( 276324 )  2025/03/20 05:37:47  
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「免許センター」では、免許証の交付や更新時に交通安全協会への加入が勧められることがあり、これは任意である。

交通安全協会は地域ごとに存在し、交通安全や事故防止の活動を行っている。

加入者は年会費を支払い、会員特典を受けられるが、会員離れが進んでいる背景には加入の任意性、理解や賛同の不足、過去のイメージなどがある。

交通安全協会の活動内容や理念を十分伝えることが重要であり、特典の提供や活動の効果も説明する必要がある。

(要約)

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免許センター(画像:写真AC) 

 

 免許証の交付や更新時に、交通安全協会への入会を勧められることがある。交通安全協会は、交通事故の防止と交通安全の向上を目的とした民間の地域ボランティア団体であり、地域ごとに存在し、交通安全に関連する事業や活動を行っている。 

 

 例えば、広島県交通安全協会は、ウェブサイトに 

 

「「交通事故のない安全で快適な交通社会を目指して」 

 

と記載し、地域社会における交通安全の推進を行っている。具体的な活動内容には、交通安全に関する啓発活動や講習会の実施、交通事故防止のための情報提供などが含まれている。 

 

 交通安全協会への加入は任意であり、免許取得や更新時に勧められることが多いが、強制ではない。会費の納入も任意で、地域の交通安全活動に資金を提供する形となる。 

 

 しかし、加入を勧められる場所が免許の交付や更新の窓口であるため、場合によっては強制と感じる人もいるが、正式には自由意思による加入となっている。 

 

広島県交通安全協会の活動内容(画像:広島県交通安全協会) 

 

 交通安全協会には、全国的な全日本交通安全協会と、各都道府県ごとの都道府県交通安全協会が存在する。免許証の交付や更新時に入会を勧め、会費を集めているのは、主に各都道府県の交通安全協会である。 

 

 各都道府県によって活動内容は異なるが、静岡県交通安全協会のウェブサイトには次のような活動が紹介されている。 

 

・交通安全運動における街頭広報啓発活動 

・園児、児童、生徒、高齢者を対象とした交通安全教室 

・通学路を中心とした交通指導 

・交通安全子供自転車大会や交通安全コンクールの開催 

・優良運転者、交通安全功労者などの表彰 

 

 年会費は通常300円~700円程度で、運転免許の交付料や更新料とともに支払うことが多い。静岡県の場合、年会費は400円で、免許の有効期限が5年であれば、更新時に 

 

「会費400円 × 5年分 = 2000円」 

 

を一括で支払うことになる。 

 

 集められた会費は、交通安全広報のための新聞、テレビ、ラジオの広告費や、チラシ、横断幕、懸垂幕の作成費、安全運転を呼び掛けるためののぼり旗、無料配布される自発光式反射材などの購入費として活用される。これらの活動資金として会費が使われることは明確だが、免許の交付や更新時に入会金を支払う加入者にとって、直接的なメリットがあるのかは疑問が残る。 

 

 

交通安全協会の会員特典(画像:福島県交通安全協会) 

 

 入会することによるメリットは、会員限定の特典が受けられる点である。各協会によって異なるが、主な特典には以下が含まれる。 

 

・更新忘れ防止のための葉書の郵送 

・免許証ケースなどのグッズの配布 

・チャイルドシートの無料貸し出しや協賛店での割引制度 

・優良運転者や交通安全功労者としての表彰 

 

 さらに、長野県交通安全協会(長野県長野市)のように、交通事故にあった場合に死亡見舞金や重度後遺障害見舞金を受け取れる地域もある。 

 

 これらの特典は、入会を検討する人々にとって魅力的な要素である。しかし、徳島新聞のウェブサイトによると、1992(平成4)年度には90%を超えていた入会率が、2009年度以降50%を割り込んでいる。 

 

 また、滋賀県交通安全協会のウェブサイトによると、2021年度の免許更新者数20万7347人に対する加入率は36.2%となっており、会員離れが進んでいることがわかる。この現象にはどのような背景があるのだろうか。 

 

全日本交通安全協会主催の「反射材フェア2024」(画像:全日本交通安全協会) 

 

 交通安全協会の会員離れが進んでいる背景には、地域性や経済状況、更新料の高額化など複数の要因があるが、最も大きな要因は任意という点だ。 

 

 前述したように、任意であるにもかかわらず入って当然として勧誘され、いわれるがままに入会した人々のなかには、後に退会するケースが多い。それは、交通安全協会の活動に対して理解や賛同がないまま入会してしまうことが原因であると考えられる。 

 

 さらに、かつて交通安全協会が警察の天下り先として報じられたことがあり、世間から 

 

「単なる警察官の受け皿」 

 

と認識されてしまったことも、加入者減少に一因を担っているようだ。 

 

 しかし、実際に交通安全協会の活動内容を確認すると、街頭広報や交通安全教室など、交通安全や事故防止に役立つ活動も行われている。したがって、加入を勧める際には、任意であることを明確にし、協会の理念や活動内容をしっかりと伝えることが重要だ。募金活動と同様に、人々の善意に訴えることで、協力したい、加入したいという意識が生まれるのではないか。また、その活動がきちんと効果を発揮しているのかを説明することも重要である。 

 

 単に加入者数を増やしたいのであれば、特典を伝えることも効果的だろう。年会費が安価であっても、活動や理念に対する理解が得られず、メリットを感じられなければ、加入者は増えないだろう。 

 

 交通安全協会に加入するかどうかは個人の判断に任せられるが、もし会費が交通安全に役立っているのであれば、協会の存続のためにも加入は必要だと考える。当然、入会者の期待を裏切らないような取り組みが求められるが、入会することでドライバーひとりひとりの交通安全に対する意識が高まることが期待される。 

 

小島聖夏(フリーライター) 

 

 

 
 

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