( 282294 )  2025/04/12 05:38:19  
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トランプ大統領が日本の街で米国車を見かけなかったことに不満を表明し、日本の市場開放を求める一方、石破首相は日本の対米投資の大きさをアピールして関税措置の見直しを求めた。

日本政府はトランプ大統領との交渉に対し、報復関税などの対抗措置を避け、各国に先駆けて軟着陸を図る姿勢を示している。

(要約)

( 282296 )  2025/04/12 05:38:20  
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米国のトランプ大統領(左)と石破首相 

 

 「日本に何度か行ったが、街で米国の車は一台も見かけなかった。日本の車は米国中を走っている。どういうことなんだ」 

 

 米国のトランプ大統領がこう不満を漏らすと、石破首相や林官房長官らが集まった首相公邸の一室に緊張感が漂った。 

 

 7日夜に行われた日米首脳電話会談でトランプ氏は「日本はアンフェア(不公平)だ」と主張し、市場開放を迫った。 

 

 首相は米国の雇用を生み出す日本の対米投資の大きさをアピールし、関税措置の見直しを求めた。日本の対米投資額の残高は2023年に7833億ドル(約114兆円)と5年連続トップで、日本企業は米国で97万人の雇用を生んでいる。 

 

 首相は関税措置で「日本企業の投資余力が減退することを強く懸念している」と強調。アラスカの液化天然ガス(LNG)開発に触れ、「一緒にやりましょう」とも呼びかけた。 

 

 米国にとって、日本の自動車は対日貿易赤字の象徴だ。トランプ大統領が7日の電話会談で石破首相に行ったような主張は過去にもあった。 

 

 安倍晋三回顧録(中央公論新社)によると、2014年4月、当時の安倍首相に対し、オバマ大統領は東京・銀座のすし店で「自分はこの店に来るまで、米国車を一台も見ていない」と詰め寄った。安倍氏は「外を見てみましょうか」と提案。BMWやベンツなどを挙げ、「いくらだって外車は走っている。でも米国車はない。左ハンドルのまま売ろうとしている」と切り返した。 

 

 日本では、米国車を含め、自動車への関税はゼロだ。米国が問題視する規制などの非関税障壁に関しても、ドイツ車は米国車と同じ扱いを受けつつ、日本市場に浸透している。 

 

 石破首相は安倍氏と同様にトランプ氏へ反論したい衝動を抑えつつ、「関税問題については閣僚レベルで協議をやりませんか」と持ちかけ、トランプ氏も「じゃあ窓口を設けよう」と応じた。 

 

 首相は対面ではないやり取りで強く反論した場合、トランプ氏を怒らせ、冷静な協議ができなくなる恐れがあるとみていた。 

 

 

 日本政府内には「各国がどんなディール(取引)を持ちかけてくるか、トランプ氏は今、見定めている。相互関税上乗せ分の一時停止も、押しては引く『トランプ流交渉術』だ」との分析が出ている。 

 

 米国との交渉を模索しているのは約70か国に上るとされるが、日本政府は報復関税といった対抗措置を早々に選択肢から外し、各国に先駆けて閣僚協議を開始して軟着陸を図る構えだ。外務省幹部は「トランプ政権側には日米合意をモデルに各国と妥結し、新たな貿易構造を作る思惑がある」と指摘した。 

 

 相互関税上乗せ分の一時停止期間が終わるのは7月上旬で、参院選の直前となる。閣僚協議の成否は石破内閣の命運を左右することになりそうだ。 

 

 

 
 

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