( 274979 )  2025/03/15 06:51:19  
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高齢者夫婦が基礎年金を頼りに生活していたが、夫が亡くなり収入が半分に減少。

生活費も減少せず、経済的に困窮している。

節約生活を余儀なくされ、食費を削減するなどしているが、栄養不足や医療費の不安がつのる。

生活保護を考えたが、預貯金があるため難しい状況。

厚生労働省の調査によると、高齢者世帯の半数以上が生活保護を受けており、貧しい状況に耐える高齢者が多い実態が浮かび上がっている。

(要約)

( 274981 )  2025/03/15 06:51:19  
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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

年金を頼りに暮らす高齢者夫婦。基礎年金を満額受け取っていれば、夫婦で月14万円程度を手にすることになります。もしパートナーが亡くなったら、年金は半分に。しかし生活費も半分になるわけではなく、生活が苦しくなることは明らかです。 

 

街のコミュニティセンターでくつろぐ佐々木悦子さん(仮名・73歳)。朝9時の開館と共に訪れ、オープンスペースで過ごすのが日課になっています。 

 

――家にいると暖房費がかかるから。ここで過ごせば、少しは節約になるでしょ 

 

このような日常を送るようになったのは、昨年、夫・博さん(仮名・享年75歳)が亡くなってから。 

 

――毎朝6時には起きてくるのに、その日はいつまで経っても起きてこなくて。布団のなかで冷たくなっていたのよね 

 

急性心筋梗塞。元気だけが取り柄の人だったのに……と悦子さん。携帯電話のなかに残る博さんの写真を眺めながら懐かしそうに話します。夫婦は約50年間、二人三脚で飲食店を切り盛りしてきました。しかし博さんが亡くなったことで店を閉店。心にぽっかりと穴が開いたような感覚が今なお消えません。 

 

――ずっと仕事をしてきたから。急にすることがなくなってしまって……本当に1日が過ぎるのが長いわ 

 

博さんが亡くなってからは、携帯に残る動画や写真を見ては博さんとの思い出に心苦しくなる……そんな日々でしたが、最近はそれどころではないといいます。原因は経済的な困窮。 

 

飲食店を続けてはいたものの、収支はトントン。生活は夫婦の年金が頼りでした。基礎年金夫婦で月14万円ほど。それでも仕事以外することがほとんどない夫婦にとって、十分な生活費だったといいます。しかし博さんが亡くなると、年金は悦子さんの基礎年金月7万円だけに。2人が1人になったからといって、支出が半分になるわけではありません。月7万円で家賃、食費、光熱費、通信費……毎月赤字となり。元々少ない貯蓄を少しずつ少しずつ取り崩していかないと、とても生活はまわりません。できるだけ節約しようと、“家にいない生活”を始めて半年ほどになります。 

 

 

さらに節約を心がけたのが食費。1日3食を2食に、そして1食へと減らしました。スーパーには基本、閉店間際しかいきません。割引商品を目当てに通い、賞味期限ギリギリの食材をかき集めるのです。とても栄養バランスなど考える余裕などありません。体調が悪い日も多いといいます。 

 

国民健康保険料や介護保険料の支払いも重くのしかかります。体調を崩しても、医療費を気にして病院に行くのをためらうようになりました。持病の薬も自己判断で量を減らし、症状が悪化することも。日々の生活で精いっぱいの悦子さんにとって、将来への不安は計り知れません。 

 

生きていくだけで大変。そこでふと頭をよぎったのが生活保護でした。しかし、一度役所に説明を聞きに行ったとき、最低生活費以上の預貯金があるうちは生活保護を受けるのは難しい……そう感じたといいます。 

 

悦子さんが住んでいる自治体の最低生活費は7万4,220円(70〜74歳、1人暮らし)。さらに住宅扶助は5万3,700円。つまり合計月12万7,920円が最低限の生活を送るのに必要だということです。それに対して、悦子さんの生活費は月7万円。生活保護よりも少ない金額ですが、預貯金を考慮すると生活保護を受けることは難しいのです。 

 

――貯金が底をついたら生活保護の基準額を下回るから、そしたら申請に来てくださいって。生活が楽になるならいっそうのこと散財しちゃおうかしら。大した散財なんてできないんだけどね 

 

生活保護を受けるよりも貧しい思いをしなければならない……そんな生活に限界を感じる今日このごろだといいます。 

 

厚生労働省『被保護者調査』によると、昨年12月時点で生活保護を受けているのは165万2,199世帯。そのうち高齢者世帯は90万2,810世帯と半数以上を占めています。しかし悦子さんのように、生活保護以下の生活を強いられている高齢者は、このような数字として見えてきません。人知れず、耐えるしかないのです。 

 

[参考資料] 

 

厚生労働省『生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)』  

 

厚生労働省『被保護者調査』 

 

 

 
 

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