( 280271 ) 2025/04/04 06:20:56 0 00 河村たかし衆院議員
マイナンバー制度が本格運用から10年近く経つなか、健康保険証の廃止やスマートフォンとの連携など、制度の拡張が急速に進められている。政府は「利便性」「行政の効率化」を前面に押し出すが、一方で情報漏洩や誤紐付けといったトラブルも相次ぎ、国民の不安は根強い。
そうした中、制度開始当初から一貫して反対を貫いてきたのが、前名古屋市長であり日本保守党共同代表の河村たかし衆院議員である。なぜここまで強く反対するのか。そして、河村氏の言う「本当の保守」とは何か。本人に直接聞いた。短期連載全4回の第2回。(聞き手、小倉健一、みんかぶ編集部)
ーー河村さんは、マイナンバー制度について当初から明確に反対の立場を示されています。その一番の理由は何ですか?
(河村たかし)
わしが反対している理由は、はっきりしていますよ。「人間を番号で縛る」という発想自体が、民主主義とは真逆だからです。国民一人ひとりに番号を振って、それで管理しようとする。そりゃあもう、全体主義そのものですよ。
ーー制度開始当初、自民党の市会議員の方から「マイナンバーに反対する河村は保守ではない」という批判もあったと伺いました。
(河村たかし)
そうそう、そういう議論がバーッと出たんです。これが分からないんでしょうね、多くの人は。マイナンバーがなんで保守か、って。むしろ逆ですよ。
ーー政府はマイナンバー制度を「便利な行政のツール」と説明しています。たとえば健康保険証を一体化して、診療履歴や服薬情報を確認しやすくするといった話もあります。
(河村たかし)
そんなもの、全部言い訳ですよ。「どこで倒れても持病が分かるので便利」とか言っているけど、そしたらカードをいつも持ち歩かないかん。もし落としたらどうする? 紙の保険証で十分なんです。なんでわざわざ一緒にしないかんのですか。
ーー利便性とリスクのバランスをどう考えるか、という点ですね。
(河村たかし)
そう。情報が詰まっているカードを落としたら、そりゃもう全部ダダ漏れですよ。医療情報や病歴、何を飲んでいるかまで国が管理するなんて、気持ち悪いですよ。しかも、その情報を国がいつでも取り出せるようにするって、プライバシーもへったくれもないでしょう。
ーー制度設計としても、非常に強力な「監視インフラ」になってしまうのではないかという懸念があると。
(河村たかし)
そりゃそうですよ。マイナカード持たせて、「あんたの情報、全部ここにあります」ってされたら、国民はお上に従うだけの存在になる。そんな世の中、絶対におかしいですよ。自由というのは、番号や制度で守るものじゃない。人と人の信頼や、常識の積み重ねで成り立っているんです。
ーーただ一方で、政府はマイナンバー制度によって、行政手続きが簡略化され、国民の利便性が上がるとも説明しています。
(河村たかし)
まあ、「利便性」という言葉は聞こえはいいけど、実際に便利になっている実感なんて、わしには全然ないです。免許証があれば本人確認できるでしょう? わざわざ別のカードを作る必要があるのか、考えてみてほしいですよ。
ーー アメリカではソーシャル・セキュリティ・ナンバー(SSN)があります。
(河村たかし)
わしの知り合いに、ロサンゼルスから来た人がいてね。向こうではSSNがあるけど、普段は絶対使わないそうですよ。うろ覚えの知識で語ったらいかんけど、本人確認は基本、運転免許証。SSNは危ないから、普通の生活では出さない。ペラペラの紙みたいなもんで、カードを落としたら情報が盗まれるリスクが高すぎるからってね。アメリカではやっぱり戸籍とか住民票がないから、社会保障のために番号が必要だったという経緯もある。だから、わしが言いたいのは、「制度がある=それを常時使う」という話じゃないってこと。日本も「番号はあるけど、使い道は限定されている」っていう状態にしないかん。それが本来の自由主義国家のあり方ですよ。
ーーそう考えると、「情報を集約すること」自体が目的化してしまっていて、実際のリスク管理が追いついていないようにも見えます。
(河村たかし)
それ、まさにその通りですよ。「便利そうに見えるからとりあえずやろう」って、深く考えずに制度を進めている。でも、その結果として何が起きるか、本当に考えている人は少ないですよ。
ーー2023年にも、情報の誤紐付けや漏洩事案が多数報道されました。
(河村たかし)
そういうことがあるたびに「システムの不具合でした」とか「想定外でした」とか言うけど、誰も責任取らないでしょう? 国民に番号をつけるのは早いくせに、そういうところの責任は誰も取らない。
ーー情報が集約されていることで、逆に国家権力が個人を監視できるようになる危険性も指摘されています。
(河村たかし)
まさにそうですよ。これ、見方を変えれば“国内版パスポート”ですよ。普通に歩いていて、「あんた、誰だ? カード見せなさい」って言われる社会になってしまったら、完全に自由が終わっているでしょう。そりゃもう共産主義の世界ですよ。
ーーそれを「自由主義の国」で進めていることへの違和感ですね。共産主義という言葉も出ましたが、マイナンバー制度は共産主義的な発想に近いとお考えですか?
(河村たかし)
近いどころの話じゃない。共産主義の「共産」という言葉。元々「共有財産」の略なんですよ。皆の財産を共有して、平等な社会を作ろうという考え方。でも、それを実現するためには、個人の財産を全部把握して管理する必要がある。誰がどれだけ持っているか、全部国が知っておかないかん。マイナンバー制度でやろうとしていることは、まさにそれと同じ方向性ですよ。今な、マイナンバーは保険証の次は、免許証と一緒になったでしょう。予言しておくけどな、次は学校の番号になるんですよ。学校の成績を入れるようになる。どこの学校をどんな成績で出たかという経歴が入って、次は財産です。財産がどこの銀行にどれくらいあるかというのが全部入る。キャッシュカードも全部マイナンバーで済むようになるかもしれん。「便利、便利」で。ほんでな、全部資産を把握したところで増税ですよ。
ーー個人の情報を国家が一元管理するという点で共通していると。
(河村たかし)
そうですよ。あなたのものは私のもの、私のものはあなたのもの、という建前で、結局は国家が全部を管理する社会になる。それは自由とは正反対の世界です。本当の保守というのはね、「国家の力は最小限であるべき」「人間は人間として尊重されるべき」という考え方ですよ。番号で人を管理するなんて、保守でも自由主義でもない。管理主義、全体主義の発想ですよ。
ーー制度推進派の中には「マイナンバーは透明性を高める」といった意見もありますが。
(河村たかし)
だったら、自分らでまず証明したらいいんですよ。国会議員、公務員、全部マイナカードで管理して、「これだけ便利ですよ」「透明ですよ」って見せてくれたら、国民も納得するかもしれん。でも、実際には自分たちには甘くて、国民には番号で管理しようとしている。それが一番腹立つところですよ。
河村たかし
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