( 283139 )  2025/04/15 06:26:19  
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日本ではコメの消費量が長期的に減少し、政府の対策がうまくいかず価格高騰が続いている。

この問題は単なる食文化の変化だけでなく、自由民主党と農水省の失政が原因であり、コメ離れが進んでいる。

国際研究からも補助金が農業技術効率を低下させることが分かっているにもかかわらず、減反政策などで農業の供給力と競争力が破壊されてきたと指摘されている。

価格が高騰し米が高くなる中、消費者がパンなどに変える声も上がり、消費離れが懸念されている。

政府の対応は責任転嫁や愚策であり、真の改革が求められている。

(要約)

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「日本人のコメ離れ」が進んでしまった背景とは(写真:イメージマート) 

 

“令和の米騒動”で高止まりを続けるコメ価格。政府は備蓄米放出などで価格安定をはかろうとしているが、思惑通りにはいっていない。このまま価格が落ち着かなければ、「日本人のコメ離れ」が加速する懸念も指摘される。だが、そもそも令和の米騒動が起こる前から、日本の米食文化は危機に瀕していた。自民党と農林水産省が長らく手掛けてきた農政の問題点をイトモス研究所所長・小倉健一氏が解き明かす。 

 

 * * * 

 日本人の主食、米。その消費量が長期的に減少し続けている事実は、農林水産省自身の統計が示す揺るぎない現実である。1962年度に1人当たり年間118.3kgあった消費量は、2020年度には50.8kgと半分以下にまで激減した(農林水産省「食料需給表」より)。食生活の多様化が一因とされる。しかし、最近の米高騰にともなう「コメ離れ」は、単なる食文化の変容などという言葉では片づけられないこれは、長年にわたり日本の農政を支配してきた自由民主党と農林水産省による愚策、怠慢、そして国民への裏切りが招いた、必然的な国家的衰退の姿ではなかろうか。 

 

 彼らは「日本の米食文化を守る」「食料自給率の向上」と空虚なスローガンを唱え続ける。その実態は、文化を守るどころか破壊し、自給率向上どころか主食の基盤すら危うくしている。半世紀にも及んだ悪名高き「減反政策」は、農家から作る自由と経営努力への意欲を奪い、補助金漬けにして思考停止させ、日本の米生産の供給力と競争力を徹底的に破壊した。国際的な多数の学術研究が、所得補償的な補助金は農業の技術効率を低下させると明確に結論付けているにも関わらず、自民党と農水省はこの非効率化政策を意図的に推進し、農業の衰退を主導してきたのである。 

 

 平時には、自給率が100%を大きく超えるレベルで高品質なお米を作って輸出に回し、有事には国内へと回す。これが日本の農業の競争力を高めながら、食料安全保障に繋げられる「解」であろう。輸出を増やすということは、同時に輸入も認めるわけだ。輸出もしないが輸入もしないでは、供給が不安定になり、価格が高くなるのは当然のことだ。 

 

 農水省と自民党は、「778%」という幻の高関税率をプロパガンダとして利用し、国民と農家を欺き続けた。2013年11月15日付の日本経済新聞が報じたように、農水省は国際相場の変動に合わせて関税相当率の見解を「280%」に修正していた事実を隠蔽し、常に自らの政策に都合の良い数字だけを利用してきた。この二枚舌と欺瞞により、消費者は公正な価格を知る権利を奪われ、農家は真の経営改革から目を背けさせられた。 

 

 

 近年、肥料・燃料・人件費などの生産・流通コストは異常なほど高騰し、米価は前年比7割超という狂乱的な値上がりを見せている。スーパーでの平均価格は5kgで4000円を超え、多くの家庭が悲鳴を上げている。三菱総合研究所の稲垣公雄氏が2025年4月3日付の同社コラム「食と農のミライ」で分析したように、2025年2月時点で、ごはん1膳(約57円)は6枚切り食パン1枚(約32円)や4枚切り食パン1枚(約48円)より明らかに割高となった。かつて安価な国民食であったはずの米が、パンやパスタより高価になる。これが、自民党と農水省による長年の失政がもたらした惨状である。 

 

 テレビの街頭インタビューで「おコメが高いからパンに替えた」という声が聞かれるのも当然である。稲垣氏が指摘するように、それは価格比較に基づいた「むしろ事実」なのだ。この状況が続けば、消費者の「コメ離れ」がさらに加速することは避けられない。全国農業協同組合中央会(JA全中)の山野徹会長ですら、4月10日の記者会見で「高止まりすると消費離れが発生する」と懸念を表明している(時事通信報道)。自民党と農水省は、日本の食文化の根幹である米食を、自らの無策と失政によって破壊していることに、一体いつ気づくのだろうか。 

 

 この危機的状況に対し、自民党と農水省の対応は、相変わらず責任転嫁と場当たり的な弥縫策に終始している。彼らは価格高騰の原因を「転売ヤー」や「流通の目詰まり」といった末節になすりつけ、自らの政策失敗から国民の目を逸らそうと必死である。農水省は「在庫が分散している」などと、本質を外した調査結果を公表し、姑息な言い訳を続けている。現場からは「供給力不足」「コスト高騰」という悲鳴が上がっているにも関わらず、それを無視し続ける。 

 

 挙句の果てには、国家の食料安全保障の最後の砦である備蓄米を、価格抑制という目先の目的のために、効果も疑わしいまま小出しに放出し続けるという愚行に及んでいる。3月に効果がなかったにも関わらず、4月にも10万トン、さらに7月まで毎月放出するという。これは国民を「朝三暮四」の猿扱いするに等しい、姑息で危険な弥縫策である。備蓄米は、古くなれば飼料用などに安価で放出されるのが常である。 

 

 平時に放出するならば、全量を一気に放出し市場価格の正常化を促し、その上で減反を完全撤廃し国内生産を自由化、不足分は関税を交渉カードに米国などから戦略的に大量購入する、それこそが本来取るべき道であろう。備蓄米を小出しにして食料安全保障を危険に晒す農水省は、一体何を考えているのか。彼らには、日本の農業と食の未来を構想する戦略的思考が決定的に欠落している。ただ、目の前の批判をかわし、要望に応えることだけが「仕事」だと勘違いしているのではないか。 

 

 JA全中会長は同会見で「コスト増加も価格転嫁しなければ持続可能な生産はできない」とも訴えた。それは当然である。しかし、そのコスト圧力の一部は、非効率な生産・流通システムを温存させてきた自民党と農水省、そしてJA自身の構造にも起因するのではないか。消費者に負担を求める前に、自らが徹底的な改革を行うべきではないのか。農家にも消費者にも良い顔をしようとした結果、結局どちらの信頼も失い、日本の米文化そのものを衰退させている。この罪はあまりにも重い。 

 

「コメ離れ」は、自民党と農水省による長年の農政失敗の象徴である。彼らの無策、怠慢、欺瞞が続けば、日本の食卓から豊かな米が消え、食料を他国に依存する脆弱な国家へと転落する未来が現実のものとなるだろう。今こそ、国民は怒りの声を上げ、彼らに責任を取らせ、真に国民のための、日本の食と農の未来のための、抜本的な政策転換を断行させなければならない。さもなければ、彼らは「コメ離れ」を招き、日本の食を崩壊させた戦犯として、歴史に名を刻むことになるだろう。 

 

【プロフィール】 

小倉健一(おぐら・けんいち)/イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立して現職。 

 

 

 
 

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