( 277639 )  2025/03/25 05:53:03  
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チョコパイが人気を続ける理由は、40年以上にわたって愛され続けている信頼感や安心感があること、さまざまな付加価値を積極的に取り入れること、顧客の声を大切にし、顧客が求める価値を提供し続けることなどが挙げられる。

最近では新商品の展開やコラボ商品を通じて、年代やライフスタイルの変化に応じて幅広い顧客層にリーチしている。

チョコパイのブランド価値を守りながら、新たな価値を付加し続ける取り組みが、人気の秘訣とされている。

(要約)

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「チョコパイ」人気が続く理由は? 

 

 ロッテが手掛けるロングセラーブランド「チョコパイ」が好調だ。常温保管が可能な「半生ケーキ」という基本価値は崩さず、近年はそれに新たな付加価値を追求した新商品を展開することで、メインターゲットである30~50代の女性(特に40代)に加え、20代の新たな顧客層にもリーチを広げている。 

 

 発売から40周年を迎えた2023年度には、チョコパイブランドとして過去最高の売り上げを記録。2024年4月~2025年2月の速報値で前年度比102%を記録している(※海外、アイス、チルド品を除く)。 

 

 原材料費の高騰など、近年ブランドを取り巻く環境は厳しくなっている。その中で、なぜ40年以上も支持されているのか。最近強化してきた取り組みや、同社が分析する人気の理由について、チョコパイのマーケティングを担当する山田佳之介さんに聞いた。 

 

 チョコパイの誕生は1983年。当時、デパ地下に洋菓子が進出し、生ケーキが一般大衆の手に届くようになっていた。しかし、洋菓子はまだ価格が高く、ぜいたく品とされていた。 

 

 そんな中、「生ケーキをより手軽に届けられないか」と考えたのが、チョコパイブランドの始まりだった。「洋菓子は賞味期限がネックになっていたため、日持ちするケーキのような商品を作れないかと試行錯誤し、誕生したのが賞味期限6~7カ月のチョコパイだった」 

 

 ロッテは各ブランドで累計累計100億円以上のものを「メガブランド」と位置付けており、現在は「チョコパイ」のほか、ガムの「キシリトール」、チョコレートの「ガーナ」、アイスの「クーリッシュ」がそれに当たる。 

 

 メガブランドには商品名が付いた組織(課)が設置されており、山田さんはチョコパイブランド課の課長としてマーケティング業務を担当している。 

 

 チョコパイブランドとして近年特に強化してきた取り組みが「高付加価値化」だ。 

 

 「チョコパイは、ケーキ生地でクリームをサンドし、周囲をチョコレートでコーティングするという独自の特徴を持ちながら、ケーキのような品質を追求してきた。その上で、近年はさまざまな付加価値を加えて、新商品を展開している」 

 

 なぜロングセラーブランドに新たな価値を追加しようと考えたのか。そこには、過去に苦戦した経験も影響している。 

 

 チョコパイブランドは、これまで周年記念のタイミングに収益面で苦戦した経験があった。例えば30周年の際には、コンビニのチルドスイーツが台頭した。40周年前後には、主要原材料の高騰により、ブランドとして初の値上げに踏み切り、売り上げが一時的に落ち込んだ。 

 

 ロッテグループのバリューの1つに、消費者の立場になって考える「ユーザーオリエンテッド」という言葉があり、定性や定量インタビューなどを通じて日々顧客の声を聞く文化がある。 

 

 過去の苦労を経て新たな取り組みを始める際にも、顧客の声を聞き、その裏にあるインサイトを、チームメンバーと徹底的に話し合った。その結果、現在の顧客がチョコパイに対して持っている価値は、「手の届くご褒美」であることが分かった。 

 

 「昨今は食料品だけでなく、さまざまな商品が価格改定で値上げしている。顧客の中で“値上げ疲れ”もある中で、比較的安価に手に入れられる、いつでもどこでも買える、ストックできる『手の届くご褒美』という価値を定義していきたいと考えた」という。 

 

 さらに「ロングセラーブランドとして変えるところ、変えないところ、変わらないところをしっかりと明確にしたうえで、変えるところを積極的に変えていくこと。チョコパイでいえば、変わらない価値が『手の届くご褒美である』と定義したとき、変えられる部分は多いと考えた」 

 

 

 そうして展開したのが、小容量・高品質のニーズに応えた1個売り商品や、原材料にこだわった「プレミアム」商品、旅行ガイドブックシリーズ『ことりっぷ』(昭文社)とのコラボ商品だ。 

 

 1個売り商品は数年前から手掛けているが、直近では2024年8月、秋の栗&芋シーズンに向けて「チョコパイ<蜜芋ブリュレ>個売り」「チョコパイ<和栗モンブラン>個売り」(想定小売価格各118円前後)を発売。それまで6個入りの箱で展開していた商品を個食ニーズに対応した。 

 

 同年9月には、まるでチョコレートやクリームの沼におぼれるような、至福の味わいを楽しめる「チョコパイ<続 チョコレートの沼にようこそ>個売り」「チョコパイ<続 クリームにおぼれる>個売り」(同118円前後)を発売した。 

 

