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トランプ政権誕生から100日余りで、関税政策が世界を揺るがしている。

アメリカの人々の評価は分かれており、中西部やワシントンDCでの報道では、農家の生活への影響や支持者の意見、中国製品への関税措置に対する反応などが伝えられている。

企業や一般市民にも影響を及ぼすこの政策に対する様々な意見が述べられている。

(要約)

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トランプ政権誕生から100日余り、その関税政策は世界を揺るがしています。アメリカの人々はトランプ氏の政策をどう評価しているのか、中西部やワシントンDCで取材しました。 

 

■「働いても働いても…」関税政策にアメリカの農家は 

 

4月30日、アメリカに到着した赤沢経済再生担当大臣。トランプ大統領が日本に課すとした関税に対し、赤沢大臣はアメリカ産の大豆やトウモロコシの輸入拡大などをカードに、2度目の日米交渉に臨んだ。 

 

赤沢亮正 経済再生担当大臣 

「国益を害するような交渉をする気は全くありませんので、しっかり守るべきものは守り、言うべきことは言う」 

 

関税交渉の行方を注視している人がいる。アメリカ中西部・オハイオ州の農家、リック・ショイヤーさん(68)。大豆とトウモロコシを作っている。 

 

アメリカ産大豆は、最大の輸出国が中国で、その割合は5割を超える。ショイヤーさんは、影響を懸念する。 

 

リック・ショイヤーさん 

「どうやって乗り越えるか考えるしかありません。日本が輸入してくれるといいのですが。それか、別の国でも」 

 

ここ2〜3年、穀物の市場価格の低下に苦しんできた。関税が課され、機械や燃料などのコストも上がる可能性がある。 

 

――今この価格では暮らせない? 

 

リック・ショイヤーさん 

「私たちは稼げていません。機械や肥料、種などの費用を考えると、ほとんど利益がでません。働いても働いても、どうにもならないのです」 

 

――関税政策に反対ですか?賛成ですか? 

「まだ評価できません。関税が上手くいくなら賛成です。でも、上手くいかないなら反対です」 

 

■トランプ大統領就任100日 集会は「自画自賛の嵐」 

 

4月29日、トランプ大統領の支持者たちがミシガン州に集まった。就任100日を祝う演説集会が開かれた。 

 

トランプ大統領 

「我々が今夜ここに集まったのは、わが国の歴史で最も成功した政権発足100日を祝うためだ」 

「中国への関税で史上最大の雇用略奪に終止符を打つ」 

 

 

トランプ氏が強調したのは関税政策や不法移民対策など、これまでの“成果”だ。 

 

村瀬キャスター 

「まさに自画自賛の嵐という感じなんですけど、ご覧ください。このように座席の方はかなり空席が目立つような感じなんです」 

 

参加した支持者は… 

 

――トランプ大統領はどの問題で最善を尽くしている? 

 

トランプ支持の男性 

「国境政策です。バイデン政権時は、犯罪者でも入ってくることができました。国境を封鎖した彼は素晴らしいです」 

 

トランプ支持の女性 

「アメリカ製品を買うわ。実を言うとベンツに乗ってます。それが唯一持っている外国製品です」  

――その帽子やTシャツは外国製では 

「アメリカ製よ」 

――本当に? 

「アメリカ製よ…あら中国製だ。誤解でした。事実を確認しないとね」 

 

■「タリフ(塔里夫)」ロボットが登場する動画とは 

 

トランプ大統領が特に圧力をかける相手が中国だ。報復合戦がエスカレートした結果、145%という異常な関税率に至っている。 

 

中国では、アメリカの関税措置を皮肉る動画が次々と公表されている。 

 

国営新華社通信の公式SNSより 

「積極的な関税措置を実施します」 

 

中国の国営通信がAIで作成した動画には英語で関税を意味する「タリフ(塔里夫)」と名付けられたロボットが登場する。アメリカのために輸入品に関税を課すよう命じられたものの、かえって生活費や失業率の上昇を招く結果となり、タリフは最後、自爆する。 

 

4月29日には、中国外務省も「跪かない」と題した異例の批判動画をSNSに公開した。 

 

■「長引くと地球規模でひどい被害」米中企業に聞いた 

 

アメリカ・ミシガン州で4月29日に開催された企業展示会。講演していたのは、人工衛星から携帯電話まであらゆる電子機器の製造を支える巨大メーカー、アメリカンエレメンツのCEOだ。 

 

――あなたのビジネスにとって、中国は非常に重要な要素でしょうか? 

