( 287284 )  2025/04/30 06:42:33  
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大阪市内のスーパーではコメが品薄状態で価格も高止まりしている。

農水省は3回目の備蓄米の入札を開始し、コメ価格の高騰に影響するか注目されている。

JA全農が購入した備蓄米の出荷済みは約24%で、消費者に届くまでに時間がかかる。

政府が3回目の備蓄米放出に踏み切り、新ルールで卸売業者同士の取引が可能になる。

輸入米も流通が増えており、価格安定につながるか意見が分かれている。

いずれにせよ、国産米の増産が重要視されており、減反政策の改善を訴える声もある。

(要約)

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大阪市内のスーパー(15日) 

 

コメ不足の“救世主”と言われる備蓄米。すでに2回放出されるも、スーパーのコメはいまだ品薄状態。価格も依然、高止まりしたままです。こうした中、農水省は先週、3回目の備蓄米の入札を開始しました。今回の放出で、コメ価格の高騰にブレーキはかかるのでしょうか。元農水官僚でキヤノングローバル戦略研究所・山下一仁研究主任が解説します。 

 

頼りの備蓄米はいつ食卓に? 

 

 農林水産省によりますと、全国のスーパーの米の平均販売価格(5kg)、今月14日から今月20日で4220円となっています。1年前と比較すると2倍以上の価格です。 

 

 備蓄米は店頭に並んでいるのでしょうか。1回目の備蓄米放出は3月中旬でしたが、3月30日時点で、集荷業者に届いている備蓄米はわずか4071t(全体の3%)。小売店には461t(全体の0.3%)しか届いていません。 

 

出荷済みは約24%にとどまる 

 

 政府が放出した備蓄米1回目と2回目あわせて21万tのうち、約9割の20万tを購入しているのがJA全農です。JA全農では4月24日時点で、販売先からの出荷依頼があったのは約13万t(約66%)ですが、実際に出荷済みとなっているのは約5万t(約24%)にとどまっていいます 

 

スーパーなどにいつ届く? 

 

 備蓄米の放出から1カ月以上経っていますが、消費者の手元にはいつ届くのでしょうか。そもそも、JAなど集荷業者から事務手続きやトラックの手配などにより、卸売業者に届くのは約2~3週間かかります。その卸売業者でも、検品などの作業を経て、小売店に全量売り渡すのは6月以降になる見通しということです。 

 

(Q時間がかかることを政府は想定していなかった?) 

山下氏:想定していたと思います。しかし問題なのは、「なぜJAなどの集荷業者に売ったのか」という点です。卸売業者の方が小売店・消費者に近いです。集荷業者に売ったため、時間がかかってしまっているわけです。 

 

(QなぜJAの集荷業者に売った?) 

山下氏:JAは備蓄米放出に反対していました。そういった団体に備蓄米を放置すると、確かに備蓄米自体は卸売業者に21万tいきます。しかし、今までJAが卸売業者に売っていた分を“差し替える”可能性があります。つまり、全体の供給量は約21万t増えない可能性があるわけです。そうすると、全体の米価はそれほど下がらない。農林水産省はこういったことを見越していたと思います。つまり農水省は「備蓄米を放出で、米価を下げたくなかった」ということです。 

 

 

3回目の放出には“新ルール” 

 

 政府は、3回目の備蓄米放出に踏み切ることになりました。3回目の入札は、2023年産のコメ10万tです。農林水産省は、7月まで毎月10万tの備蓄米を放出するということです。 

 

 3回目からは、過去に実績のある卸売業者同士で取引することが可能になりました。ただし、「転売による収益などを目的としないこと」が条件。これによって、取引先の偏りを改善したいということです。これまでJAと取引のある業者に限られていたものが、街中のスーパーにも備蓄米が届いていくと期待されていますが、価格の安定につながるのでしょうか。 

 

コメの価格安定につながるのか? 

 

 山下氏は「流通コストがかかるので、価格はむしろ上がるのでは」と指摘します。そのうえで、「政府から卸売業者などに直接売れば、早く消費者に届く」としています。 

 

 一方で、宇都宮大学農学部の松平尚也助教授は、「ルール緩和で小規模店などにも備蓄米が広く出回ることで、価格の下げ材料になる」と述べています。 

 

流通増す輸入米 

 

 こうした中、輸入米の流通が増えています。総合商社の兼松は、今年12月までにアメリカ産を中心に2万tを民間輸入し、今後も国内需要に応じ輸入量を増やす可能性があるということです。また担当者によると、「価格の高騰米不足を背景に、外食を中心とする取引先からの要望が多かったため、外国米の輸入を増やした」ということです。また、小売店や外食産業などでも広がっています。 

 

輸入米はコメの価格安定につながるのか? 

 

 では輸入米の需要も増えてきた中で、今後、コメの価格はどうなっていくのでしょうか。山下氏は「輸入米を増やすとダイレクトに消費者に届くし、価格を下げる効果にもなるのでもっと輸入すべき。そして国産米は増やすべき」としています。 

 

 一方で、松平助教授は「もう少し待てば、備蓄米が出回り価格も下がってくる可能性があるのに、輸入米を今から増やすというのはちょっと違うのではないか。まずは、国産米を安定させるべき」としています。 

 

解決策は「国産米を増やす」 

 

 コメの価格安定の解決策について、「国産米を増やす」という点では両者の意見が一致しています。さらに山下氏は「農家の所得補償は直接支払いにすべき。“事実上の減反政策”の廃止を」と訴えます。 

 

 減反について詳しく見ていきます。減反政策とは、国がコメの過剰生産を抑制し、価格の下落を防ぐための政策です。コメから転作した農家に対し、政府から補助金が出ていました。この減反政策は2018年に廃止されました。 

 

しかし、山下氏によると「実際は、農水省が“適正生産量”を決定し、生産者に通知している。つまり“適正生産量”がある限り、コメの生産を増やせない。また、飼育用米や麦などへの転作補助金は拡充されている。事実上、減反政策は廃止されていない」と指摘します。 

 

キヤノングローバル戦略研究所・山下一仁研究主任 

 

山下氏:転作補助金は年間3500億円使っています。これをやめれば3500億円浮きますし、コメの価格が下がる。また、農業だけで生きている主要農家に限って直接支払いをすれば、年間1500億円ですみます。主要農家に農地が集積していけば、規模を拡大するコストが下がり、また米価が下がる。これはアメリカやEUで導入されていて、消費者にとってもメリットがある政策です。 

 

 つまり、「コメの価格は下がっても、下がった分は農家に直接補償して、コメを増産していくべき」ということです。 

 

(『newsおかえり』2025年4月28日放送分より) 

 

 

 
 

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