( 284211 ) 2025/04/19 05:24:09 0 00 「大阪・関西万博」の運営も各種SNSで積極的に発信しています(画像:公式サイトより)
4月13日、「2025年日本国際博覧会」(略称「大阪・関西万博」、以下「大阪万博」)が開幕しました。
開催前は建設費や運営費などのさまざまな問題から「不要」「興味なし」などの酷評が目立っていたものの、はじまってみたら、連日テレビやネットでは朝から夜までトップニュースとしてフィーチャーされているほか、芸能人やYouTuberも活発に発信。
テレビでは生放送の情報番組などでライブ中継され、ネット上では賛否両論があがるなど、意外なまでの盛り上がりを見せています。
ただ、開幕したあとも、「異常な大混雑と行列」「現金が使えず混乱」「食事が高すぎる」「2億円トイレは使用禁止」「無料招待でも行かない地元の小中学生」「大屋根リングがゆがんでいるという疑惑」などのネガティブな記事が続出しているのも事実であり、「とらえどころがないイベント」という印象の人もいるのでしょう。
大阪万博がけっきょく最大の話題になっている理由は何なのか。各パビリオンの具体的な開催内容ではなく、現状の本質的なところを掘り下げていきます。
■半年間にわたる長さと臨場感が共存
真っ先にあげておかなければいけないのは、イベントとしてのスケール。
開催期間は4月13日〜10月13日の184日間であり、これだけライブの臨場感と持続性が共存したイベントはなかなかありません。たとえば国民的な関心事としてはスポーツのオリンピックやワールドカップなどは1カ月弱の短期集中型です。
日本で開催された国際博覧会は、1970年の大阪万博、1975年の沖縄海洋博、1985年のつくば万博(茨城)、1990年の花博(大阪)、2005年の愛・地球博(愛知)の計5回開催され、今回が6回目。
2005年の「愛・地球博」以来20年ぶりであり、若年層は「万博を知らない」、1つ上の世代も「前回は行かなかった」という人も多く、SNSで発信したくなるような希少性があります。
また、半年間の長丁場だけにさまざまなトピックスを計画的に盛り込むことが可能。たとえば、序盤・中盤・終盤と進むにつれて右肩上がりに来場者数が増える。何かのきっかけを受けてサービスが改善されていく、あるいは悪化していくなど、よくも悪くもストーリーが生まれやすいところがあります。
開催期間が長いからこそパビリオンも多種多彩であり、今回は160を超える国や地域、国際機関が参加。
さらに、データサイエンスの宮田裕章さん、ロボット学の石黒浩さん、生物学の福岡伸一さん、放送作家の小山薫堂さんら各界のプロデューサーが手がける8つのシグネチャーパビリオン。NTT、パナソニック、バンダイナムコ、吉本興業らが手がける13の民間パビリオンなどもあり、それぞれに話題性が期待できます。
その他でもショーやイベントが目白押し。音響・照明・プロジェクションマッピング・ドローンショーなどが連動したショー「One World, One Planet.」、水と空気のスぺクタルショー「アオと夜の虹のパレード」、参加国や地域による「ナショナルデー」、国際機関による「スペシャルデー」、音楽・スポーツ・祭り・番組の公開収録などのイベントも予定されています。
■初めて本格的にネット発信される万博
そして最大のポイントは、これほどのビッグイベントに多くの一般人が参加し、自らネット上で発信できること。
ビッグイベントの参加者はプラチナチケットを手に入れた一部の人や芸能人などに偏りがちですが、万博はYouTuberなども含む1日数万人単位の人々が参加できるため、強烈な発信力が生まれます。
ちなみに初日の来場者数は11万9000人であり、関係者2万2000人と合わせて計14万1000人が参加。「愛・地球博」は中盤から終盤に向けて来場者が増えたほか、今回は2820万人の来場を見込んでいるだけに、多くのネット発信が期待できそうです。
その「愛・地球博」の開催時は、まだネットニュース、SNSの黎明期であり、今回は「初めて本格的にネット発信される万博」と言っていいでしょう。その意味で大阪万博はネガティブな声も含め、これくらいの反響があって当然と言えるのかもしれません。
これだけ参加・体験型の多種多彩なコンテンツがあり、既存のイベントやテーマパークなどとも違ううえにツッコミどころがあるものも多く、記事やコメントの数はおのずと増えていきます。
ひいては「そもそも万博というイベントが時代に合っているか」という開催意義や、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマなども含めて、賛否や是非を語りたくなる要素が満載。1つひとつの解釈に個人差が出やすいため、今後も称賛と酷評の声が飛び交う状態が続きそうです。
■開幕後のカウンターで“賛否は五分五分”に
あらためて大阪万博を取り巻くここまでの流れを振り返っていくと、2018年11月の開催決定から開幕直前までの前評判は厳しいものがありました。さらにそのネガティブなムードが開幕直後にも続いたことで、ポジティブな称賛や擁護が意外性を感じさせ、効果的なカウンターとして機能。
特に一般人やプライベートで訪れた芸能人の称賛や擁護は注目を浴びやすく、目先の再生数がほしいYouTuberなども「意外に楽しかった」などと“逆張り”することでポジティブなムードが押し返し、賛否イーブンのような現状につながっています。
しかも称賛・擁護は現地に行った人々によるものが多く、具体的な情報や写真などがあって、一定以上の説得力があることもポイントの1つ。混雑や飲食などの注意点や対策などを共有するようなコメントも多く、成功・失敗エピソードを読むことで「それなら行ってみようかな」という関心につながりはじめている感があります。
一方、酷評・侵害は現地に行かずに発信している人が多いため、説得力のある称賛・擁護を受けるといったんトーンダウンせざるを得ません。ただ、それでも酷評・侵害をする人々が完全に沈黙することは考えづらく、今後は何らかの不足などを見つけて声をあげていくでしょう。
そこに再び称賛・擁護をかぶせ、さらに酷評・侵害をかぶせて……というように話題性という点では好循環の攻防が続いていくのではないでしょうか。
■メディアのマッチポンプは要注意
この点でもう1つ言及しておきたいのは、ネットメディアがマッチポンプのように報じていること。
実際、「前評判の悪さを利用してカウンターとなる称賛・擁護の記事を報じ、そこに酷評・侵害の記事をかぶせて賛否両論のムードにつなげ、さらに称賛・擁護の記事、酷評・侵害の記事を繰り返し報じることでPV獲得を狙う」という戦略がすでに見られます。
ネットメディアの編集者たちは、単に酷評・侵害の記事ばかりでは短期間で飽きられてしまうことをわかっていて、現在のような称賛・擁護との両論が飛び交って盛り上がりが続く状態を作ろうとしているのでしょう。
今後も多くのネットメディアは半年間の期間中、このような戦略を続けていくことが推察されます。
だからこそ記事を見る私たちはそんな思惑に利用されることなく、情報を冷静に受け止めたうえで取捨選択していきたいところ。もしかしたら大阪万博は多くの記事やコメントが飛び交う中で本質を見極める目が問われるイベントなのかもしれません。
それでも国内の国際博覧会は10年に1回程度の開催頻度だけに、いくつかの問題点こそあっても、イメージだけで「つまらない」「行かない」と決めつけてしまうのはもったいないように見えます。
「地球規模の課題解決に寄与する」という万博の目的も含め、本当に時代遅れのイベントで自分が楽しめないものなのか。よく考えて自分なりのスタンスで接すればいいように思います。
木村 隆志 :コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
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