 

アメリカンエレメンツCEO マイケル・シルバー氏 

「はい、中国からしか入手できない原料があります。また、他の原料も中国のコントロール下にあって、我が社や世界中の企業に対しその価格を決められるのです。中国とは協力せざるを得ません。トランプ氏は中国とポーカーをやって、誰が最初に言うことを聞くか見届けようとしているのです。短期的に見れば問題はなくとも長引くと地球規模でひどい被害がでます」 

 

 

出展している中国企業に聞いた。 

 

中国企業 

「これは戦車などにも使われている、防弾用のシリコンカーバイドです。とても頑丈ですよ。ハンマーを使っても、おそらく壊すことはできません。145%の関税なんて、なくなりますよ」 

 

家電の部品を中国で製造し、輸出しているという別の会社は、関税の影響で、出荷が一部キャンセルになったという。 

 

――それは大きな損害でしたね? 

中国企業 

「ええ。なので今、新しい注文には、全額前払いをお願いしています。通常通り進めると、損失が出るかもしれませんから」 

 

――とてもお気の毒です。 

「大丈夫。こういうこともありますから」 

 

――生き残れますか? 

「そう思います。アメリカでのビジネスは、私たちにとってそう大きくありませんから」 

 

■アメリカ市民の生活に浸透する中国製品 

 

中国製品はアメリカの一般市民の生活にも浸透している。ワシントンに暮らす、イギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」の元記者、ダンさん。 

 

――これは計量器ですね 

フィナンシャル・タイムズ元記者 ナンシー・ダンさん(82) 

「ええ。どこ製か分からないけど…中国製ですね。これはどこのかしら。ニョッキだけどカリフラワーでできています」 

 

――イタリア産じゃないですか? 

「そうね。でも、普段こういうの、あまり気に掛けませんよね」 

 

食品をはじめ、日常生活で使うほとんどのものをネットで購入しているという。特にお気に入りは、中国発の格安インターネット通販「Temu」だ。 

 

――Temuで最後に買い物したのはいつですか? 

ナンシー・ダンさん 

「昨晩です。10ドル以上は買いません。梱包を開けるだけでも、毎日がクリスマスのようです」 

 

クローゼットをみせてもらうと… 

 

――すごい。洋服がたくさん 

ナンシー・ダンさん 

「そうです。Temuのドレスに、Temuのブラウス、これも。これも。すべてが安い。私が一番はく靴はここにあります。お気に入りで、ほとんどTemuで購入しました。ここにある靴下は、5足で2〜3ドルです」 

 

 

その一方で、届いた箱を開けると商品が入っていなかったことも。 

 

ナンシー・ダンさん 

「商品の中にはガラクタもあります。でも、すごく安いし、他の商品で節約できるから、気になりません」 

 

「Temu」も関税の影響で、アメリカ向けの商品が一部値上がりしたと報じられている。 

 

ナンシー・ダンさん 

「品質が信用できないのに、値段だけ高くなるリスクは負えません」 

 

貿易に関する取材をしていたというダンさんは、この関税政策をどう感じているのか。 

 

ナンシー・ダンさん 

「バカげてると思う。驚くほどバカげています。関税は突然なくしたり、かけたりするものではありません。世界各国がついていけるよう政策はゆっくり進めるべきです」 

 

■「狂ってると思います」影響は教育現場にも 

 

関税政策の影響は、教育現場にも及んでいる。この楽器店では、学校の子供たちに楽器の貸し出しも行っている。 

 

楽器店オーナー ケビン・ランディスさん  

「最近は、レンタルされる楽器のほとんどが中国製です。中国は、質が良くて価格も手ごろな学生向けのバイオリンやチェロを作っていて、この分野ではほぼ独占状態なんです」 

 

関税政策は、子供たちから音楽を学ぶ機会を奪うことにも繋がると話す。 

 

ケビン・ランディスさん 

「特に中国に対する関税は、実態は禁輸を意味します。『中国からの商品はすべて出荷停止になった』と毎日のように仕入れ先からメールが来ます」 

 

――この関税政策に合理性はあるんですか? 

「いいえ、狂ってると思います。何のためにやってるのか、理解できません。共和党でも民主党でも、この政策を本当にいいと思っている人は、ほとんどいないと思います」 

 

一方で、トランプ氏を支持する人の大半は、関税政策を肯定的に捉えている。自転車店で働くダニエルズさん。店内にあるほとんどの商品が、海外で作られているというが… 

 

トランプ氏を支持 ダイアナ・ダニエルズさん 

「私もマネージャーも動揺していません。多少の打撃を受けるのは分かっています」 

 

関税政策は、長期的にはアメリカの利益に繋がるとダニエルズさんは話す。 

 

ダイアナ・ダニエルズさん 

「製造業がアメリカに戻るでしょう。今、高い関税の国に拠点がある企業がアメリカに戻ってくるのであれば、それは成功と言えます。共産国製でなくアメリカ製であれば、多少高くてもお金を払うと思います。もう世界の面倒は見ません。自分たちを優先すべきです。それが“アメリカ・ファースト”です。横暴だと思われてもかまいません」 

 

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