( 281046 ) 2025/04/07 06:12:51 0 00 備蓄米放出もされたが……(写真:編集部)
コメの高騰が止まらない。高騰が始まったのは、2024年の夏に品薄となったころだ(参考:「コメが消えた夏」日本人が代わりに爆買いした物)。新米が流通する秋ごろには供給不足が解消し、落ち着くとも言われていた価格が上昇を続けている。
農林水産省によると、2025年3月10日週にはスーパーのコメ価格は前年の2倍を超える4172円(税込み・5kgあたり)に達した。一方、販売数量は前年よりも12.4%落ち込み、コメの買い控えがみられている。
それでは、何がコメの代わりになっているのだろうか。食卓の変化を確認したい。
■昨年の「米騒動」レベルまで落ち込んだコメの購入
コメ離れの実態を把握するため、全国の男女約5万人の生活者から買い物データを継続的に聴取している「インテージSCI」から、コメの購入金額と購入率の推移を確認した。ここで購入金額とはコメを買った人の1カ月あたりの平均購入金額、購入率とはコメを買った人の割合だ。
高騰で購入金額が増加傾向にあり、2025年2月には前年比172%の4268円にまで伸長した。ただし、購入率は品薄となった2024年9月に前年比92%に落ち込んでから、前年を下回った状態が続いている。
購入率の前年比では、2024年11月・12月には97%にまで回復していたにもかかわらず、高騰が進んだ2025年2月には92%と2024年9月の水準にまで減少しており、高騰が買い控えを起こしていると言えそうだ。
コメを減らした分、何を増やしているのだろうか。2人以上家族の主家事担当女性を対象とする食卓調査「インテージ・キッチンダイアリー」から、食事場面(朝食・昼食・夕食)ごとに食卓の変化を確認した。ここでは、2025年2月の登場率が3%以上のメニューを抜粋。登場率とは100食卓あたりの出現回数である。
まず朝食について見ると、主食のコメは、2025年2月には前年比98.8%と前年割れとなっているものの、1月までは前年比100%以上を維持しており、底堅く推移していることがわかる。
一方、朝食で登場率の高いパンは前年割れが続いていた。原材料の小麦価格の上昇などを背景としてパンの価格も高止まりしていることから、高騰するコメの代わりにはなりにくいものと推察される。
■食卓にシリアルの登場率が増加
顕著に増えていたのがシリアル。前年を上回る水準が続いており、2024年12月から2025年2月にかけての3カ月は2桁増となっている。手軽に準備できるだけではなく、さまざまな素材で栄養バランスに優れているシリアルが、コスパの良さで再評価されているようだ。
25年2月の前年比108.9%とシリアルの次に増えていたのが、副菜の野菜・乾物だ。内訳を見ると、フライドポテト・ハッシュドポテトが大きく増えていた。低価格でボリューム感のあるメニューで、コメを減らしても満足度の減らないような工夫が見られる。
逆に減少が目立ったのが、副菜のサラダ・生野菜で2025年2月には前年比90.9%と1割弱も落ち込んでいる。キャベツをはじめとする葉物野菜も高騰しており(参考:価格高騰で「キャベツ離れ」日本人の食卓に大変化)、食事全体で支出が増えないようメニューを選んでいそうだ。
副菜では、常備菜・飯の供も減少してきている。常備菜・飯の供の減少は朝食に限ったことではなく、後述する昼食・夕食でも見られた。コメの登場回数がそれほど減っていなくても、ほかのメニューを増やしてコメの消費量を減らした結果、常備菜・飯の供も減っているのではないだろうか。とりわけ減っていたのが、価格の上昇している海苔や佃煮であったことから、節約のために減らしている様相も見て取れた。
■昼食ではボリューム感のある揚げ物や中華料理などを活用
続いて昼食を見ると、主食のうち緩やかな伸びが見られたのがパスタ。2025年1月・2月と前年比でほかの主食をやや上回っている。腹持ちがよく、コメと比べておかずなどのほかのメニューを減らしやすいことから節約にもつなげやすいことが堅調な理由ではないだろうか。
主食以上に変化が大きかったのが主菜で、揚げ物と中華料理・炒め物は2025年2月に前年よりも1割ほど増加した。揚げ物ではメンチカツやフライドチキン、中華料理・炒め物では春巻きや麻婆豆腐などが特に増えており、費用を抑えてもボリューム感を出しやすいメニューが人気となっている。
夕食では昼食以上にパスタが伸長しており、2025年2月には前年比116.5%となった。なかでもミートソースパスタやクリームソースパスタなどボリューム感を出しやすいメニューが大きく伸びている。
主菜の揚げ物も堅調だが昼食ほどの伸びが見られていない。夕食でとりわけ伸びが見られていたおかずは副菜の豆腐料理で、おからや肉豆腐などが伸びていた。夜に揚げ物を食べ過ぎて胃もたれすることを懸念しているためか、満腹感を得つつも健康にも配慮できる豆腐料理の人気が高まっているようだ。
■ボリューム感を出しやすい食材がコメの代替品に
高騰によりコメ離れが進むなかでも、食事の満足度を損なわないよう食卓のメニューを工夫していることがわかった。コメの代わりとして主食のシリアルやパスタが人気となるだけではなく、コスパがよくボリューム感を出しやすいポテトや豆腐などのおかずも、コメの代替需要を取り込んでいそうだ。
また、コメ以外にも高騰が続く、生鮮野菜や海苔なども食卓からは減少しており、食事全体で支出が増えないよう考慮していることがうかがえた。
木地 利光 :市場アナリスト
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