( 276494 )  2025/03/21 03:47:00  
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野沢温泉村では外国人観光客の増加により、「夕食難民」という問題が深刻化している。

観光客や地元住民は、高騰した宿泊費や飲食店の料金、外国人スタッフの増加などに困惑している。

店舗のメニューが英語のみだったり、日本酒を注文しても焼酎が出てきたりする事態も起きており、地元の伝統や文化が失われる可能性も指摘されている。

今後、インバウンド観光客が増えることでオーバーツーリズムの問題が全国的にも加速するかもしれない。

(要約)

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外国人観光客が溢れる野沢温泉村では「夕食難民」の問題も深刻化 

 

長野県・野沢温泉村では“オーバーツーリズム”が引き起こす問題が年々深刻化している。コロナ禍以降、インバウンドの影響もあり外国人観光客数は増加し、宿や飲食店の値段は高騰している。夕食時になると街には多くの“夕食難民”の姿が…。「第2のニセコ」とも言われている野沢温泉村に向かい、現地の声を聞いてみた。  

 

“オーバーツーリズム”が引き起こす問題が年々深刻化している長野県・野沢温泉村。 

 

記事前編では、現地にて地元民や外国人観光客に取材を行なったが、今回は野沢温泉村に訪れた日本人観光客に本音を聞いてみた。  

 

埼玉県から来た40代男性は温泉街の変貌ぶりに驚いた様子だった。  

 

「以前来たときは、日本人のお年寄りの観光客が多く、昔ながらの風情ある温泉街という印象でしたが、久しぶりに来たらすれ違う人はほぼみんな外国人観光客。まるで外国に旅行へ来たような気分です。 

 

それとインバウンドの影響で、旅館や飲食店の価格が高騰しているなぁと感じます。飲食店に入ったらビール1杯800円もして驚きました。」  

 

また、東京都からスキーを目当てに来た20代女性もこう話した。 

 

「本当は雪の状態がいい1月〜2月に来たかったけど、その時期は宿泊費がピークだし、予約が全然取れなかったからこの時期になりました。今や観光客だけでなく、店の従業員も外国人だらけで、飲食店に入ったら当然かのごとく、英語で話しかけられて戸惑いました。英語のメニューしかない店もあって、注文するだけでも一苦労です」 

 

昼間はスキー場に人が集中しているため、温泉街はそこまで混雑していない様子だった。しかし、17時半頃になると日も落ちてきて、街中に“夕食難民”の姿が増え始めた。  

 

18時台になると雪国の寒さも相まって、食事ができないことにイラつきながら温泉街をさまよう人もいた。 

 

20代男子大学生3人組はお腹を空かせてこう話す。 

 

「スノボ終わりでお腹が空いているのに、予約をしてないからどこの店にも入れず困っています。すぐに入れる店を今必死にスマホで調べているけど、全然出てこない。 

 

こんなに混んでいるとは思わなかったので、予約しなかったことを後悔しています。夕食もまともに取れないなんて思いもしませんでした」 

 

飲食店から出てきた20代女性2人組はこう話した。 

 

「30分以上歩き回って、ようやく入れる店を見つけました。でも、その店も混雑していたため、見ず知らずの外国人男性と相席することになって気まずかったです」 

 

また、40代男性は肩を落としながらこう話す。 

 

「日本酒の名産地だからそれを楽しみに来たのに…。店には外国人の店員しかいなくて、日本酒を注文したら間違えて焼酎が出てきました。外国人向けにウイスキーやカクテル、ビールしか提供していない店が多いのが残念です」 

 

外国人観光客にも困惑する姿が見られた。困り果てた様子で街中にたたずんでいた30代アメリカ人観光客の男性4人組の一人は言う。 

 

「すぐに入れる店はフードを提供していないバーばかり。鍋の店は空いていたけど、アメリカ人の僕たちからしたら、鍋は友達同士でも不衛生に感じて抵抗がある。寒い中、外でさまようのはもう疲れたよ」 

 

温泉街には“夕食難民”になり喧嘩する外国人カップルの姿も見られた。 

 

30代オーストラリア人男性は、彼女から「ラーメンは嫌」と言われたとか。 

 

「入れる店はラーメン屋しかない。でも、彼女が『ヘルシーなジャパニーズフードを楽しみにしていたからラーメンは嫌だ』って言うんです」 

 

20代オーストラリア人女性も人気店に入れず残念がった。  

 

「SNSで美しい日本食レストランを見つけて、そこへ行くのを楽しみにしていたのに、行ってみたら予約でいっぱいで入れなくて残念です」  

 

 

“夕食難民”になるのは観光客だけではない。地元に住む30代男性はこう話した。 

 

「近所の店はいつも外国人観光客でいっぱいで入れないから、外食をしたいときには隣町まで行かなければいけなくなりました。オーバーツーリズムの影響で、地元民が家族とゆっくり過ごせる場所が少なくなってきているのは寂しいです」 

 

また、温泉街で飲食店を営む40代男性は、野沢温泉村の現状をこう語る。  

 

「最近、このあたりの物件はどんどん外国人に買収されています。中でも、オーストラリア人の物件所有者が多いです。もともとの所有者が高値で買い取ってくれる外国人に物件を売ってしまい、店の経営者も従業員も外国人で、お客さんもほとんど外国人しかいないというような店が増えています。  

 

外国人経営者の中には、村の文化に対してリスペクトや愛着がない人もいて、これから先、村の伝統が失われてしまうのではないかと心配になります」  

 

日本政府は、2030年に外国人旅行者の数を6000万人に増やす目標を立てている。今後、インバウンドの影響により、日本各地でオーバーツーリズムの問題はさらに加速していくだろう。 

 

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

 

集英社オンライン編集部ニュース班 

 

 

 
 

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