( 279951 ) 2025/04/03 05:36:10 0 00 河村たかし衆院議員
日本経済の長期停滞が叫ばれて久しい。その処方箋として、前名古屋市長であり日本保守党共同代表の河村たかし衆院議員は、一貫して「減税」の重要性を訴え続けている。名古屋市長時代には、全国でも稀有な市民税減税を断行し、税収増と人口増という成果を上げた。なぜ今、減税が必要なのか。そして、減税は日本経済をどう変えるのか。河村氏の経済哲学に迫った。短期連載全4回の第1回。(聞き手、小倉健一、みんかぶ編集部)
ーー河村さんといえば、やはり「減税」のイメージが非常に強いです。名古屋市長時代には、全国的にも珍しい市民税減税を断行されました。今も日本保守党で「減税こそが日本再生の道」だとおっしゃっていますね。
(河村たかし)
そりゃそうですよ。減税はわしの政治のド真ん中ですからね。
ーー市長時代、「日本減税発祥の地 名古屋」というスローガンを掲げられ、実際に市民税減税を実現されました。今でも名古屋市は、日本で唯一の減税自治体ですか?
(河村たかし)
名古屋だけ、オンリーワン。はじめはもっとたくさんの自治体がやっていたのに、みんな一年でパーですよ。結局全部やめた。なんでかと言うたら、議員も役人も嫌がるからです。減税されたら自分たちの既得権益が削られるでね。もう「八百長」と言いたくなりますわ。
ーー多くの自治体の議員さんや市長さんに減税やらないのかを聞くと、「減税は無理」と言い切ります。しかし名古屋市では実行されたわけで、やればできるんですよね。
(河村たかし)
当たり前ですよ。できんってのは、やる気がないだけです。やろうと思えばできるに決まってる。でもまたややこしいんですよ。地方税を減税するには、総務大臣の許可が要るんです。国税は要らんのやけど、地方税はお上が「ちゃんと財源あるか?」っていちいち口出してくるんです。
まず自分からやらな、誰も納得しない。自分の給料をガッツリ下げたんです。大きかったのは、公務員の給料。名古屋市役所の給料は、政令指定都市で当時一番高かったんです。それを18番目ぐらいまで下げたんです。年間で約200億円ぐらいですね。ちょうど初年度の減税にかかった額と同じぐらいだった。でも、全部やり切って初めて総務省から「減税してもよろしい」いう許可が出るんですよ。アホみたいな話でしょう? まったく。
ーー河村さんの「減税」の根本には、河村さんの政治哲学があると思います。行政の複式簿記の導入に関しても、石原慎太郎元都知事とは立場が違っていたと伺いました。
(河村たかし)
石原さんたちが「複式簿記を行政に導入した」って自慢して、公認会計士を派遣してきたけど、わしは根本からおかしいと思ってる。なんでかというとですね、公認会計士に聞いたんです。「行政でいうところの“売上”って何ですか?」って。
ーー企業でいう損益計算書の「売上」に当たるものは何か、ということですね。
(河村たかし)
そうそう。そしたら彼らは「税収です」と答えたんですよ。これがまるで違うんです。だって、税金を多く取ることが“売上を伸ばす”ことになるわけでしょう? そんなのおかしいですよ。税収なんて、企業で言えば“総務部の入金”みたいなもんで、会社の本体の売上とは違うんです。
企業の売り上げに該当するのは、名古屋市なら、名古屋のGRP(域内総生産)。市の経済活動全体ですね。それが「営業本部の売上」ですよ。市の税収はせいぜい総務部の取り分。総務部が売上ばっかり伸ばしたって、会社は良くならない。
ーーそうなると、行政が税金を多く取ることに熱心になるのは本末転倒だと。
(河村たかし)
まさにそれ。営業本部が頑張って、顧客に頭下げて、汗水たらして契約取ってくる。ほんで肝臓壊すぐらい飲んでるんですよ(笑)。その営業が会社を支えてる。役所の発想では、そいつらの稼ぎを取り上げて、自分たちがエラそうにしてる。そんな構造、おかしいですよ。
ーーつまり、役所はあくまでサポート役であるべきということですね。
(河村たかし)
そうですよ。「士農工商」みたいな考えが残ってる。「士」つまり役人が一番エライと。とんでもない。役所はただの“徴税装置”です。国民から強制的にカネ取るだけの組織なんやから、謙虚でないといかんのです。
ーー確かに、名古屋市のGRPは14兆円規模で、市の予算は約2.7兆円。それを考えれば、行政の規模は一部に過ぎません。
(河村たかし)
そういうこと。国だって同じ。GDPが約550兆円、政府の予算は110兆円でしょう? 残りの440兆円を動かしている民間の活力が本丸ですよ。それを潰すような税制は間違っている。だからこそ、減税が必要なんです。
ーーなるほど。ですが世間では「日本は財政赤字が深刻だ」と盛んに言われています。プライマリーバランス黒字化の目標なども掲げられていますね。これについてどうお考えですか?
