、やっぱり額の大きさに鑑みればこっち(社会保険料)をどう下げるかを必ずやらなければなりません。
――社会保険料しかり、まさにこれから話し合っていくテーマが多い局面です。一方で通常国会の会期末には、内閣不信任案が提出される可能性もあります。その場合、維新は不信任案に賛成しづらくなったのではありませんか。
まったくそんなことはありません。
――ただ、これからも政策を協議していくという合意をして、本予算にも賛成していますよね。
本予算はわれわれの政策実現という大局に立って賛成をしたわけで、自公を助けたものではありません。国民生活に必要な予算執行のために実を取った。だから、連立政権を組んだわけではありません。
この3月からは政治と金の問題についてしっかりやらなければなりません。2024年の総選挙でなぜ自公が過半数割れしたかというと、旧安倍派の裏金問題について自民党が明確に説明したとは国民に思われていないからです。その点、少数与党という今の状況をわれわれのアドバンテージとしながら、しっかり追及していかなければなりません。
■自民の補完勢力になれば消滅する
――新年度予算案に賛成し、これから社会保険改革という大きなテーマも一緒に協議していくことを考えると、この流れで維新が自公と連立政権を組むこともありうるのではと思えるのですが。
1994年からの「自社さ政権」(自由民主党・日本社会党〈のちに社会民主党〉・新党さきがけによる連立政権。前原氏は当時新党さきがけに所属)というものがありましたが、結局自民党の支持率を回復させることにつながり、そしてわれわれは捨てられるという経験をしました。つまり、自民党と組んだら終わりだと。
公明党は自分たちの支持団体を持っているので、むしろそれを自民党の方々があてにしていますよね。その意味において、自公の仲はうまくいっているけれども、自民の足りないところにほかの政党が入っていくと、結局は自民の補完勢力と見なされ、消滅するのではないかと思います。
やはり連立という形ではなく、政策実現のために国民目線で取り組むことが大事かなと思います。
――前原さんは長い政治人生の中で大変な紆余曲折を経て、今回維新の共同代表という脚光を浴びるポジションに就かれました。この立場でこれから何をしていきたい、変えていきたいと思っているんですか?
いちばんは、もう一度この国が世界の中で輝き、誇りを持てる国にしていきたいということです。国際競争力が落ちていっている、さまざまな面で課題先進国だと言われているけれど、それを乗り越えていかなければならないし、それは政治の役割です。
その1つが人づくりであり、企業の内部留保を設備投資や人件費へとうまく回していくことであり。先ほどスタートアップの話に触れましたが(前編:「高校無償化で公立淘汰」起きてしかるべき理由)、新たな起業が社会変革と付加価値を生み、新たな雇用を生むダイナミズムも必要です。
これらのために、政治には何ができるのか。つねに考えていきたいというのが、1つの大きな柱です。
もう1つの柱は、私が国会議員になった原点は国際政治学や外交・安全保障を学んだことなので、自分の国を自分で守れるようにすることです。
今はもちろん日米安保が大事。これがなければ日本の主権や国民の命を守れません。戦後80年間でこんなにアメリカにおんぶに抱っこになったので、私が議員をやっている間に変えるのは難しいかもしれない。それでも何十年か先には、日米安保がなくても独立をしっかり守れる国になってもらいたいなと思っています。
そのためにやれることを、これまでもやってきましたし、これからもやっていく。防衛面だけでなく食料自給率を上げたり、エネルギー自給率を上げたり、そういうことも必要でしょう。
青山 和弘 :政治ジャーナリスト、青山学院大学客員研究員
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