( 279349 )  2025/04/01 04:01:34  
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「令和の百姓一揆」参加者たちの訴え 

 

東京都・青山公園で行われた「令和の百姓一揆」デモには全国から農家や消費者が集まり、様々な声があった。

例えば、矢吹淳さんはサトウキビ農家で、収入が低いことや後継者不足について悩んでいる。

コメ価格の高騰によって問題意識を持った女性や、農業関連の仕事をしていた男性も参加しており、農業の危機感や若い世代に食の大切さを伝えたいという思いがあった。

農家の声が届くことを願って活動を応援する人もいる。

未解決の国難に対して、国民が対処することを希望している。

(要約)

( 279351 )  2025/04/01 04:01:34  
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「令和の百姓一揆」参加者の訴え 

 

東京都・青山公園で“勃発”した「令和の百姓一揆」を掲げるデモには全国からさまざまな農家や消費者が集まった。その一人ひとりにそれぞれの人生があり、家族があり、暮らしがある。そんな参加者たちの声を紹介する。  

 

東京で3月30日に行なわれた「令和の百姓一揆」のデモ活動。コメの価格高騰に国民から悲鳴があがる中、全国の農家たちが立ち上げたこの活動では、農業従事者の所得の低さや離農の加速といった農家の窮状が訴えられた。 

 

鹿児島県の離島・種子島のサトウキビ農家・矢吹淳さん(51)は、14年前の東日本大震災で被災し、その後、今の遠く離れた地で農家になった。 

 

「昨日、種子島から飛行機に乗ってやってきました。もともと山田正彦先生のドキュメンタリー映画に出させていただいたこともあり、以前から今のままでは農業は成り立たなくなるし、変えていかなきゃいけないという思いはありました。 

 

私自身は震災後に福島県から種子島に移住してサトウキビ農家を始めたので、それほど長い間農家として生きてきたわけではありませんが、それでも今の農業に危機感は持ちます。コメ農家だけでなく、サトウキビ農家も年々減っています。 

 

種子島の黒糖といえば100年以上続く伝統製法があるのですが、後継者不足に悩まされています。収入面でも、サトウキビ1トンで2万円程度ですから、例えば年10トンだと年収約20数万円という感じです。個人で小さな規模でやっている場合、サトウキビだけで生活していくのは厳しいというのが現状だと思います。 

 

私の場合、有機栽培や手刈りという独自製法を行なっているという強みを活かして、収入面でもどうにかなっていますが」 

 

茨城県から来たという女性はコメ価格高騰をきっかけに問題意識に目覚めたという。 

 

「おコメの値段が2倍近く高くなって、それで何が起きているんだろうって興味を持ち始めた感じでした。コメ農家の方たちとも話すようにもなり、その方たちから『コメがない。こんなことは今までなかった』という話を聞くうちに今回の百姓一揆のことを知り、私も参加してみようと思ったんです。やっぱりこれからも安心してごはんを食べていきたいですから。だからこれ(プラカード)作って応援にきたんです」 

 

70代の男性はこう言う。 

 

「主催者の中に知り合いがいたのと、私自身も元は農業関係の仕事をしていたこともあって参加しました。農業がこのままでは滅びゆくという危機感は私も持っていますし、この活動を応援したいと思っています」 

 

 

「万人直耕」の書をしたためた男性は「いばらき有機農業技術研究会」の松岡尚孝会長だ。 

 

「これは江戸時代中期の思想家、安藤昌益の言葉です。これはすべての人が直接農業に従事し、上下の身分はなく、人間はみな平等というのが自然な社会の姿と説いた言葉です。私自身は有機農業の技術を農家に教えたりしています。 

 

コメや野菜の価格高騰で、中には農家を“犯人扱い”したり、敵視するような方が出てくることを危惧していたこともあり、『百姓一揆』で農家の声を届ける活動に賛同しました。 

 

日本の農業従事者の平均年齢は69歳と言われていて、このままでは成り立たなくなりますから、この活動で少しでも若い子たちが興味を持ってくれたらとも思います。また、『食』を見直すきっかけになればいろいろなところが変わるかとも思います。 

 

これまでは作物を買い叩かれることが多かった農家も、例えば水戸市など茨城県内の複数の市の小学校では有機野菜を使用したオーガニック給食の提供が始まっていて、そこに卸す農家は高い金額で買い取ってもらえます。子どもにだけはなるべく良い物を食べさせたいということなのですが、農家目線でいえば、買い叩かれず安定した供給先になりますからね」 

 

まさに「百姓」の平均年齢の69歳の男性は、山形県から駆けつけた。 

 

「私自身は会社員ですが、実家がコメ農家でした。山形県の庄内地方のつや姫、雪若丸、はえぬきなどのブランドで有名な、いわゆるコメどころです。全国各地でコメ農家が減っているように、うちのようなコメどころでも離農者は増加していく一方です。 

 

私の村でも代替わりができず、(耕作放棄地を出さないために)現役の米作農家に委託するなどの対策はしていますが、それでも年々減っていくのを目の当たりにしています。コメ農家よりも他の仕事をする方が全然割がいいんですから、みんな継がずに他の仕事をします。 

 

これはコメ農家に限ったことでなく、農村というのはそれがひとつのコミュニティとして横のつながりも密に助け合っていましたが、今はそのコミュニティ自体が壊滅しつつあります。そうしたことにも危機感を覚え、活動を応援していこうと思い参加しました」 

 

一揆は農家だけの生活に関わる問題ではない。今では多くの人がそう実感しているからこそこれだけの人が集まり、行動をともにした。「お上」が放置し続けて招いた国難のツケを払わされるのは国民だ。国が動くことを願いたい。  

 

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班  

 

集英社オンライン編集部ニュース班 

 

 

 
 

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