( 277864 )  2025/03/26 05:33:47  
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外食チェーン「すき家」の店舗でネズミの死骸がみそ汁に混入した事案が発生し、運営会社の対応に疑問の声が上がっている。

問題は発生から2カ月後に公表されたことや、事態を隠そうとしたかのようなイメージを与えたことなどである。

また、SNS上で画像が「生成AI画像」ではないかと疑われるなど、情報の信頼性に関する懸念もある。

これらの対応は、消費者の信頼を失う結果となっており、企業の危機管理や問題解決の重要性が再考される。

(要約)

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すき家のとある店舗で、ネズミの死骸が混入する事案が発生。問題を放置したと言われても仕方がない運営企業の姿勢に、疑問の声が集まっている(編集部撮影) 

 

 外食チェーン「すき家」の店舗で、みそ汁にネズミが混入している事案が明らかになった。Googleマップの口コミ投稿から注目を集め、運営会社もそれを認めたのだが、SNS上では対応が適切だったのかを問う声が少なくない。 

 

 異物の混入による「炎上」は、いまや珍しくない。これまでも各社で話題となり、その度に企業は、謝罪や再発防止策の公表を行ってきた。しかし今回は、「発生から2カ月後の公表」だったことから、迅速に対応していないのではないかとの反応が出ている。 

 

 こうした対応は、得てして「問題の本質を見誤っている」、もしくは「見ようとしていない」と認識され、誠実な対応ではないと判断されがちだ。そこで今回は、一連の経緯を振り返りつつ、ネットメディア編集者の視点から、すき家による対応の問題点を考えてみよう。 

 

■「みそ汁の中にネズミの死骸」Googleマップへの投稿 

 

 話題の画像が投稿されたのは、Googleマップの口コミ機能だ。5段階の評価とともに、文章と写真を記入できるもので、店名をGoogle検索した場合にも、それらのレビューが表示される。 

 

【画像6枚】衝撃的すぎる…すき家の某店舗で提供、「ネズミの死骸」入りのみそ汁 

 

 そして、その中の1つが「たまかけ朝食を注文したところ味噌汁の中にねずみの死骸が混入していました」という、星1つの投稿だった。添えられた写真には、はっきりネズミだと認識できるサイズの異物が入っている。 

 

 すき家公式サイトでの発表によると、2025年1月21日朝、すき家 鳥取南吉方店(鳥取市)で、客から従業員に対して、みそ汁に異物が混入しているとの指摘があった。その場で従業員も確認したという。 

 

 原因としては、みそ汁の具材を準備する段階で、おわんにネズミが入っていたとの考えを示す。混入を受けて、鳥取南吉方店は、すぐに一時閉店し、保健所の現地確認を経たうえで2日後に営業再開された。 

 

 再発防止策としては、ネズミなどが外部から侵入しないよう、店舗のクラック確認を四半期ごとに行うようにしたと書かれている。なお現在、鳥取南吉方店の店舗紹介ページを見ると、3月24日から4月28日まで、改装工事のため一時閉店となっている。 

 

 

■なぜ事案発生から2カ月以上も公表しなかった?  

 

 しかし、この発表に、SNS上では否定的な反応が見られる。最も指摘されているのは、1月21日に発生した事案にもかかわらず、公式発表されたのが3月22日だった点だ。ネット上で話題になり、各社が取材を始めたことを受けた後手後手の対応ではないかとの疑念がうずまいている。 

 

なぜ、2カ月間も公にしなかったのか。発表文では「発生当初に当社がホームページ等での公表を控えたことで、事後の断片的・間接的な情報により多くのお客様に不安と懸念を抱かせる結果となってしまいました」としているが、なぜ控えたのかの理由は明かされていない。 

 

 地元メディアであるBSS山陰放送の記事(3月24日)によると、同社の取材に「本件は当該店舗の建物構造と周辺環境が重なった個店での事例と当社では捉えています。そのため、公表することにより、多くのお客様に対し不安を与えてしまう」と答えている。 

 

 これを読む限り、鳥取南吉方店だからこそ起きた事案であり、他の店舗への風評を気にした結果、公にしなかったということなのだろう。 

 

 しかし、あらゆる飲食店は、異物混入のリスクを避けられない。「近所にネズミ専門店がある」などの特殊な事情がない限り、「個店の事例」と断定しにくいのではないか。 

 

