( 286914 )  2025/04/29 04:20:26  
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子育てケアマネとは、妊娠期から育児期まで家庭をサポートする専門家の導入を提唱する取り組みがあり、支持も議論もある。

賛成派は、予防的な支援で家庭に必要な情報やアドバイスを提供する必要性を主張する一方、反対意見もあり、全家庭に導入すれば適切なサービス提供が難しくなると懸念する声もある。

(要約)

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子育てケアマネ 

 

 三原じゅん子こども政策担当大臣が、5月5日のこどもの日から1週間を「こどもまんなか児童福祉週間」として、社会全体で子育てを支える機運を醸成したいとの意気込みを語った。そんな中、議論になっている支援策が「子育てケアマネ」だ。 

 

 提唱した団体によると、子育てケアマネとは妊娠初期から産後、育児までサポートに精通した専門家による継ぎ目のない伴走型支援を指し、全ての家庭に実施するものだという。先日行われた集会には国会議員も出席し、一部議員からは「3年以内の実現を目指す」との声もあった。 

 

 しかしSNS上では「人手は確保できるのか。本当に全家庭が必要とするのか」「子育て世帯の負担が増えそう」「全家庭が求めるのは所得制限撤廃や年少扶養控除の復活だ」といった疑問や懸念の声が出ている。『ABEMA Prime』では、子育てケアマネとは、どんなものなのか。そして現実的なのかについて、提唱した団体の共同代表と考えた。 

 

榊原智子氏 

 

 子育てケアマネとは、妊娠期から出産·育児の長い道に寄り添い、必要な助言と情報を提供する存在だ。家庭ごとにあった支援につなぎ、既存の制度を「使いこなせる」よう支援することで、困りきってから相談するのではなく、困らないように先回りする目的がある。 

 

 「子どもと家族のための政策提言プロジェクト」の榊原智子共同代表は、「妊産婦に1対1で伴走して、相談支援を行える専門家のイメージだ。介護保険のケアマネジャーは、必要となった高齢者全員に無料でつく。フィンランドには妊娠期から助産師や保健師がつくことで、トラブルを未然に防ぎ、子育てを安心して始められるシステムがある。日本にも必要なのではないか」と、その意図を説明する。 

 

 導入に向けた背景として、「核家族化や離婚・再婚、結婚前の妊娠は、他の先進国と同じように増えている。しかし日本では、妊娠・出産に保険適用されず、個人の責任にされている。年間70万人も子どもが生まれない少子化の国だが、毎年12万件ほどの中絶があり、その人に対して誰もカウンセリングしていない」と語る。そして、フィンランドのように、「妊産婦のケアから始まり、産まれたら母と子の家庭について行く」スタイルを提案する。 

 

 具体的な支援策としては、どのようなものを考えているのか。「経済的や身体的、メンタルや夫婦関係のような悩み相談に、早めに乗って、必要な専門支援につなぐ。日本では困っても情報を自分で探す必要があり、その間に諦めてしまい、問題がこじれる。それを未然に防ぐ人をつける必要がある」。 

 

 

高祖常子氏 

 

 児童虐待防止全国ネットワーク副理事長の高祖常子氏は、「子育てサービスは、『何を使えばいいのか』『そもそも何が使えるのか』も、自分で調べて申請する必要がある。自分で調べる気力のない人は、“申請主義”の中ではサービスを使えない」と現状を嘆く。 

 

 そこで、子育てケアマネの導入によって、「使えるサービスを提案してくれたり、書類の書き方を教えてくれたりする。そんな専門職の伴走者が、毎回変わらずに顔が見える状態で、全家庭にいるといい」と期待を込める。 

 

 現状でも「特定妊婦のように大変な家庭にはケアが進んでいる」というが、「私も妊娠·出産を経験したが、初めての時は全員が特定妊婦ぐらいの感じのため、全員が使えるっていることがすごく大事だ」と語った。 

 

原紘志氏 

 

 一方で「全家庭」にケアマネは不要だと考えているのが、精神科医の原紘志氏だ。全家庭にすると“薄く広く”になり、重度の障害児を抱える家庭などのハイリスクに目が行きにくくなると懸念する。まずはこうしたところを手厚くすべきで、困窮しているところにチームが関わるなどのケアをするべきとの考え方を持っている。 

 

 障害児やその親をケアする立場から、「現状はセルフケアのプランを、両親が話し合って決めていて、ケアの分担は家庭の問題だ。直ちにヘルパーが必要か、保育所に入らないと危ういという状況でなければ、8割方の人たちは両親のセルフケアで成り立っている。そこにケアマネジャーが入っても、紹介できるサービスがない状況になる」と話す。 

 

 高齢者の場合には、ホームヘルパーやショートステイ、ケアハウス、サービス付き高齢者向け住宅などがある。「高齢者のケアマネジャーは、こうしたサービスを組み合わせて、スケジュールを立てる。しかし子育ての時間はどう使うかとなると、ケアマネジャーに相談する時間こそがもったいないとなりかねない。それよりは、まず知的障害や精神障害を重点的にしてほしい。障害児の所得制限も足りていない」。 

 

 この指摘に榊原氏は、「日本では『子どもの支援は家族が責任を持ち、困った人を支援する』のが基本だ。しかし、それにより虐待の相談件数は増え続け、中絶も多い現状がある。社会的支援があったら産むことができた人へのサポートも届かない。一方で“赤ちゃんポスト”には相談が殺到している」と反論する。 

 

 日本の基本方針について、フィンランドで話したところ、「『必要なときに支援する』と言っても、必要になった人をどうやって見つけるのか。手遅れで重度になって、フォローが大変になってから、ようやく社会的支援が届く。私たちは軽度なリスクから支援するため、その後にフォローするコストが安く済んでいる」と言われたという。 

 

 例として「親子が分離して施設に入る場合、乳児期から入った子どもは、成人までに1億円がかかる。分離しない支援が、実は節税になると、フィンランドやニュージーランドでは説明される」と挙げつつ、「日本では高齢者にしていて、子どもにやれないはずがない。そうしたメッセージを込めて、『ケアマネ』という言葉を使っている」と述べた。 

 

(『ABEMA Prime』より) 

 

ABEMA TIMES編集部 

 

 

 
 

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