( 279476 ) 2025/04/01 06:19:37 0 00 山本太郎・れいわ新選組代表が目指すものとは
批判を受けながら石破政権が延命する“与野党談合”“八百長国会”で減税つぶしが進むなか、支持を広げる野党が「れいわ新選組」だ。現時点で政策決定に影響を及ぼす議席数はないが、消費税廃止を叫ぶ山本太郎・代表の存在感が高まっている。国会での大きなテーマとなった「103万円の壁」論争について、山本氏は何を思うのか。本人に質問をぶつけた──。【第2回。全文を読む】
──所得税の課税最低限の「103万円の壁」をめぐっては、日本維新の会が賛成に回ることで一部160万円まで引き上げる政府・与党案が衆議院を通過。178万円にこだわった国民民主党は折り合えなかった。
「完全に自民党、公明党、日本維新の会の勝ち。国民民主党は参院選へのプロモーションに徹していますね。キャスティングボートを握ったのだから、本気で政策を進めるなら、いっそ玉木(雄一郎)さんは首相になっちゃえばよかったのにね(笑)」
──というと?
「首相の座を条件に突きつけることで、政治のダイナミズムによって一気に178万円を実現させる展開もありえたし、誰が政策を邪魔しているのかはっきりしたでしょう。そうしなかったのは、与党に近づき過ぎるのを嫌ったのかもしれません。 逆に野党でまとまって勝つ道もあったでしょう。その場合、私たちの主張である消費税の廃止までは難しくとも、段階的な減税を探る道もあったはずです」
──「178万円」の主張には賛成なのか?
「一定の引き上げは緊急的に必要です。一方で、他の先進国では所得控除は止めてゼロ税率や税額控除というやり方に転換しているのに、政府案では給与所得控除も上げていて、周回遅れの議論を盛り上げたって話ですよね。 給与所得控除が増えて恩恵を受けるのは所得がある人の一部で、所得がない人は関係ない。その訴えでは経済を立て直す起爆剤にはならない」
──他方、消費減税に消極的だった立憲の党内でも、再び消費減税を公約に盛り込むことを目指す「研究会」が立ち上がった。
「いつまで“研究”しとんねん(笑)。もちろん、減税の議論が盛り上がることは良いことですが、立憲や維新は、財務省のポチみたいな存在じゃないですか。衆議院予算委員会で、“いかに赤字国債を発行しないか”というルールをはめた審議の先頭に立ったことは実に罪深い。財務省の一番大きなフロント団体と言ってもいい」
──米国のトランプ現象を含め、世界的に「国民から税を徴収して配るエスタブリッシュメント(支配層)の既得権益化」への批判が高まっており、日本では財務省の姿勢に反対して減税を唱えた国民民主党が支持を集めているかたちではないか。
「玉木さんこそ、財務官僚出身のスーパーエリート。エスタブリッシュメントそのものじゃないですか。あの人は資本側(大企業)が損をしないような立ち回りをずっとしているなと私は思います」
──どういうことか。
「そもそも選挙では消費税を5%に減税すると約束していたけど、議席を取った後はほとんど言及していません。消費減税すると税収の穴埋めのために法人税が高止まりして、資本家の利益を減らすことになる。自動車や原発産業の支援を受ける党として、実行しづらいのでしょう。
給与所得控除の引き上げだって、本質は“みんな喜べ、もっと働けるようになったぞ”ということ。誰でも働けるならまだしも、そうできない人もいる。働きを増やさずとも実入りが増える消費減税のほうが国民全体の購買力や幸福度は上がるはずです」
──そうした経済弱者の立場を重視する政策もあって、れいわには共産党支持者が移ってきているのではないか?
「どうかな。財政政策が違いますからね。私たちは積極財政のために積極的に国債を発行すべきと考えますが、共産党は禁じ手という考え方です。
逆に共産党は大企業の内部留保に手を突っ込んで課税すると主張していますが、それでは設備投資のブレーキともなり得る。私たちが求めるのは『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を取り戻すこと。景気を上向かせることで企業ともウィンウィンに持って行くべきで、ルールに則って貯めた内部留保を吐き出させようとは思わない」
──しかし、れいわは消費税の代替財源として法人税への累進税率導入なども主張している。「稼いだ企業から多く取り上げる」では、経済成長を阻害するのでは。
「逆ですよ。消費は誰かの所得に変わるのだから、消費税を廃止すれば、消費が喚起され、企業収益にプラスに働きます」
──課税を嫌う企業が海外へ逃げないか。
「逃げないです。日本貿易振興機構が海外に出た企業を対象に2023年度に行なったアンケートで、『税制』を理由に挙げたのはわずか4%。逆に、約82%という圧倒的1位の答えは『市場規模・成長性』でした。つまり需要がある国でないと物が売れないからで、日本はそうでないと見られている」
──需要減は人口減少が最大の理由では。
「人口が減っていても経済成長している国はあります。もちろんイノベーション(技術革新)は必要でしょうが、そのもとも消費ですよ」
──減税のために国債をどんどん発行すれば、インフレのリスクも高まる。
「市中のお金の量はバランスを見なければいけません。景気が過熱しすぎないよう、事前に法人税の累進税化や将来的な超富裕層への金融資産課税の議論に踏み出さなければいけない。いずれにせよ、訴えている政策は一気にやるのではなく、状況を見ながら投下していくのは当然のことです」
聞き手/広野真嗣(ひろの・しんじ) ノンフィクション作家。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、フリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。近著に『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』(講談社)。
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※週刊ポスト2025年4月11日号
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