( 289094 )  2025/05/07 06:38:00  
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新NISAの普及に伴い、S&P500などのインデックス投資が注目を集めている。

しかし、大口投資家であるヘム氏は、S&P500に積立投資することは最適とされる風潮に警鐘を鳴らしている。

インデックス投資は手間をかけず市場平均を狙える投資手法として魅力的だが、過去10年は米国株が好調であったが、今後のイノベーションや為替リスクを考慮する必要がある。

ヘム氏は個別株投資に信頼を置き、市場平均を上回る可能性が高いと主張している。

(要約)

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「S&P500への積立投資」には注意したい点もあるという(写真:イメージマート) 

 

 新NISAブームに伴い、各国の株式市場に効率よく分散投資できる「インデックス投資」が注目を集めている。中でもアメリカの株式市場を対象とするS&P500のインデックス投資は、直近10年のパフォーマンスも良く、メディアなどでも取り上げられる機会は多い。 

 

 その一方で、S&P500への積立投資が「投資の最適解」のように言われている風潮に警鐘を鳴らすのは、現在は資産4億円超の投資家兼会社経営者のヘム氏だ。ヘム氏の著書『「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!』(KADOKAWA)より、一部抜粋・再構成して、インデックス投資の魅力と合わせて知っておきたい落とし穴について紹介する。 

 

 日本では、低金利環境が続き、銀行預金の利息がほとんど増えないため、資産運用の手段として株式や投資信託への関心が高まっています。さらに、老後の年金問題や新NISAの登場により、株式市場はますます盛り上がりを見せています。 

 

 そんな中で、まずは最近の流行りであるインデックス投資について、私の見解を述べておきます。 

 

 インデックスとは日経平均株価やTOPIX、NYダウ、S&P500といった各国の株式市場の動きを表す指数です。その指数に連動して、リターンを目指す投資をインデックス投資といいます。 

 

 私は、投資初心者や銘柄分析に時間をかけたくないという人にとって、インデックス投資は低コストで市場平均を狙える最適解の投資だと思います。 

 

 日本市場への参加者は8割がプロ(機関投資家や銀行や証券会社等)、個人投資家のプロ級を合わせると約9割がプロだと考えられます。参加者のほとんどがプロということは、言い換えれば、市場平均はプロの売り買いの結果の平均値とも考えられます。 

 

 ここで少し考えてみてください。 

 

 素人の個人投資家が、9割がプロの世界に参戦して簡単に及第点を取れると思いますか? 

 

 どう考えても、無理でしょう。 

 

 それがインデックス投資なら可能なのです。たとえるなら、普通の学生10人が、東大生が90人もいるクラスでテストを受けても、平均点が取れるようなイメージです。 

 

 私はインデックス投資について「信じられないほどお得なシステム!」だと思っています。投資初心者や銘柄選定に時間をかけたくない人にはインデックス投資をおすすめします。 

 

 

 インデックス投資で過去10年くらいの成績を見ると米国株が圧倒的に好成績でした。現在、広く読まれている投資本やSNS等を見るとS&P500への積み立て投資が「投資の最適解」のように言われています。 

 

 しかし、私はこの考えは非常に危険だと思います。米国株のここ10年の躍進は、その大部分がGAFAM(グーグル、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフト)といった巨大IT企業のイノベーションに支えられていた一面があります。 

 

 このイノベーションが今後も起き続けるという前提に立たないと説明できないほど米国株は現在、割高になっているように思えます。日本株と比較しても、かなり割高な水準です。 

 

 そのうえ、米国株投資では為替リスクも見逃せません。今の為替水準は購買力平価やマネタリーベースから見ても円安すぎる水準です。今後の為替レートを予想するのは難しいですが、円高リスクを無視することはできません。 

 

 松井証券のレポートによると、2024年10月中下旬のS&P500のPERは24倍です。一般的にフェアバリューと呼ばれているPER(株価収益率)15倍に水準が訂正されると株価は約37.5%下落します。 

 

 ドル円の為替についてもIMF(国際通貨基金)のデータに基づく直近の購買力平価では1米ドル=90円前後と計算されます。現在(2024/11/1)の為替は1米ドル=153円前後で、購買力平価からは41%も円安に振れています。 

 

 今からの投資人生が30年あるとしましょう。 

 

 その間に○○ショックが10回くらいは来る可能性が高く、どこかでリーマンショックやコロナショックのようなものが来るでしょう。 

 

 2000年以降で私が経験した主な暴落と下落相場を別掲図にまとめています。25年間で12回、約2年に1回○○ショックと呼ばれるような暴落や下落相場があったことになります。 

 

 次にリーマンショックやコロナショック級の暴落が来た時に、FRB(連邦準備制度理事会/米国の中央銀行制度の最高意思決定機関)はどうしますか? 金利を0近辺まで下げる可能性が高いでしょう。 

 

 そうなると日米の金利差はなくなり、為替は購買力平価に近づいていくと予想されます。 

 

 将来、S&P500が30%下落して、為替が30%円高に振れればS&P500の円建て価格はあっという間に半値です。先ほど述べたようにS&P500がフェアバリューと言われるPER15倍に水準訂正されると約37.5%の下落、為替が購買力平価により決定されるレートに収束すると41%の円高(執筆時点 2024/11/1の為替レート1米ドル=約153円を基準としています)、これを合わせると円建てでは約63%の下落です。 

 

 これはリーマンショック時の日経平均以上の下落率です。リーマンショックで多くの個人投資家が退場したことからも、これほどの下落に耐えられる個人投資家はわずかでしょう。S&P500の積み立て投資を今後も長期で行っていくなら、このようなリスクは頭の中に入れておかねばなりません。 

 

 インデックス投資は優れた投資手法ですが、私の手法はインデックス投資ではなく「日本の個別株投資」です。では、私がなぜ個別株投資を行い、皆さんにもおすすめするのかというと、私の個別株投資手法であれば「高い確率で市場平均に勝つ」ことをデータ的に示すことが可能だからです。 

 

※ヘム・著『「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!』を元に一部抜粋して再構成。なおトランプ関税に振り回される今の株式市場でヘム氏が注目する具体的な個別銘柄については、関連記事の最新インタビュー『《億り人が選ぶトランプ関税の影響を受けにくい5銘柄》資産4億円超のヘムさんが厳選した東証スタンダード上場のお宝株、内需で稼ぐ小型割安株を狙い撃ち!』にて、紹介している。 

 

【PROFILE】 

ヘム/京都大学卒業後、総合商社に入社。社会人1年目より投資を始め投資歴は27年になる。30歳で脱サラをして起業。現在も2社を経営する投資家兼会社経営者。392銘柄保有中、投資時価4.1億円(2025年3月31日時点)。個別銘柄分析&ポートフォリオ構成銘柄&成績をXで公開したところ、アカウント開設後、1年半でフォロワーが3万人突破。データを重視した投資手法で、その再現性の高さから、投資初心者から玄人まで幅広い支持を得ている。最新刊は『「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!』(KADOKAWA)。 

 

 

 
 

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