( 277324 )  2025/03/24 04:52:47  
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政府が提案していた年金制度改革案について、自民党内で懸念が広がっている。

改革案は将来の年金給付水準を引き上げる一方、国庫負担が必要で参院選後に先送りされる可能性がある。

改革案の一環として、基礎年金給付水準を底上げするために厚生年金積立金を活用する計画があり、企業側からは不満が出ている。

自民党では、かつて"消えた年金問題"で惨敗した経験があり、再び年金を争点にした選挙を避けたいとの意見が多い。

(要約)

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主な公的年金制度改革案と自民党の懸念 

 

政府が今国会での提出を目指していた年金制度改革関連法案の扱いが定まらない。本格議論に入った自民党で夏の参院選への影響を不安視する声が相次いでいるためだ。改革には将来の年金の給付水準を引き上げる目的があるが、追加の国庫(税)負担が必要になる可能性もあり、参院選後への先送り論がくすぶっている。 

 

■年金テーマの選挙は「負ける」 

 

「過去の経験上、年金をテーマにした選挙は負ける」「もっと国民に丁寧に説明すべきだ」 

 

自民党が19日に開いた厚生労働部会では、出席した議員から今国会での法案提出に慎重な意見が相次いだ。 

 

今回の改革案の柱の一つが、会社員らが加入する「厚生年金」の積立金を活用し、「基礎年金(国民年金)」の給付水準を底上げする案だ。 

 

厚生年金と基礎年金は制度の安定を目的に、それぞれ年金額の伸びを物価や賃金の上昇分より抑える「マクロ経済スライド」と呼ばれる仕組みが適用されており、抑制が長引くほど給付水準が低下する。現在の経済状況のままだと、財政が厳しい基礎年金は抑制が2057年度まで続き、給付水準は現在より3割低下。一方、厚生年金の財政は堅調で、26年度にも下げ止まる見込みだ。 

 

■「流用だ」、保険料折半の企業側から不満 

 

今回の底上げ案は、厚生年金の抑制を36年度まで続け、抑制分を基礎年金に振り向ける内容だ。その場合、基礎年金の抑制期間は20年ほど短縮され、給付水準が改善する。底上げに充てる厚生年金積立金の総額は今後100年間で計約65兆円と想定される。 

 

ただ、厚生年金に加入していない人たちに充てることになるため、厚生年金加入者や保険料を折半で負担する企業側からは「流用だ」との不満があがる。将来的には厚生年金受給者の年金額も手厚くなるとはいえ、26~40年度は減少する見通しも示されており、厚生年金に40年間加入した会社員の夫と専業主婦のモデル世帯では40年度まで月額で最大約7千円減る。 

 

また、基礎年金の財源は保険料と税金で半分ずつ賄われており、底上げした場合、最大で年2兆6千億円の国庫(税)負担が必要となる。政府は実際に底上げするかどうかは29年以降に経済状況などを踏まえて判断するとしているが、自民関係者は「参院選で野党から『自民は増税するつもりだ』と責められる」と懸念する。 

 

 

■「消えた年金問題」で惨敗の過去 

 

このほか、パートら短時間労働者の厚生年金加入を拡大するため、職場の従業員数51人以上という企業規模要件を段階的に引き下げる内容も盛り込まれている。だが、厚生年金の保険料を折半で負担する中小企業の反発もあり、自民内で懸念が相次ぐ。 

 

自民はかつて、ずさんな年金記録が明らかになった「消えた年金問題」で07年の参院選に大敗、09年の政権交代につながった苦い記憶がある。石破茂首相(自民総裁)は16日、福岡資麿厚労相らに法案の今国会提出に向けて与党などとの調整を進めるよう指示した。政府は4月中旬の法案提出を目指すが、議論の先行きは見通せない。(大島悠亮) 

 

 

 
 

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