( 290179 )  2025/05/11 06:28:42  
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モスバーガーの「新とびきりバーガー」シリーズが人気で、ハンバーガーの価格が高級化していることが報じられている。

以前に比べて価格が高いハンバーガーが好調に売れており、消費者の金銭感覚も変化してきていると指摘されている。

それに伴い、ハンバーガーをはじめとする外食の価格も上昇しており、日本の外食は他の国に比べて安いという認識が広がっている。

(要約)

( 290181 )  2025/05/11 06:28:42  
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モスバーガーの「新とびきりバーガー」シリーズが売れ行き好調(プレスリリースより) 

 

 かつてデフレの象徴とされていたハンバーガーの価格に異変が起こっている。マクドナルドこそハンバーガー単品で190円~となっているが、モスバーガーが提供する「新とびきりバーガー」のシリーズを筆頭に“プチ高級路線”のハンバーガーの売れ行きが好調だと報じられている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が「ハンバーガー700円時代」の金銭感覚について考察する。 

 

 * * * 

 今からは想像もつかないかもしれませんが、2002年にマクドナルドはハンバーガーを59円で提供していました。当時貧乏だった私はこれを10個買って、5食分の食事にしていたほどです。懐かしいですね。現在のハンバーガーの価格は190円~となっています。ただ1980年代は210円だったわけで、今でも当時より安い。これもひとえにマクドナルドの企業努力の賜物だと思います。 

 

 さて、昨今のハンバーガー事情ですが、モスバーガーが2024年3月から発売している「新とびきりバーガー」のシリーズが好調です。「新とびきりチーズ~北海道チーズ~」が690円、「ダブル新とびきりチーズ~北海道チーズ~」が980円と、一昔前なら「牛丼が何杯食べられるんだ!」なんて声があがっていたであろう価格です。それが1年で1700万食を提供するヒットとなっているのです。 

 

 人々はおいしいものにはそれぐらい払うのが当然、といった傾向になっているのでしょう。少し前までは値上げに対する怨嗟の声も多かったですが、だんだんと消費者も物価高を許容するようになってきているように思います。ラーメンについても「1000円の壁」が存在するとされていましたが、昨今の東京の一等地では1280円のラーメンも普通に存在します。ビールを1本つけようものなら2000円になります。 

 

 元々「グルメバーガー」と呼ばれるハンバーガーのジャンルがあり、そうした店ではポテトとドリンクのセットで1500円を超えるほどでした。それが現在は2000円に届くほど。こうしたハンバーガー店と比べれば、モスの690円バーガーは逆に割安感を感じられるかもしれません。 

 

 

 現在、私は佐賀県唐津市で暮らしているのですが、ハンバーガー店がやたらと多い。もっとも有名なのが「からつバーガー」で、唐津の名物として紹介されています。ここではレタスの入ったハンバーガーが420円で、ハムとチーズとレタスと目玉焼きが入ったスペシャルバーガーが660円です。観光客の多くは「せっかくだから」とスペシャルバーガーを注文しているようです。 

 

 フライドポテトは420円でコーラ・ウーロン茶は180円、スペシャルバーガーとこれらを合わせると1260円。ドリンクを佐賀でよく飲まれる生絞りみかんジュース(600円)にすると1680円になります。それでも皆、普通に買って食べていくのです。 

 

 からつバーガーで修行をした人が開いた店なども含め、唐津にはハンバーガー店が数多く存在します。これらの店でも通常のハンバーガーが300円台後半で、色々乗せたものは800円ほどになっています。 

 

 SNSでは、「海外で外食の価格に驚いた!」という投稿をよく見かけます。曰く、ニューヨークでサンドイッチとコーヒーを頼んだら日本円換算で4000円だった……など。それと比べれば日本の外食は安いから許容するか……というのが現在のハンバーガーに対する金銭感覚ではないでしょうか。 

 

 2020年に400円台で食べていた東京の立ち食いソバが今や600円台になっているのを目の当たりにすると、ハンバーガーが700円の壁を越えるのも当然のことなのかもしれません。 

 

 我々日本人もこの手のことは過去に案外多数経験しています。1990年代は鰻重が1800~3200円だった店に今行くと3200~5800円といった状況になっています。シラスウナギの不漁、という事情を理解したうえで「それでも鰻が食べたい!」とその価格を払ってきたわけですね。ハンバーガー700円時代もこれと同様の話で我々は自然と受け入れていくのではないでしょうか。 

 

【プロフィール】 

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。 

 

 

 
 

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