( 280471 ) 2025/04/05 04:52:30 0 00 パチンコよりパチスロのほうが気軽に楽しめる?(イメージ)
長らくユーザー離れが続いているパチンコ・パチスロ業界だが、近年はパチンコの低迷が深刻化し、一方のパチスロは復調傾向にあると言われている。パチンコとパチスロに何が起きているのだろうか──。
パチンコの低迷とパチスロの復調を示すデータがある。矢野経済研究所が実施したパチンコ関連機器市場に関する調査(2024年7月~9月に調査、同研究所公式サイトで公開されているサマリーより抜粋)によると、2023年度のパチンコ機の市場規模は3628億400万円で前年比477億2500万円減、2023年度のパチスロ機の市場規模は3494億2100万円で前年比699億3900万円増となっている。パチンコ機の市場規模の縮小幅を上回る形で、パチスロ機の市場規模が拡大しているのだ。パチンコ・パチスロ事情に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏が解説する。
「このデータは、パチンコ機、パチスロ機の市場規模であり、ユーザー動向そのものを示すものではないのですが、これまでであればパチンコ機の市場規模はパチスロ機の1.5倍程度でした。しかし、2023年度にはほぼ同じ市場規模となっており、近い将来パチスロがパチンコを逆転する可能性も高いと言えそうです。つまり、パチンコよりもパチスロのほうが人気が高まっている現状があり、メーカーもパチンコ機の開発よりもパチスロ機の開発に力を入れているということです。
全国のホールにおける設置台数は、現時点ではパチンコのほうが多いのですが、この状況も変わってきていると言われています。たとえば、開店前から多くのユーザーが並ぶような人気店では、ほとんどのユーザーが朝イチからパチスロを打ちますが、朝イチからパチンコを打つユーザーは少数派。パチンコはガラガラだけど、パチスロは大盛況というホールも珍しくありません。もちろん地域やホールによっても差はありますが、現場を見ているだけでも、パチンコの低迷とパチスロの復調を実感することは多いです」
では、どうしてパチンコが低迷しているのだろうか。“パチンコ離れ”し始めたユーザーのリアルな声から、その原因を探ってみよう。
都内に住む会社員のAさん(50代男性)は、大学生のころからパチンコを打っていたというが、最近はパチンコを打たずにパチスロに移行した。
「ここ数年のパチンコは全然勝てなくなったというイメージが大きいですね。ホール選びが悪いのかもしれないけど、あまり回らない台が多くて」(Aさん)
Aさんが言う「回らない」とは、パチンコのスタートチャッカーに玉が入らないという意味だ。多くのパチンコではスタートチャッカーと呼ばれる盤面中央に配置されている部分に玉が入ると大当たり抽選が行われる。スタートチャッカーに玉が入る機会が増えれば、それだけ大当たり抽選を多く受けられるため、より多くの出玉を獲得する可能性が高まることになる。
「回らないと、ただただ無駄にお金を使っている感覚になってストレスが大きい。パチスロだったら、メダルを入れてレバーを叩けば必ず何かしらの抽選が受けられるので、無駄がない。だから、最近はパチスロを打っています」(Aさん)
パチンコにおいては、著しく出玉が増えたり減ったりするような釘調整は違法とされており、あくまでもメンテナンスという名目での微調整のみが可能である。前出・藤井氏はこう話す。
「昔のホールだと、ユーザーに還元するためにスタートチャッカーに玉が入りやすくするような釘調整をしているケースもありましたが、現状ではそういったサービスはできない。よっぽどのパチプロでないと、パチンコの釘を読むのも難しく、『回らない』と感じているユーザーが多いのも事実でしょう。
最近では初期状態でスタートチャッカー上部の釘が大きく開いていて、より回りやすくなっているパチンコ機も増えてきているので、今後そういった機種がユーザーの支持を得られるかどうかにも注目です」
単純に「当たらないから打ちたくない」と感じているユーザーもいる。神奈川県に住む会社員のBさん(40代男性)は、パチンコを楽しむ頻度が低下していると話す。
