( 275229 ) 2025/03/16 06:20:16 1 00 れいわ新選組や国民民主党が若年層に人気を集めている理由について、政治アナリストの佐藤健太氏が解説しています。 |
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高額療養費制度をめぐる対応で石破茂政権が右往左往する中、れいわ新選組や国民民主党が若年層に響いている。自民党は政党支持率でトップに立つものの、高齢層の依存体質から抜け出せていない。一方、れいわ新選組の山本太郎代表や国民民主の玉木雄一郎代表は18歳から30代で支持を拡大する。なぜ彼らは若者に人気なのか。選挙分析に定評がある経済アナリストの佐藤健太氏が分析するーー。
2月26日、日経新聞の世論調査(2月21~23日)が永田町に衝撃を与えた。「れいわ、現役世代が支持 国民民主は30代で自民超え」と題した記事で、れいわ新選組の政党支持率が6%に伸び、日本維新の会と4位タイで並んだという内容だ。昨年10月の総選挙後は3~4%で推移しており、すでに「倍増」の勢いを見せる。今夏の参院選投票先としては8%で維新(7%)を上回る状況だ。
れいわ支持者は18~39歳と40~50代の「現役世代」に多い。先の総選挙で公示前の3議席から3倍増となったとはいえ、少数野党にすぎないため国会における「発言力」は低いが、山本代表を中心とする「発信力」は着実に若年層に響いていると言える。
NHKの世論調査(2月7~9日実施)を見ても傾向は同じだ。18~39歳の「支持政党」トップは16.2%で自民党と国民民主党が並ぶ。次は、れいわ新選組の4.2%だ。立憲民主党と維新は3.5%にとどまっている。自民党は80歳以上が48.5%と最も高く、立憲も60~80代の高齢層で10%以上を得ている。だが、逆に国民民主は40代・50代で10%超となり、れいわ新選組も40代・50代で5%前後となっている。
産経新聞とFNNの調査(2月22、23日実施)では、18~29歳の自民支持率は11.8%で、トップの国民民主(18.9%)に抜かれている。30代は自民党が11.2%であるのに対し、国民民主は15.9%、れいわ新選組は14.4%だった。40代は自民が19.4%、国民民主11.9%、れいわ11.5%の順になっているが、若年層では少数野党2党の方が人気を得ている。
日経の世論調査を見ると、国民民主は2024年11月~今年1月の調査で18歳から39歳の支持率が自民党を上回っていることがわかる。マスメディアは「国民民主フィーバー」「れいわショック」などと称するが、これは一過性のものではないだろう。では、彼らの何が現役世代に響いているのか。
まず言えるのは、2党ともトップのキャラクターが濃く、かつ主張がわかりやすい点だろう。念のため触れておくと、山本代表と玉木代表の主義・主張は大きく異なるのだが、高い発信力で国民にわかりやすく訴えていくスタイルは似ている。街頭演説や動画配信を多用し、パネルや図解を用いながら政権与党の失策や国の行く末に厳しい言葉で疑問を呈している。
自党の伸長ぶりには山本代表も3月4日の記者会見で「すごいですよ。だってバックに企業も宗教もついてないんですよ、私たち。それで本当に草の根でここまできたっていうのは事実上の奇跡で、国会の中では最も嫌な集団だなっていう風に思う」と語る。れいわ新選組は「世界に絶望してる?だったら変えよう。れいわと一緒に。」と掲げ、消費税廃止や社会保険料の減免、季節ごとのインフレ給付金などを打ち出す。厳しい経済状況に置かれている若年層らに訴えかけ、SNSを多用しながら既存政党とは異なるアプローチで支持を拡大する。
同様に若年層から支持を集める国民民主の玉木代表は先の総選挙で「手取りを増やす」と掲げた。これは一見すると、どこの政党も掲げてきたような「バラマキ型政治」に思えるのだが、向けられた視線は現行制度の矛盾だった。その代表例が「年収103万円の壁」であり、ガソリン価格に上乗せされている暫定税率の見直しだろう。政府・与党の急所をつくような「減税」部分に焦点を当てていることがわかる。
