( 291990 )  2025/05/18 06:41:01  
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村上誠一郎総務相は、地方自治の課題とビジョンについて語った。

公務員の人材確保の難しさや給与の課題、自治体の間での経済力の差に触れ、デジタル化や効率化の必要性を指摘した。

将来の人口半減や人材不足を考慮し、地方行政の在り方の変化について模索する必要があると述べた。

自治体間の協力や国会議員数の削減など、地方および国全体の長期的な改革を提唱した。

(要約)

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写真:ダイヤモンド・オンライン 

 

 村上誠一郎総務相は、「県庁は不要」「道州制も不要」と国会で発言して波紋を呼んだ。その真意は何なのか。特集『公務員の危機』の 

 

、村上総務相に、地方自治の課題とビジョンを語ってもらった。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文) 

 

● 人口が半減したとき、1700市町村から成る 地方自治のシステムは行き詰まる 

 

 ――公務員の人材確保が難しくなっています。地方公務員も含めて、給与が民間より少ないという声も聞きます。 

 

 日本の財政が潤沢であれば、もっと(改善)したいと思っています。ところが国と地方合わせて1500兆円近くの借金がある。この財政状況を踏まえると、育児休暇の取得など、共働きで勤めやすいようにするのがいいと思います(国家公務員の人材確保についての詳細は、本特集の 

 

#3 

 

『村上総務相が語る、中央省庁の「忖度文化」を改める秘策とは?“国家中枢の危機”は政治が招いた』参照)。 

 

 ――ダイヤモンド編集部は、ダイヤモンド・オンライン上で、公務員へのアンケートの回答を募集中ですが、これまでに届いている回答を見ると、非正規公務員の問題が教育現場などで深刻になっているようです。 

 

 いろいろ指摘されていますが、給与の面ではずいぶん改善して、ボーナスみたいなものも出るようになりました。具体的には、会計年度任用職員制度を導入した際に、期末手当は出るようになった。さらに法改正をして勤勉手当も支給可能にしており、常勤職員と同様の取り扱いにするよう総務省から言っているところです。 

 

 問題は自治体間で経済力に差があることです。東京都のように潤沢なところはどんどん(正規化や賃上げを)やれるけど、そうはいかない自治体もある。こうした自治体はなんらかの対応が必要になると思っています。 

 

 ――公務員の待遇改善に、国民の理解を得るには、デジタル化を含む仕事の効率化や取捨選択が必要ではないでしょうか。「財務省解体デモ」に見られるように、公務員に対する厳しい目があるのも事実です。そうした中で、「県庁は要らない」「道州制も要らない」と国会で発言され、注目を集めました。 

 

 

● 自治体のマンパワーは限界 地方行政体制は大きく変化する必要がある 

 

 私は、現在の地方行政体制が将来も今と同じ形で可能かどうか考え始める時期にあることを国会で問題提起しました。このままいけば、今世紀末には、日本の人口が半分になってもおかしくはない。特に地方では、生産年齢人口が減少します。となると、1700ある市町村から成る現行のシステムは成り立たなくなります。 

 

 (生産年齢人口が、2020年から40年までの20年間で約1300万人減り、6200万人ほどになると予測されている)「2040年問題」もある。数十年先の話だったとしても、今からどのような仕組みに移行していくかを議論しなければいけません。 

 

 例えば、将来の一つの仮定ですが、私の地元の愛媛県だと、松山市など大きな市と県と国がどうあるべきなのか、という問題意識です。 

 

 そこで、デジタル化が鍵になります。仕事が省略でき、広域で行政サービスを展開しやすくなるからです。ただ、デジタル化を進めるには(ITに強い)人が必要です。有能な人をどう確保するか考えなければいけません。 

 

 ――土木などの技術職の公務員はすでに人が足りていません。 

 

 デジタル化などで人手不足を補いつつ、技術系の職員はある程度、(複数の自治体などで)共通で働いてもらう必要があります。 

 

 ――改革に向けて、どのような手を打っていますか。 

 

 総務省の「持続可能な地方行財政のあり方に関する研究会」に、今回は(人口減少時代の地方自治体の在り方について)深掘りしてほしいと頼みました。今までのようなありきたりの議論をしている余裕はないのです。 

 

 ――一方で、知事、県議会議員、市議会議員など、既得権を失う人がいるので、都道府県庁不要論には抵抗もあります。 

 

 現実的に、ある地方の村は、役場が28人定員なのに対して、14人しか職員がいない。一部の地域では、すでに問題が顕在化しつつある状況になっているのです。 

 

 人員不足や将来の体制の在り方について、国、県、市町村が、協力して問題に取り組むことが必要となるでしょう。 

 

 ――国、県、市町村が枠を超えて協力するのはいいアイデアですが、県知事からは「まずは国から改めるべきだ」という声も出ています。 

 

 私が言ってるのは今日明日のことではありません。何十年か先の話であって、次の世代のことについて責任が持てるよう、長期的な視点で一緒に考えてもらいたいのです。 

 

 ――地方に身を切る改革を求めるだけでなく、国会議員の数も減らすべきだとお考えでしょうか。 

 

 極端に言えば、(選挙区だけ残して)比例代表はなくしていいという議論を展開する人たちもいます。いずれにしても、国も地方も、今のパターンがいつまでも続くということはあり得ないのではないかということです。 

 

 Key Visual:SHIKI DESIGN OFFICE, Kanako Onda 

 

ダイヤモンド編集部/千本木啓文 

 

 

 
 

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