( 283019 ) 2025/04/15 04:03:25 1 00 国民民主党代表でありYouTuberでもある玉木雄一郎氏が昨年の衆院選で躍進し、主張した「103万円の壁」撤廃やガソリン税の廃止をめざしている国民民主党。 |
( 283021 ) 2025/04/15 04:03:25 0 00 YouTuberでもある国民民主党の玉木雄一郎代表
昨年の衆院選で「103万円の壁」の解消を掲げ、現役世代の支持を集めて躍進した国民民主党。与党が衆議院で過半数割れしたことから、キャスティングボートを握る存在となった。与党は国民民主に近づきつつ、途中から維新との連携にシフト。国民民主は与党との3党合意を十全に実現できず、新年度予算案では反対に回った。この結果をどう考え、今後どう動くのか。また、問題も指摘される「SNSと選挙」について、長くSNS発信を続けてきた立場からどう見るのか。女性スキャンダルによる3カ月の役職停止を経て、代表に復帰した玉木雄一郎氏に話を聞いた。(文・写真:ジャーナリスト・小川匡則/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
昨年10月の衆院選で改選前の7議席から4倍増となる28議席に躍進した国民民主党。代表の玉木雄一郎氏が中心となって訴えたのが所得税の最低課税額である「103万円の壁」の引き上げだった。自民党と公明党の与党議席が過半数割れしたこともあり、国民民主党の主張を取り入れて予算案に賛成してもらうべく3党協議が重ねられた。だが、結果的にはまとまらず、国民民主党は予算案に反対した。石破茂首相には期待していたと玉木氏は言う。
「『総選挙で大幅に議席を増やした政党があり、その政党の訴えた政策にしっかり耳を傾けていきたい』という発言を選挙直後にしていたからです。我々が議席を増やしたのは物価高騰に苦しむ国民のSOSの声なんです」
2024年10月、衆院選の選挙期間中、有権者に訴える玉木氏
そのため国民民主党は「103万円の壁を今年から178万円を目指して引き上げること」と「ガソリンの暫定税率を廃止すること」の二つを求めてきた。しかし、協議の途中で与党は日本維新の会との協議を優先し、結果的に維新の賛成を得て予算を成立させた。
「予算を通すというのは政局であって、党利党略です。そうではなく、国民が求めている政策をやらなければ国民の信頼や期待を裏切ることになる。石破総理の政治決断を期待していましたが、最後までリーダーシップは全く見えなかったです」
玉木氏は失望した表情で語る。
一方で自身が3党協議など重要な局面で前線に立てなかったことも交渉に影響したことは否定できない。衆院選後の初登院となった11月11日、玉木氏は女性スキャンダルを「SmartFLASH」に報じられた。その約1カ月後、党の両院議員総会で役職停止3カ月の処分が下された。代表に復帰したのは予算案が衆議院を通過した3月4日だった。
「基本的には家庭内の問題なんで……。正直、報道は必ずしも事実じゃないところもあったんですが、疑念を持たれて報じられたこと自体が、高度な注意義務を課せられている党の代表としては、それに反しているということで素直に謝ろうと思いました」
YouTubeの公式「たまきチャンネル」では「銀の盾(登録者数10万人以上)」を獲得。2025年4月上旬現在、登録者数59万人
「最も重要な期間に私が最前線からいなくなったことは本当に申し訳なかったと思っています。(役職停止中は)役員会にも出られないので決めることには携われなかったですが、決まったことの解説や発信はこれまで以上にやろうと思いました。ネット上の発信やテレビ出演もむしろ積極的にやって、広報マンに徹した3カ月でした」
今年度予算に国民民主の主張を十分に盛り込むことはかなわなかった。だが、各種世論調査では国民民主の政党支持率は上昇し続け、いまや野党で首位となっている。支持率が上がった理由はブレずに当初の方針を貫いたことと玉木氏は見ている。
「維新を見ると、与党案に賛成したことで支持率は横ばいか少し下がっている。我が党の支持率が上がっているのは引き続き頑張れという声だと思います。今回の(与党との)戦いは負けた。その上でやはり手取りを増やすために参院選でもう一度チャレンジしたい」
国民民主が昨今力を入れるのは、現役世代の可処分所得を上げる=手取りを増やすことだ。それは他の既存政党が高齢者や低所得者に目を向ける一方、現役世代の負担軽減が後回しになっている現実があるからだ。事実上、立憲民主、共産、公明、自民の各党は高齢者向けの政党になっていると玉木氏は言う。
「総選挙後、立憲が最初に出した法案は(マイナンバーカードからの)紙の保険証の復活でした。ある意味では支持者のニーズに忠実なんですが、象徴的だと思いました。現役世代からすると(保険証も)むしろ全部スマホに入れたいと思うはずです」
2024年10月12日、衆院選前の7党首討論会に臨んだ玉木代表(玉木氏インスタグラムより)
もちろん高齢者や低所得者を支援することは重要だが、これまではそこに傾き過ぎていたのではないかというのが玉木氏の懸念だ。
「今の日本では高齢者も厳しいですが、物価高や社会保険料の上昇が続くなか、真面目に税金を払っている現役世代にとってはそれ以上に厳しい。だから、我々は昨年の衆院選で『手取りを増やす』政策を示してきたのです」
「私、見たことありますか?」と表参道で通行人に尋ねる玉木氏。2018年7月27日、YouTuberとしてデビュー(たまきチャンネルより)
そんな現役世代に支持を広げる上で大きな要因となったのが、ネットの活用だ。玉木氏は2018年にいち早く個人でYouTubeを始めた。昨今ではスーパーチャットというライブ配信中の投げ銭も1時間で50万円を超えることが珍しくない。現役世代に響いている証左だが、ただ配信を増やせばいいと考えているわけではないと玉木氏は言う。