政府は、好調な企業業績に支えられて税収が過去最高を更新していると強調する。2025年度の一般会計税収は78兆4400億円を見込み、6年連続で最高を記録するという。連合が公表した2024年春季労使交渉(春闘)における最終集計を見ると、基本給を底上げするベースアップと定期昇給を合わせた平均賃上げ率は5.1%で33年ぶりに5%を上回った。
だが、物価高が続く中で人々の懐が潤っているかといえば、決してそうではないだろう。30年近くも日本人の給料が上がらず、低成長の国家としてさまよってきた状況で「税収が過去最高です」と言われても実感する人は少ない。何より、国民から徴収した税収が伸びているならば、その分は返すべきだと考える人もいるのは当然だ。
年収103万円という非課税枠は共働き世帯が増加する中で矛盾していると言え、ガソリン価格に上乗せされている暫定税率も「そもそも暫定だったはず」と急所を突いている。国民民主の政策や主張は人々が感じる不満を端的に表現するものが並べられ、「共感」を呼ぶのは自然な流れとも言える。
そうした観点からは、れいわ新選組や国民民主党の伸長は必然的なものだ。30年近くも国民が成長の果実を実感できない中、1971~74年生まれの団塊ジュニア世代に続く人々は「就職氷河期に遭遇」「給与が上がらない」「退職金も低下」という三重苦を味わってきた。それよりも下の世代は上司たちの時代よりも低年収に抑えられ、「バブル?なに、それ」とシラけている。高度経済成長期から1980年代にかけて強かった日本はもはや“昔話”のことであり、国内総生産(GDP)が追い抜かれていく状況に呆然とするしかない。
政権を担ってきた自民党や立憲民主党の野田佳彦代表に対して「今まで何をしていたんだ」と冷めた視線が向けられる今、新興勢力はそうした彼らの期待を背に勢いを見せている。2009年に民主党政権が誕生したことを知る若者は少なくなっているが、山本代表や玉木代表は若年層が感じていること、我慢してきたことをズバッと言ってくれる「アバター」となりつつあるのだ。
自民党の長島昭久首相補佐官は2月24日のX(旧Twitter)で、「30代の支持率で、自民は国民民主とれいわの後塵を拝したとのこと。私は常々れいわ新選組を侮るべからずと訴えてきた。現状に対する若い世代の不満や不安を確実に掬い上げて政策提言している。自民は、政府与党として真剣に向き合い、その幾許かでも実現させるべきだ。若い世代の税や社会保険料負担、奨学金返還の軽減は急務だ」と危機感を隠さない。
SNSが全盛期を迎え、若年層には活字よりも動画での主張が響く時代に入った。イラストやグラフを使用しながら難しい行政用語や問題をかみ砕いて解説し、それを「みんなの力で変えよう」と訴えかけるスタイルは若者たちに受け入れられやすいのだろう。「縦型」のショート動画が拡散され、視覚的にも響きやすい面がある。キーワード選択のセンスに加え、小中学生にもわかりやすい説明は今後も若年層をひきつけるはずだ。
ここで1つの疑問が浮かぶ。高齢層の支持に頼る自民党はいつまで政権与党の座にいられるのかという点だ。当然ながら、今は若年層の人々もやがて高齢となる。その時、加齢とともに自民党支持者になるわけではないのは当然だ。つまり、れいわ新選組や国民民主を支持する国民が高齢者の仲間入りをする時には、高齢層の自民離れが生じている可能性がある。分厚い高齢層を取り込めなければ、自民党は選挙で勝ち続けることは難しくなるだろう。
ある自民党閣僚経験者は筆者に「民主党政権時代の失敗があるから、立憲民主党の野田代表は現実的なことしか言わなくなった。でも、政権を担ったことがない政治家は何でも言いっぱなしにできる。その政策や主張が響くことが一番怖いんだよな」と語ったことがある。少数与党に転落した自民党は、このまま世代間格差を解消できず「下野」に向かうのか。その“時限爆弾”の炸裂までに残された時間は少ないように映る。
佐藤健太
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