( 283819 )  2025/04/18 03:38:35  
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全国で米の供給不安や価格高騰が続き、小売業界も混乱している。

政府が備蓄米を放出しても供給は不安定で、小売業者は不安を抱えている。

備蓄米は需要が高く、量も少ないため、一家族1袋までの数量制限がされている店舗もある。

しかし、備蓄米を販売する店舗はまだ足りておらず、在庫不足が続いている。

増田忠義准教授によると、中間業者の在庫ため込みやJAなどが供給を独占することが価格高騰につながっている。

2024年の米の収穫量は23年を上回っており、米不足の可能性は低いとされている。

(要約)

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空きスペースが目立つ米穀店の在庫置き場。3月以降ずっと続いている=大和郡山市で2025年4月9日午後2時37分、山口起儀撮影 

 

 全国的に米の供給不安や価格高騰が続き、小売りの現場も混乱している。4月に入り、スーパーでは政府が放出した備蓄米がようやく並び始めたものの「売り場に出せば、すぐ品切れになる」といい、「量が少なく、現状では焼け石に水の状態」という。個人店主は「あらゆる米で希望量を仕入れられない」と不安を訴え、「このままでは米が売り場から消えた昨年の『令和の米騒動』の二の舞いになりかねない」と嘆く。 

 

 政府は既に2回にわたって計21万2000トンの備蓄米を放出。3月下旬からスーパーなどで出回り始めた。4月23日からは3回目の追加放出(10万トン)の入札も始まる。しかし、米5キロの平均価格が14週連続で値上がりするなど市場は不安定で、政府は夏までは毎月、動向をみながら備蓄米を放出する方針を掲げている。 

 

 奈良県内を中心にスーパーヤオヒコ14店を展開する八百彦商店(王寺町)は、4月5日に備蓄米5キロ500袋を初入荷。すぐ店頭に並べたが、3日程度で売り切れた。すぐに同数の追加注文を入れたが、次の入荷は早くて5月下旬の見込みという。 

 

 備蓄米は複数種類の米が混ざるが、見た目では分かりにくく、同スーパーでは混乱を避けるためにあらかじめ「2023~24年産のブレンド米」と表示。5キロ3180円(税別)で販売していた。安いものでも5キロ3900円(同)以上のその他の商品と比べ、700円以上安いため、物価高に悩む消費者にとって需要が大きく、「1家族1袋」と数量制限しても飛ぶように売れたという。 

 

 仕入れ担当者は「備蓄米は家計で苦しむ消費者に対するボランティアのようなもの。通常よりも薄利で販売している」。ただ「多くの客が安い備蓄米を購入することにより、割高な米が売り場に残ってくれるプラスの作用もある」とも話す。店頭在庫を常に確保することにつながり、昨夏のように米自体が売り場からなくなる事態を避けられるためだ。 

 

 だが、備蓄米を販売する店舗はまだ十分に広がっていない。 

 

 「3月からずっと在庫が少ない。常連客の分を確保するのがやっとだ」。大和郡山市の川西米穀店の店主、正田実さん(57)は諦めた表情で、空きスペースが目立つ在庫置き場を見つめる。 

 

 奈良県内の卸業者から奈良、新潟の両県産の4品種を仕入れているが「今は備蓄米に限らず、あらゆる品種で、思うように仕入れができない」と嘆く。1月から入荷数量が前年同期比約6割に落ち込み、3月以降は同約3割にまで減少。仕入れ値が高騰しており、やむなく6日に5キロで500円値上げした。安い米を中心にスーパーでも在庫が足りなくなっていることから、新規の問い合わせは多く舞い込むが、売るものを増やせないでいる。 

 

 正田さんは「中小の卸業者は十分に仕入れられず、販売店に届かない。大阪・関西万博を意識して、飲食店や米製品の加工会社などが大口で確保しているのも影響しているのではないか」と指摘。さらに「米を巡る混乱は現時点でも起きているのだから、政府は備蓄米を小出しにせず、まとめた量を放出してほしい」と要望した。【山口起儀】 

 

 ◇増田忠義・近畿大准教授(農業資源経済学)の話 

 

 米が売り場に行き渡らない事態は、卸売りなど中間業者が今年の収穫期までの需給切迫を見越して在庫をため込んでいるだけでなく、集出荷団体(JAなど)が供給を独占していることも大きく影響している。この状況では取引量が絞り込まれ、取引価格が高く維持されてしまう。そのため、売り場は不足にならない程度の入荷が維持される一方、高値が続く可能性がある。 

 

 流通量が絞られているため高値で推移する状況は続きそうだが、2024年産主食用米の収穫量は679万トンで、23年産を18万トン上回っており、24年規模の米不足までにはならないだろう。 

 

 備蓄米は複数の収穫年や産地、銘柄を合わせたブレンド米で、食味とともに安全性も気になるところだ。消費者は産地直売所やインターネット通販なども含め、生産者から直接購入先を確保することを検討してもいい。 

 

 

 
 

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