 2024年4月に発売した「チョコパイ<キャラメルチョコレート>個売り」「チョコパイ<宇治抹茶>個売り」(同118円前後)については、人気シフォンケーキ専門店「マーサービス」との初コラボだったこともあり、想定を超える売り上げを記録したという。 

 

 チョコパイプレミアムは、これまでケーキとクリーム、チョコの三位一体で展開してきたチョコパイの構成に「ソース」を加えた商品だ。2022年11月より展開しており、プレミアムの名の通り原材料にもこだわっている。 

 

 2024年11月に発売した「白いチョコパイプレミアム<ご褒美ミルク>」(6個入り、同464円前後)は、「常温チョコパイ史上最高のくちどけ」という強いコピーを使い、口溶けにこだわり、品質もブラッシュアップ。北海道産生クリーム入りのミルククリームやホワイトチョコレート、酸味を効かせた苺とラズベリーのダブルベリーソースが一体となって、ケーキを味わうようなご褒美気分を楽しめる商品となっている。 

 

 「プレミアムは毎回、前回の商品を超えるようブラッシュアップを重ねており、どのように品質を上げられるか、担当者も情熱と時間をかけて開発している」 

 

 2025年2月に発売した「チョコパイプレミアム<苺とピスタチオ>」(6個入り、同464円前後)は、前年同時期に発売した「チョコパイプレミアム<ぜいたくいちご>」が苺をメインに使用した商品だった。だが市場調査によると、近年のパティスリー商品は苺と何かを組み合わせたものがトレンドになっていたため、苺にピスタチオをアクセントとして使用した商品を発売した。 

 

 『ことりっぷ』とのコラボは、2020年のコロナ禍にスタートした企画となる。外出自粛で旅行ができない中、「疑似旅行体験」をコンセプトにガイドブックで紹介している人気店の味を表現した商品を展開してきた。「約5年が経ち、社内でも長寿企画となっているが、顧客からは『知っているお店』『行ってみたい』など、多くのポジティブな声が届いている」という。 

 

 2025年2月には、コラボ商品第14弾となる「ことりっぷ 小さなチョコパイ<甘味カフェ茶ゆの東山チョコどらアイス>」「ことりっぷ ふんわりプチケーキ<コバカフェの苺とブリュレのパフェ>」(各8個入り、同324円前後)を発売。コンセプトを「その土地にしかない素晴らしいお店と生活者をつなぎ、旅へのきっかけをつくる」に変更した。 

 

 「チョコパイはブランドパーパスを『どんなときもそっと寄り添い、まあるい心でつなげる』と設定しており、コラボ商品についてはチョコパイを通じて誰かと誰かがつながるというパーパスを体現する商品として提供していきたいと考えている」 

 

 また、チョコパイの価値である「手の届くご褒美」を広い意味で解釈すると、「食」だけでなく「旅行」も含まれる。そのため、チョコパイを通じて、手が届く範囲のご褒美として、旅行へのきっかけを提供したいという狙いもあるようだ。 

 

 

 こうした取り組みの結果、チョコパイブランドは過去最高の売り上げを記録したが、同社が考える人気の理由は何だろうか。 

 

 山田さんは、再定義した価値「手の届くご褒美」に加え、「40年間で社会を取り巻く環境が変化する中、昔からある信頼感や原体験からくる安心感があるのではないか」と話す。 

 

 とある顧客インタビューでは、幼少期に友人の家で食べたチョコパイに衝撃を受け、以降40代になっても家でチョコパイのストックを切らしたことがないという人がいたという。年齢やライフイベントの変化によってチョコパイを食べるシーンに変化はあるようだが、チョコパイが生活に溶け込んでいるという。 

 

 別の顧客インタビューでは、幼少期に親にチョコパイを買ってもらって食べていたが、年齢を重ね、買い食いをするようになると、一時期チョコパイから離れてしまう人もいた。そういう人へはコラボ商品や1個売り商品をきっかけに、再びチョコパイを手に取ってもらうことで、昔食べていた安心感からブランドとの再接点をつくっていきたいとしている。 

 

 冒頭でも触れた通り、チョコパイの主要購買層は30~50代の女性で、特に40代が中心だが、コラボ商品や1個売り商品については20代の若年層に向けて商品開発を行うことで新たな顧客層を開拓している。 

 

 今後については、タッチポイントの強化を考えているという。 

 

 「チョコパイは常温のお菓子の中ではロングセラーブランドになり、多くの小売業に扱ってもらっている。その上でタッチポイントを強化し、ブランドの価値や体験を楽しんでもらいたい」 

 

 一例として、3月12日から14日までの3日間、銀座コージーコーナーの生ケーキを扱っている店舗(一部を除く)で、両社が共同開発した「ケーキになったチョコパイ(4号)」を販売した。「ケーキから着想を得たブランドを実際にケーキにしたらどうなるか試した商品だが、SNSでも多くの反響があった」 

 

 チョコパイが誕生した約40年前と比べ、共働き世代が増えたことで、子どもがお菓子を食べる場面が自宅や友人の家から学童に変わってきている。そうした社会変化も捉えながら、ブランドの原体験を今後どのように生み出していくかを模索している。 

 

 ロングセラーブランドであるチョコパイの今後の展開に注目したい。 

 

(熊谷ショウコ) 

 

ITmedia ビジネスオンライン 

 

 

 
 

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