「結局、ネットは政治の世界でもコンテンツマーケティングです。なので、フォロワー数よりも、いかに有権者に訴えかけられるコンテンツを作れるかどうかなんです。つまり、我々が訴えるべきは政策です。『103万円の壁の引き上げ』のように、国民がいま求めているニーズに合ったコンテンツ、政策を探していくしかないと考えています」
一方、昨年批判が強まった「切り抜き動画」について、玉木氏は推進の立場だ。政治系の切り抜き動画を報酬目的で作る人も少なくない。また、フェイクや偏った情報の流布も含め、「選挙とSNS」という観点でまだ議論が片付いていない。だが、玉木氏はまだ規制する段階ではないと考える。
(画像制作:Yahoo!ニュース)
「お金儲けだけを目的としている人もいるのかもしれませんが、我々を応援し、多くの人に知らせようと拡散してくれている人もたくさんいる。我々だけの発信では、ここまで国民民主党への支持は広がらなかったでしょう。切り抜き動画はぜひ広げてほしいですね」
国民民主党が現役世代の「手取りを増やす」政策を訴えているのは「今困っている人をまずは助けたい」という思いからだという。では、中長期的にはどういった経済政策を考えているのか。玉木氏は「基礎研究」と「海洋資源」の二つを掲げた。
「資源のない日本のあるべき姿は、やはり科学技術立国でしょう。なのに、これまで基礎研究を『短期で成果が出ない』とどんどん予算を削ってきた。それが日本の基礎体力を落としている。基礎研究こそ日本がやらないといけないことです。加えて、民間には研究開発投資に対して『ハイパー償却税制』を導入すべきです。例えば、100億円投資したら160億円まで減価償却を認める。そしたら確実に民間企業の研究開発投資は増えます」
もう一つ積極的に推進すべきだと考えているのが資源の開発だ。
「日本は国土面積が小さいと言われていますが、海洋では領海やEEZ(排他的経済水域)を含めて世界で6番目の面積です。海底資源の開発をもっとやるべきです。今までは利用できなかったことが、最新の技術を使えばできるかもしれない。そういうところで広い意味での研究開発費を拠出する。そこでイノベーションを起こし、100%エネルギーを自給できる国になれば、経済成長はもちろん、安全保障戦略もガラッと変わってきます」
与党にも野党にも等距離──。国民民主が昨秋掲げた姿勢は当初、わかりにくいと批判を浴びた。少数与党の政界は今後どうなっていくのか。野党がまとまって政権を奪取するのも一つの可能性だが、それは難しいと玉木氏は考えている。
「政権交代は、野党第一党がどういうリーダーシップや調整能力を発揮するかにかかっています。ですが、残念ながら立憲の野田(佳彦)さんからはそういう動きがない。私自身、野田さんとは昨年11月5日の党首会談以降、一度も話していません。これでは野党はまとまれないし、そもそも政権を取る気がないんじゃないか。政権を担うに足る政策もない。あれならまだ自民党のほうがマシだと、私だけでなく多くの国民は思っているでしょう」
では、国民民主は自公との連立政権に入る可能性はあるのか。それも難しいと玉木氏は言う。
「まず選挙の小選挙区でぶつかるので、難しいですね。政権の外にありながら部分部分で協力していく体制がしばらく続くのではないか。閣外協力というのではなく、案件ごとに他党の協力を得る。そういう他党に大変気を使う政治が今後も続いていくでしょう。その第一号が石破さんなんだと思います」
1990年代の選挙制度改革では二大政党を目指して中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に移行した。だが、玉木氏は二大政党制を志向するのは現実的ではなく、今後の政治体制は多党制がベースになると予想する。
ライブ配信など自ら発信している
「今後は穏健な多党制に移行していくと思います。三つから五つくらいの政党が政権の内外問わず一定の協力をしながら政権運営をしていく。だとすれば、その中で我々が中核的な役割を与党の一角として担いたい。必ずしも野党第一党でなくてもキャスティングボートを握れる可能性はある。そのためにもコアとなる価値観や政策を持ってまとまることが必要です。その上で1000万票くらいの比例票を取れる政党にすることをまずは目標にしています」
そのために国民民主党は今年7月の参院選では改選16議席を目標とし、非改選の5議席と合わせて予算が伴う法案を単独で提出できる21議席を目指している。
さらにはその前に行われる東京都議会議員選挙でも候補者を擁立し、首都東京での地盤強化を図る。6月の都議選で一定の支持を得て、7月の参院選につなげたいというのが玉木氏の考えだ。
「東京では、私の地元・香川と同じくらい支持が出てきています。都民ファーストさんとは今までいろんな形で連携してきていますが、都議選では我々も伸ばしたい。都議会で自民党を野党にすることが大事だと思います。その動きが国政に波及していく可能性もあるでしょう」
都議選で一定の議席を獲得し、参院選で議席を増やせば、国民民主の国政での存在感はさらに増す可能性がある。現役層をターゲットにした玉木氏の狙いは実現するのか。有権者も注目している。
小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。政治、経済、社会問題などを中心に取材している。
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」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。SNS上での誹謗中傷が社会問題としてクローズアップされるようになっています。それに伴い、辛辣な投稿に対する対策や人々の意識も変わってきました。一方で、SNSの恩恵を受けている人たちも多くいます。私たちはどのようにSNSと付き合っていけばよいのでしょうか。さまざまな事例と共に考えます。
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