 結果的に消費者は、目視で「ネズミだ」と判別できるサイズの異物が混入していたことよりも、2カ月間も隠していた事実のほうを重く受け止め、「隠蔽体質」といった悪印象を残している。公式発表では、「ネズミが混入しないための再発防止策」が挙げられているが、ネットユーザーなどが期待しているのは「不祥事をすぐさま公表するための再発防止策」だ。 

 

■すき家のリリースには「問題意識のズレ」がある 

 

 筆者はネットメディア編集者として、長年企業のプレスリリースを読んできた。経験則として、公式発表が火に油を注ぐパターンは数々あるが、その一つに「問題意識のズレ」がある。すき家のケースも、これに当てはまる。 

 

 

 ネズミの混入はあってはならない。しかし、それ以上に、意図的でないとしても「隠そうとしていた」と見られる行動のほうがあってはならない、と考える消費者は多い。つまり今回のコメントにより、問題の「根本的な原因」から目をそむけている印象を与えかねないのだ。 

 

 そもそも、すき家は以前からオペレーションをめぐる不祥事が起きており、その度に再発防止策を示してきた。これらの背景を知っていれば、「本当に実効性がある対策なのか」「また同じことを繰り返すのではないか」という疑いの目を持っても当然だ。 

 

 すき家といえば、ワンオペ(ワンオペレーション)問題を思い出す人も多いだろう。これが話題になった2014年には、「パワーアップ工事」と称する一時閉店を実施。当時の発表文によると、工事対象となったのは全国167店舗で、「従業員の負担を軽減するための厨房能力の強化、さらに客席の快適化」を行ったとした。 

 

 しかしながら、2022年には早朝ワンオペ中の店員が倒れ、約3時間後に発見され、搬送先の病院で死亡確認された事故が発生した。その際の発表では、従業員に携行を義務づけていた「ワイヤレス非常ボタン」を、亡くなった店員が装着していなかったことなどを理由に挙げていたが、それでもワンオペが続けられていた実態のほうがクローズアップされていた。 

 

 今回のネズミ混入も、もし目視が足りないほど多忙だったとすれば、ワンオペと通底する問題を抱えていることになる。たとえそうであれば、「みそ汁提供前の目視を徹底する」「侵入経路をふさぐ」といった方策に加えて、「従業員の負担軽減」についても考える必要が出てくる。 

 

■衝撃的すぎて「生成AI画像」だと多くの人が考えた 

 

 今回の事案で、従来あまり見られなかった点として、投稿された画像が当初、「生成AIによる合成画像ではないか」と疑われたことがある。 

 

 それだけ大きなネズミが入っていれば、いくらなんでも、提供前に気づかないわけがないといった先入観に加えて、そこにはフェイク情報への厳しい視線も存在する。 

 

 技術の進歩によって、日を追うごとに「ウソをつきやすい環境」ができている。SNS上には、特定の企業をおとしめるため、もしくは単なる勘違いを発端として、感情的に投稿された「事実とは異なる情報」も少なくない。 

 

 拡散するユーザーの中には、「事実か否か」は問題ではなく、「疑惑」そのものを消費する人が少なくない。そのため、公式発表がされていない臆測の段階から、企業バッシングが始まる。そうなれば、たとえ虚偽の情報だとしても、名指しされた企業側は、イメージ低下を防止するために対応せざるを得ない。 

 

 

 こうした背景から、ユーザーは「虚偽のSNS投稿」に対して、疑心暗鬼になっている。そこに「すき家のような大手チェーンが、こんなミスをするわけがない」との信頼感や、「もし事実なら、すでに公になっているはずだ」といった一般常識が掛け合わされることで、フェイク認定に近づいていく。 

 

 しかし今回、すき家が「聞かれるまで公表しない」スタンスをとったことにより、結果的に顧客を「ウソつき」呼ばわりさせる土壌を作ってしまった。もしも公表しなかったら、投稿者は「すき家を営業妨害している人物」と、ぬれぎぬを着せられたままだっただろう。 

 

 消費者は「誠実であるはずだ」といった性善説を抱いている。だからこそ、外食チェーンに足を運び、食欲を満たすのだ。それだけに「公表の遅れ」によって、その企業イメージを自ら失墜させたことは、大きな痛手になるだろう。 

 

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城戸 譲 :ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー 

 

 

 
 

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