( 286464 ) 2025/04/27 05:47:29 1 00 コールド・ストーンは歌うスタッフという独自のサービスで一大ブームとなり、全国に店舗が広がったが、ブームが下火となり現在は国内で3店舗のみ営業している。 |
( 286466 ) 2025/04/27 05:47:29 0 00 一大ブームとなったコールド・ストーン。その名を久しく聞いてなかったが、まさかの閉店。これを機に足を運んでみた(筆者撮影)
■コールド・ストーン、もうすぐ残り1店舗に
コールド・ストーンの原宿店が閉店するらしい――3月末、そんなニュースが飛び込んできた。
客前でマイナス9度に冷えた御影石の上で具材と混ぜ合わせるアイスクリームの専門店、「コールド・ストーン・クリーマリー」(以下、コールド・ストーン)。混ぜ合わせる際、スタッフが歌うことでも話題を呼んだ。
2005年に東京・六本木に日本1号店がオープンすると「歌うアイス屋」としてたちまちブームとなり、店は大行列。全国に店舗が増え、最盛期は34店舗あったという。
あれから約15年――ブームは下火となり、2025年4月現在、国内で営業しているのは3店舗。4月28日には都内の原宿店が、5月6日には栃木県の佐野プレミアム・アウトレット店がそれぞれ閉店し、残るは三重県の三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島店の1店舗のみになるというのだ。
【画像14枚】“歌うアイス屋”として大ブレイクした「コールド・ストーン」。現在のメニューや内観はこんな感じ
もう気軽にコールド・ストーンが食べられなくなる。その前に、筆者は閉店予定の原宿店に行ってみた。
原宿店は2023年6月オープンと、意外にも歴史は浅い。コールド・ストーンは全盛期から徐々に店舗を減らし一時は都心から撤退していたものの、新たにスイーツの聖地である原宿に旗艦店としてオープンしたばかりだった。2年弱で撤退となってしまったが。
■まさかの大行列に仰天!
しかし、店前に行くと目を疑う光景が……。
見ると、驚くほど多くの人が並んでいた。店前に人があふれ、道を挟んでその先の道沿いにまで見渡す限りの行列が。筆者が訪れたのは土曜日の昼下がり。加えて、ちょうどその日は気温が高かった日で、まさに「アイス日和」だった。
行列は30mほど続いていた。「閉店するというくらいだから混んではいないだろう」と見くびっていた筆者は腰を抜かし、「これは並べない」と諦めて出直すことにした。
並んでいるのは閉店の報を受けて最後の食べ納めに訪れた人だろうか。コールド・ストーンが多くの人に愛されているのを感じたが、普段からこの人気なら閉店にはならなかったはずだ。筆者含め「閉店」と聞いてここぞと駆けつける現金な人たちである。
■歌パフォーマンスは健在
土曜はあえなく諦めたが、その次の月曜の午前中に再訪した。平日の朝から原宿でアイスを食べる酔狂な人はいない――無事その読みは当たり、土曜に見た光景とは一転、客はまばらな状況で、すぐに注文することができた。
スタッフに「土曜は行列がすごかったですね」と声をかけると「私たちもびっくりしました。1時間半待ったお客様もいるようです」とのことだった。
閉店キャンペーン「グランドフィナーレ スペシャルメニュー」のひとつ、「フィナーレショートケーキセレナーデ」(税込み842円)を注文した。
「歌うアイス屋」は健在だ。注文を終え、指定した具材を石の上へと置くと、混ぜ手のスタッフがヘラをカンカンと打ち鳴らしたのを合図に、店にいるスタッフ全員が手拍子を交えて歌ってくれた。
同店はパフォーマンスだけでなく味にもこだわっている。店内で生乳からアイスクリームの製造を行っているそうで、つくりたての美味しさが身上だ。
イチゴやバナナなどのフルーツやふわっとしたスポンジ生地、サクサクのワッフルコーンなど様々な食感の具材が混ざり合っており、一口ごとに表情が変わり最後まで美味しく食べられた。
■閉店の理由は「歌が恥ずかしいから」?
コールド・ストーンはアメリカ・アリゾナ州で1988年に創業。日本上陸を手掛けたのは、ファミリーマートやファーストリテイリングの経営に携わり、「クリスピー・クリーム・ドーナツ」の日本上陸も手掛けた澤田貴司氏の投資ファンドのキアコン(現リヴァンプ)だ。
2014年には「銀だこ」などを展開するホットランドが買収。その目的は、同社が展開するたい焼き店「銀のあん」の季節偏重を補うため。たい焼きという商品の特性上、どうしても夏期に売上が落ちるので夏によく売れるアイスクリームでその補完をしたい狙いだった。
同社が得意とするショッピングモールを中心に店舗を展開していたが、この度、1店舗を残して撤退に。ホットランドはその理由を「非公開」としている。
ネット上では撤退の理由について様々な意見が出ている。特に多いのが「恥ずかしがり屋の日本人に歌のパフォーマンスがなじまない」ということだ。
筆者が訪れた際、スタッフは1人で来ているお客には「歌ってもよろしいですか?」と聞くなど、状況に応じたサービスを行っていた。お客が拒否すれば歌をキャンセルすることもできる。ただ、それはそれで少し気まずい。人手不足の昨今、歌うことに抵抗がないスタッフを採用するのも難儀しそうだ。
それ以外にも「派手なパフォーマンスに飽きた」という声も多い。それも正しいだろう。しかし、派手なパフォーマンスでブームを巻き起こしても、その後も長く息の続いているブランドもある。
そこで、コールド・ストーン原宿店の至近に店舗がある「ロールアイスクリームファクトリー」の話をしたい。
■競合のロールアイスは今も順調?