(河村たかし)
財政赤字が深刻だ言うてもね、それは“総務部”の赤字の話であって、日本全体の話じゃないんです。さっきも言ったけど、国や自治体の予算なんて、全体経済の一部。会社で言えば経理部門の赤字を大騒ぎしているようなもんです。
ーー国民負担率が50%近くある現状は、やはり問題だと思います。
(河村たかし)
そりゃ問題ですよ。いま国民負担率はだいたい46〜48%で、ほぼ半分でしょう? 言い換えれば、稼いだ金の半分が、税金や社会保険料で役所に吸い上げられているんです。残りの半分は民間の手元に残るけど、みんなタンスにしまうわけじゃないでしょう? 民間の銀行に預ける。つまり国民のお金は、政府部門と民間部門に大きく二分されているんです。国会では予算委員会とかで、政府部門の金の使い道だけを延々議論してる。「今年はいくら補助金つける」とか。けど、民間に残った半分の金、つまり銀行にある金がどう使われるかは全く議論されていない。
ーー確かに、民間資金の活用はあまり取り上げられていませんね。
(河村たかし)
そうでしょう? おかしいですよ。経済の本当のエンジンは民間なんです。営業本部にある金をどう使うか、どう回すか、そっちが大事ですよ。それを議論しないのは、経済の半分しか見てないってことです。
ーーつまり、今の政治やマスコミは社会の半分しか見ていないと。
(河村たかし)
そうそう。「便秘経済」やら「低血圧経済」やら、いろんな言い方できるけど(笑)、要するに血の巡りが悪いんです。政府にばっかり金が集まりすぎている。それを民間に戻さないと、元気な経済にならないんです。その最も手っ取り早い方法が「減税」なんです。減税ってのは、国民や企業の手元に金を残す、つまり営業本部に資金を戻すこと。そうすれば、経済は自然と回り出すんです。
ーー「減税は民間に金を戻すこと」だとおっしゃいました。お金の流れが変わるだけで、消えるわけではないというお考えですね?
(河村たかし)
まさにそうですよ。例えばだけど、仮に1000億円減税したとする。ほんなら、政府の財布にはその1000億は入ってこないけど、その分は国民の手元に残るんです。それが会社の投資になったり、給料になったり、飲みに行く金になったりするわけですよ。
ーー「総務部」に入るはずの金が、「営業本部」に回るということですね。
(河村たかし)
その通り。営業本部に金が戻れば、それだけ経済が回る。役所に預けておくよりも、はるかに有効に使われるんです。
ーーですが減税を主張すると必ず「財源はどうするんだ」という批判が出ます。
(河村たかし)
それがまたナンセンスなんですわ。財源言うたって、減税したら、その分の金は国民の手に残るわけでしょう? なくなったんじゃない。どこかに消えてなくなるわけじゃない。役所が「わしらの懐に入ってこなかった」って騒いでるだけの話です。
ーー地方で行政を批判すると「あなたは共産党の人なの?」と真顔で聞かれたことがあります。日本には「お上に従うのがいい」という発想は根強くあるように感じます。
(河村たかし)
そうだけど、本当は逆ですよ。商売人、働く人、農家、町工場、そういう人たちが国を支えてる。それを吸い上げて、勝手に再分配して、自分らが「偉い顔」してるのが今の役所ですよ。大間違いです。
ーーその「お上」意識が、ステルス増税のような現象にもつながっているのかもしれません。例えば、インフレで物価が上がっても、控除額や課税最低限は据え置きのまま。結果として、額面収入が増えた分だけ課税所得も増え、実質的な税負担が上がってしまいます。
(河村たかし)
それ、それ。それがステルス増税ってやつですわ。給料ちょっと上がっても、社会保険料や住民税がドカンと増える。で、手取りは変わらん。下手したら減る。実質賃金マイナスってのはそういうことですよ。アメリカなどでは、インフレに応じて控除額などが自動的にスライドする制度があります。「インフレスライド制度」。課税最低限も物価に合わせて上げてくれるから、実質負担は変わらないように調整されている。それで生活が守られる。合理的ですよ。
ーーですが、日本ではそういう制度は導入されていません。
(河村たかし)
そうだから、日本は物価が上がれば上がるほど、庶民が苦しくなる仕組みになっている。なんでやらないか言うたら、財務省が税収減るのを嫌がっているだけです。国民の生活より、自分らの財布の方が大事だということです。
河村たかし
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