「最近の機種は、出玉の爆発力はあるけど、その分初当たりが引けないんです。それなりのお金を使う覚悟が必要な機種が多くなっている気がします。3万円くらい使って、大当たりを1回も引けずにトボトボ帰ることが増えているというか。甘デジ(初当たり確率が高い一方で出玉性能が低い機種)を打てばいいんだろうけど、やっぱり『たくさん勝ちたい』という欲があるから、甘デジでは満足できない。適度なお金でそれなりの出玉感を味わえる機種があるといいんですけど、最近は射幸性が高すぎます」(Bさん)
パチンコでは、まず「初当たり」を引き、そのうちの何割かが「RUSH」と呼ばれる当たりが連続する状態に突入し、大きな出玉を獲得する、というのが基本的な流れだ。RUSHの出玉性能が高い機種においては、RUSH突入までのハードルが高く、ハイリスクハイリターンな作りになっている。
また、初当たり確率の下限は機種のタイプによって異なっており、2018年に登場した「P機」と呼ばれる機種では320分の1、パチンコ玉を触らずに遊技できるスパートパチンコ(スマパチ、『e機』とも呼ばれる)では350分の1となっている。さらに、2024年3月からは「ラッキートリガー」という出玉機能が登場し、このラッキートリガー搭載機では実質的な初当たり確率となる“図柄揃い確率”が399分の1程度となっている機種もあり、それまでの機種に比べると初当たりが引きにくくなるケースも多いのだ。
「ラッキートリガー搭載機は、他の機種に比べて射幸性が高く設定されるケースが多く、結果的に初当たりまでに使うお金が増える傾向にあります。射幸性が高いということは、短時間で多くの出玉を得られるので、大きく勝つことを狙うユーザーには支持されますが、気軽に遊ぶにはあまり向いていないのも事実ですね。最近のホールでは、射幸性の高いラッキートリガー搭載機が占める割合も増えていて、その結果パチンコから離れてしまうユーザーもいるでしょう」(藤井氏)
パチンコ人気低迷の背景について藤井氏は、「業界を牽引するようなヒット作が出ていない」ことを指摘する。
「パチスロについては、勝つために機種の内部システムなどをしっかりと研究するユーザーが多い傾向にあります。“勝てるかどうか”だけではなく、出玉システムの中におもしろさを見出し、パチスロを楽しむユーザーもたくさんいます。
一方のパチンコは、機種のシステムなどはあまり気にせず打つライトユーザーも多く、あまり詳しくなくても楽しめるのが魅力でもあります。だからこそ、パチンコの大ヒット機種が出てきたときは、『流行っているから』という理由でその機種で遊ぶユーザーも多かったんです。しかし、ここ数年はパチンコにおける大ヒット機種がなかなか生まれておらず、その状況がユーザー離れを加速させているとも言えるでしょう。ヒット機種がないからユーザーが離れ、ユーザーが離れたらさらにヒット機種が出てこない、という悪循環が生じているように思います」
パチスロでは、現在主流となっているAT機(アシストタイム機。押し順ナビ通りにリールを止めると小役が揃い、出玉を獲得できる機種)のほか、シンプルなノーマルタイプ(ボーナスのみで出玉を得る機種)や、目押しを成功させることで有利になる技術介入機など、多様なタイプの機種があり、それぞれにファンを獲得している。さらに、ノーマルタイプのみに搭載できる「ボーナストリガー」という新機能の近々登場する予定だ。
「パチンコでも近年はスペックの多様化が進んでいます。ラッキートリガーについても、今年7月からは『LT3.0プラス』と呼ばれる新バージョンが搭載された機種が登場する予定です。しかし、パチンコのスペックがパチスロほど多種多様かと言われれば、決してそうではない。そもそもパチンコは『玉を打って穴にいれる』という限定的なゲーム性であり、出玉以外の部分の楽しみを求めるユーザーが、パチンコを離れてパチスロに移行するのは、自然な流れだと言えるのかもしれません。
また、『海物語』シリーズのようなごくごくシンプルな機種が長く支持されていることを考えると、そもそもパチンコユーザーが多様なスペックを求めているかどうかも疑問です。限定的なゲーム性であることが変わらないなかで、スペックを多様化させることは正解なのか、ということを今一度見つめ直す必要もあるでしょう。そういう意味では、パチンコ人気復活のためには、シンプルな王道スペックの人気機種をいかに生み出していくかが重要なのかもしれません」(藤井氏)
人気低迷にあえぐパチンコが復活する時は来るのか、それともこのままパチスロと逆転してしまうのか。パチンコ離れしたユーザーが再び回帰することはあるのか、今後の動向に注目だ。
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