1回目の訪問ではあまりの大行列にコールド・ストーンを諦めたものの、完全にアイスの口になっていた筆者は、すぐ近くに「ロールアイスクリームファクトリー」の原宿・表参道店があるのを発見した。
ロールアイスは、コールド・ストーンよろしく冷えた鉄板の上にアイス液を薄く流し、ヘラでロール状に削ってつくるアイスクリーム専門店だ。
2017年に創業し、かつてあった原宿・表参道本店では大行列に。歌は歌わないが、目の前でくるくるとアイスが削られていくライブ感あるパフォーマンスは多くの人の心をつかんだ。
現在、HPによると全国に8店舗。明らかにコールド・ストーンのビジネスモデルを参考にしているが、こちらはまだまだ健在だ。1店舗を残して閉店となるコールド・ストーンとの違いは何なのだろうか?
ロールアイスの店前に行くと、コールド・ストーンほどではないが列ができていた。並んでいた人の中には、筆者同様にコールド・ストーンを諦めたアイス難民もいるのかもしれない。
やや混雑していた店内では並び始めてからアイスを受け取るまで約45分。アイスの価格は850円。価格帯はコールド・ストーンと同程度である。
アイス液は着色料や香料がかなり感じられ、トッピング等も既製品が多い。薄くロール状になったアイスは独自の食感で美味しいが、筆者の個人的な好みだが正直に言うと純粋に味の面ではコールド・ストーンに軍配が上がる。
ロールアイスも創業から8年。全盛期は7時間の行列になることもあったというが、やはりブームは鎮火しつつある。なのに、いまだに展開を続けていられるのは何故か。実はロールアイスはアニメなどのコラボに力を入れている。
筆者が訪れた際も「ヒプノシスマイク」とのコラボキャンペーンを行っていた。これまでも「呪術廻線」や「進撃の巨人」、「ウマ娘」や「アイドルマスター」などビッグタイトルとのコラボ実績がある。
さらに抜け目ないのは、運営会社トレンドファクトリーのHPにあるオンラインショップをのぞくとコラボグッズがずらりと並ぶ。同ブランドは単なるアイス屋ではなくキャラクターグッズの物販も手掛けており、昨今盛り上がる「推し活」ニーズをとらえたIP事業を行っているのだ。
ロールアイスというコンテンツ自体に飽きがきても、常に何かしらのイベントを打ち出すことで話題を提供し続けており、これが同ブランドが続く要因になっているのだろう。
■飲食店に行かなくなる理由は「店の存在を忘れること」
お客がある飲食店に行かなくなる理由は、その店に不満を持ったからよりも、「その店の存在を忘れてしまったから」が圧倒的に多いと言われている。
そうしたことを踏まえ、例えば「肉汁餃子のダンダダン」もアニメやマンガとのコラボに積極的だ。「串カツ田中」も、過去には居酒屋の中で先陣を切って禁煙を打ち出すなど、常に何かしらのインパクトある施策やイベントを企画し続けている。
どんなに魅力的な業態でも、時間が経てばどうしても陳腐化してしまうし、類似業態の競合も出てくる。だからこそ外食企業は消費者に忘れられないための努力を続けている。
コールド・ストーンはこうしたコラボやキャンペーンをやっていないわけではないが、近年、その頻度は減っており、消費者に大きなインパクトを残せていなかったのかもしれない。
そんな中、「1店舗を残して国内はすべて閉店」という“大きなイベント”を打ち出したところ、長蛇の列となってしまった。それよりも前に人々に思い出されるイベントを提供できればよかったのだが……。
アイスの味は美味しいので、また身近な店舗で味わえる日が来ることを願っている。
【もっと読む】《ブームから10年》「一流シェフの料理を立食で安く食べる」で一世を風靡した「俺のフレンチ」。最新店舗を訪れて知った意外すぎる“現在の姿” では、かつて大ブームとなった「俺の〜」の現在について、外食ニュースサイト「フードスタジアム」編集長の大関まなみ氏が豊富な写真とともに解説している。
大関 まなみ :フードスタジアム編集長/飲食トレンドを発信する人
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