( 284529 )  2025/04/20 06:28:42  
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総理大臣の石破氏は、物価高への対策を提案したものの、一律給付金案が不評を受け撤回し、強い対策は取れずに補正予算の見送りが決まった。

立ち消えに終わった給付金案や消費税の減税提案なども具体化せず、補助金のみの対策に留まることが決まった。

食料品への支援は未着手で、食料品への消費税減税が焦点となっている。

(要約)

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「総理発言」がなんと軽いことでしょうか。3月末に石破総理が、「予算成立後に強力な物価高対策を」と、珍しく踏み込んだと思いきや、一律給付金が不評だと報じられると、あっという間に引っ込め、今国会での補正予算見送りが固まりました。これで予備費を財源にした「弱い物価高対策」しか打てなくなりました。 

 

■不評だった現金給付案 

 

賃金が物価高に追いつかない状況が続く中、まず与党内で家計支援として議論されたのは、一律の現金給付でした。自民党からは5万円、公明党からは10万円といった数字が飛び交いました。しかし、「1回限りで効果がない」、「参議院選挙前のバラマキ」と不評で、世論調査も否定的な意見が多かったことから、立ち消えとなりました。 

 

次いで、消費税の減税などを求める声が、野党からだけでなく、与党内からも相次ぎました。しかし、実現までに時間がかかる上、財源もより必要になることから、今国会中という短期間でまとめることは現実的ではないとの判断から、政権内で具体的な検討対象にはなりませんでした。 

 

■補正見送りでエネルギー補助のみ 

 

そもそも、少数与党の石破政権が補正予算を成立させるためには、野党の賛成が不可欠です。参議院選挙前にそうした合意が形成できるとは、なかなか考えられません。「強力な」とは言ったものの、結局は「現状維持」、「何もしない」ことに落ち行くと言う、石破政権お決まりの、早い幕引きとなりました。 

 

補正予算が見送られるのであれば、大きな物価高対策を打つことはできません。7000億円程度の予備費の範囲内でと言うことになります。減税も現金給付もなく、残ったものは、結局、ガソリンと電気・ガス代への補助金です。 

 

ガソリンについては、暫定税率廃止をめぐる自民・公明・国民の3党の枠組みがすでにあったことから議論が先行しました。現在の1リットル=185円をめどにする補助に加え、10円程度、補助を拡充する案が有力です。 

 

3月でいったん打ち切られた電気・ガス代への補助金は、6月から8月の間、酷暑対策として復活させる案が検討されています。要は、これまでの対策の再開に過ぎません。 

 

 

■食料品への支援は手つかず 

 

今回のインフレ局面でもっとも影響を受けたのは、輸入に依存する食料品とエネルギー価格でした。食料品やエネルギーの価格高騰は、中低所得者にひときわ厳しくのしかかります。エネルギーについては、補助金で対応してきましたが、食料品は全く手付かずです。 

 

3月の全国消費者物価指数(除く生鮮食品)は、前年同月比3.2%もの上昇と2月の3.0%からさらに騰勢を強めています。足もとでインフレ加速の要因の大半は食料品の値上がりで、中でも、主食のコメが1年前に比べ2倍になったことが響いています。 

 

主食の価格が1年で倍になれば、普通の国なら、政権の1つや2つが吹っ飛ぶことでしょう。遅すぎた備蓄米放出は、未だ効果が現れません。コメの小売価格を引き下げるための、多岐にわたる、ダイナミックな緊急対策が必要なはずです。農水省任せでは、絶対にできません。 

 

■食料品への消費税減税が焦点に 

 

中長期的には、現在、8%の軽減税率が適用されている食料品への消費税の税率引き下げが避けて通れない命題でしょう。デフレからインフレの時代に変わり、中長期的に食料品価格の高騰が続きそうだからです。 

 

すべての人が支払う食料品に対する消費税の減税は、ある意味公平で、逆進性の緩和という目的に合致しています。住民税非課税世帯という必ずしも対象がはっきりしない世帯に給付金を繰り返すより、食料品への消費税減税の方がよりダイレクトに効くはずです。 

 

軽減税率という制度がすでに存在しているので、軽減税率だけ動かすことは、制度やシステムの上でも、それほど難しいことではありません。財源も、例えば8%を5%へと引き下げる場合、2兆円程度で済むと見られます。もちろん、歳出削減などの努力は必要ですが、ガソリン補助金にすでに8兆円以上使ったことや、5万円の一律給付で5兆円必要なことを考えれば、決して非現実的な数字ではありません。 

 

■インフレ、格差拡大時代に適切な税制を 

 

世界には、イギリスやカナダなど食料品の消費税をゼロにしている国はいくつもあります。コメや野菜にまで8%の消費税を課すことが、格差が拡大する今の日本経済の実力から言って、本当に適切なのかを議論すべき時のように思うのです。 

 

今回の経済対策作りでも、消費税の議論は封印されそうな気配です。毎年、12月から3月末までは、翌年度予算成立を優先させるために、減税などの大きな修正は議論できません。4月以降の後半国会では時間が限られているので予算関連の議論は行われず、秋は秋で、即効性が求められる補正の議論が優先されがちです。 

 

この国の政治は、一体いつ、抜本的な税制改革の話をするのでしょうか。 

 

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター) 

 

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