( 276506 ) 2025/03/21 03:58:50 0 00 農家の持続可能性と食料安全保障
「農業収入だけでは生活は成り立たない。めちゃくちゃ節約すれば成り立つが、農業収入だけだとなかなかキツい」
農業の実情を語ってくれたのは、米利休さん、26歳。東京大学卒業後、祖父から田んぼを受け継ぎ、一昨年からコメ農家の道へ足を踏み入れた。
米利休さん
生きていくために必要なコメ農家の仕事だが、なぜそんなにも儲からないのか?
「特にコメ作りで儲かりにくいと言われている大きな原因の一つとして、機械代が非常に高い。トラクターとかコンバインとか、そういった大型機械・農機がめちゃくちゃ高くて。ここ10年で資材代も機械代も1.5倍とか2倍とか金額が跳ね上がったにもかかわらず、米価はそんなに変わってこなかった」
コストは跳ね上がり続けるものの、変わらないコメの価格。その中でも利益を上げる方法があるという。
「売り上げを上げる面では販路を開拓するとか、規模を拡大する。コストを下げるところについては、これもまた規模を拡大することも入っている。例えば規模を大きくすればトラクターなどの機械代がものすごく下がる。そうすると生産コストが下がる」
農地拡大。生産量を増やし、大型農機具に対するコストも下がるという一石二鳥の方法。しかし、現実では…
「基本的に規模を拡大しようと思ったら農業を辞める方から貸していただくとか買う形になるが、地域の方から認められていない方には貸さないのが当たり前に起こる。例えば『この農地を僕は100万円で買います』と言ったとしても『10万円で買います』という信頼している人に農地を渡すことがざらにある」
農村の小さなコミュニティの中で、農地拡大は至難の業となっているようだ。そこで米利休さんが行っているのがSNSの利用だ。
「SNSはお金をかけずに一番認知を拡大できる。特にSNSで僕は販路を開拓したが、SNSで販売したおかげで単価が高くなって、売り上げが上がった」
SNSで発信することで消費者が生産者を認知し、ある種のブランド化につながっているようだ。
「農業を『農業ビジネス』として捉えてやっていくことが非常に重要だと思う。農業をビジネスとして捉えていけば、売り上げ・コストを下げることも、いろいろなところに目を向けることは大変になるが、それこそ農業で稼ぐということ」
2050年までの主食穀物需要・国内生産・ギャップの成り行き推計
農家の経営の持続可能性を考えたとき、今後に向けてどのような改革が必要なのか?
三菱総合研究所 研究理事の稲垣公雄氏は「コメ作りをするための機械としては、田植え機とトラクターと稲刈り機の3つは必要で、1000万円くらいはかかってしまう。生産費との比較を見てみると、機械一式で耕作できる20ha〜30haくらいを目指すと利益も出る」と指摘。これまで政策的にも集約化を目指してきたというが、今後を考えると懸念もあるという。
「零細農家の農業を中規模・大規模にシフトしていくことで、一定程度、この15年くらいはうまくいってきた。だが、我々の推計ではこの先それが回らない可能性が高く、主食のコメですら自給が難しくなるかもしれないという見通しをもっている。万が一の時には、小麦を輸入している分もコメを作ることで自給を保つという食料安全保障の姿をしっかり作る必要がある。これから、10年、20年先を見据えた政策のあり方を見直す時期に来ているのは間違いないと思う。農水省としてもそういう取り組みを今始めようとしていると聞いている。消費者として、それをよく見て、『こうしてほしい』『こうすべきだ』という意見を言っていくことが重要になると思う」と述べた。 (『ABEMAヒルズ』より)
ABEMA TIMES編集部
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