( 286226 ) 2025/04/26 06:47:50 0 00 写真はイメージです Photo:PIXTA
ライター業の傍ら、スキマバイトでさまざまな職場で働いている筆者が仕事を通じて見えた悲喜こもごもをつづる本連載。今回は、とある駅構内にある「立ち食いそば屋」での体験をレポートしよう。「安くて早い!」をフル稼働で支える店長から、深刻な人手不足の実情を学ぶことになった。(ライター みやーんZZ)
● 駅の「立ち食いそば屋」 裏側はどうなってるの?
氷河期世代の40代おじさんである僕が去年、突如ハマったスキマバイト。和食ファミレス、マクドナルド、天下一品と飲食店でのスキマバイトを続けてきましたが、今回はとある駅の構内にある立ち食いそば屋に行ってきました。
時々通る駅の開けたことがない扉を開け、お店のバックヤードに入店。事務所で店長とごあいさつをし、制服に着替えて店内へ。僕の前に働いていたとおぼしき70歳ぐらいの男性と交代して勤務開始となりました。
僕を出迎えてくれた男性の店長は人当たりが柔らかく、いろいろ声をかけてくれて良い印象を持ちました。結構お話好きな方みたいで、今日は楽しく働けそうな予感がします。
簡単な業務説明を受け、僕は主に食器洗いを担当することになりました。
このお店は全て立ち食い。席数は10席にも満たない小さなお店です。
お客さんは店頭の券売機で食券を買い、店長はカウンターに置かれた食券を確認してそば、うどんなどを調理して即提供。皆さん、黙々と食べて、食事が終わるとすぐ帰り、お店の平均滞在時間は5分から10分ぐらいとなっています。
お客さんが食べ終わった食器を返却カウンターに置いてくださるので、僕はそれを受け取りガンガン食洗機にかけていきます。
● 1人で手際よく料理する店長 連携もバッチリ!
そば・うどんはそんなに油を使っていないので下洗いもほぼしなくてOK。洗うのが一番厄介だったのはセットのカレーです。こちらは油分べったり&ご飯がこびりつきがちなのでちょっと漬け置きしてから下洗い、食洗機という流れで対応しました。でも、たまにしかカレーセットは出ないので大きな問題ではありませんでした。
食器数が少ないので片付け先もすぐ覚えられました。ガンガン食洗機を回していきます。
実は、この前に超忙しい社員食堂の洗い場などを体験していたのでだいぶ楽に感じました。「最初に修羅場を体験しておくと、その後が楽だな」とブラック企業から生還した人みたいな気持ちになっている自分がいます。
土曜日の昼下がり、ランチタイムのラッシュがちょうど終わったころに勤務開始となったため、来店者数に波はあるものの超絶に忙しい瞬間は特に訪れず、余裕を持って自分のペースで仕事することができていい感じ。店長は1人でそばやうどんを茹で、ダシを注いで天ぷらなどをトッピングする一連の流れがとてもスムーズです。見ていてほれぼれします。
狭い厨房内で調理する店長の邪魔にならないように気を使いながら動きつつ、下げた食器を洗いまくります。
お客さんが置いてくれた食券もチェックし、「天ぷらそば一丁!」などと店長にコールしたりして、勤務開始から1時間ぐらいで徐々に息が合ってきて連携ができるようになりました。
ちょっと手が空いた時間が生まれたので、店長と雑談。普段聞く機会がない「立ち食いそば屋事情」は、とても興味深いものでした。
● 立ち食いそば屋の厳しい実情 人手不足、高齢化も深刻
例えば、冬はお客さんが温かい汁物を求めるため、立ち食いそば屋では冬の方が圧倒的に売り上げが多いとのこと。最近は暑い時期が長く、寒い時期が短くなってきていて立ち食いそば屋的には厳しい状態が続いているといいます。
また、先述の通り、滞在時間が短いのも立ち食いそば屋の特徴。電車の乗り換えや待ち時間の間にサッと食べていくお客さんがほとんどで、混み合って提供が遅くなると「時間がないからキャンセル!」と帰ってしまう人もいるそうです。
特に興味深かったのは、コロナ禍以降、飲食店が従業員を集めることに非常に苦労をしているという話題。コロナ禍で「密」状態を避けるために各飲食店が営業時間を短縮したり、休業したりしてそれまで働いていたアルバイトやパートの方が他の業種で働くようになり、コロナが明けても飲食店に戻ってこないんだそう。
そしてこのお店には別の問題も。店員の高齢化が進んでおり、長年勤めていたベテランのパートのおばさまは最近、年齢と家庭の事情で退職。その後任の人材が全く雇えないため、欠員枠をタイミーで埋めている状態なんだとか。
非常に切実な飲食店界の実情を伺い、「飲食店の人手不足、うわさには聞いていたけど、ここまで深刻な状態なのか!」と驚かされました。
店長がフル稼働してなんとかお店を回している状態とのこと。安価な立ち食いそば屋は店長のような方の頑張りによって支えられているんだなと感じつつも、「これって持続可能なのか?」と今後が少し心配になってしまいました。
● スキマバイトのドタキャンは 小さな飲食店にとっては恐怖
僕の前に働いていた方も、正直なところ、おじいちゃんでしたからね。あの方もいつまで働けるんだろう? そしてあの方が辞めてしまったらその後任は見つけられるのか? その穴はスキマバイトだけで埋められるのか? いろいろ気になってしまいます。
こんな感じで人手不足に関して話している中で、さらに店長から衝撃的な情報が飛び出しました。
実はこの日のスキマバイト、前日にマッチングした女性の方が入る予定だったそうですが、知らない間にその方がキャンセル。システム側で自動的に再募集がかかって、それをたまたま朝、アプリを見ていた僕が見つけて申し込みして働きに来たわけですが、店長はそのキャンセルに全く気づいていなかったみたいなんです。
もし仮に仕事に申し込みする人がいなければ、早朝から夜まで通し勤務だった店長はお昼すぎからバイトゼロのワンオペで働く羽目になりそうだったとのこと……。
「いやー、マジで危なかったよ。知らない間に急なキャンセルとか、怖いよね! あなたが来てくれなかったらお店が回らなかったですよ。ありがとう!」と感謝していただいて、僕としてもいいことをした気分になりました。
しかしスキマバイトのドタキャン、和食ファミレスの時にもありましたけどギリギリの少人数で回しているお店にしたら本当に恐怖ですよね。
結局、夕方以降は来店するお客さんの数も落ち着き、終業時間まで店長とおしゃべりなどしながら、楽しく立ち食いそば屋さんの勤務を終えることができました。
今回のスキマバイトもいろいろ興味深かった! これだけ飲食業界が人手不足なら、僕のスキマバイト稼業も当分、安泰なのではないかと思います。それがいいことなのか、悪いことなのかはわかりませんが……。
みやーんZZ
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