( 292652 ) 2025/05/21 04:28:18 0 00 “失言”で窮地に立たされた江藤農水相
「私はコメを買ったことはありません」──江藤拓・農林水産大臣の“失言”に消費者の批判が集中している。佐賀新聞(電子版)は5月19日、「『私はコメを買ったことはない』江藤拓農林水産相 『支援者がたくさんくださる』 佐賀市の講演で」との記事を配信。たちまちネット上で拡散し、Xでは《国民感情を逆撫でする酷い発言》といった投稿が殺到して今も大炎上中だ。担当記者が言う。
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「江藤農水相の『支援者の方がたくさんくださるので、まさに売るほどある』という発言も看過できませんが、信じられないのはコメを贈ってくれた支援者も批判しているような部分があることです。江藤農水相は受け取ったコメについて『わざとじゃないだろうが、いろんなものが混じっている。黒い石とか入っている。家庭内精米をした上で精米機に持って行く』と言い放ったのです。まるで支援者のコメは、ゴミだらけの粗悪品だと受け止められても仕方ありません」
江藤農水相は大臣会見で、スーパーに足を運び、コメの値段をチェックしていることが“自慢”だった。
「4月18日の会見では《私も週に2回は必ずスーパーを回るようにしております》、5月9日の会見では《私もできるだけ週2回はスーパーに足を運んで備蓄米の調達状況を見るようにしております》と発言したことが農水省の公式サイトには書かれています。特に5月9日の会見では高齢者や主婦がコメの高騰に悲鳴を上げ、消費者が備蓄米を求めて様々な販売店をハシゴする姿をテレビで把握していると自負。《やはり何とかしたいという気持ちは、本当に強く持っています》とまで踏み込みました。しかしながら、自腹を切ってコメを買ったことがないということは、どれだけスーパーを回っても切実な意識は生まれないでしょうし、消費者の苦悩も他人事に思えて不思議はないと思います」(同・記者)
デイリー新潮は4月25日に配信した、
「江藤農水相は『コメ輸入拡大』に懸念を表明したが韓国米は軽視…高い関税を払って外国米を輸入しても『高騰のおかげで採算がとれる』皮肉な状況に」
との記事で、江藤農水相について以下のような疑問を呈した。
《果たして江藤農水相はどこの街のスーパーを回っており、その店で5キロの日本米はいくらで販売されているのだろうか》
《何よりも、江藤農水相が毎日コメを食べているとして、5キロいくらのコメを炊いているのだろうか》
「ひょっとすると江藤農水相は5キロ5000円のコシヒカリを買っており、だからこそ庶民感覚が分からないのではないか」という、多くの消費者が抱くであろう疑問に触れたわけだ。しかしながら実際は何と「タダ」だったことになる。
そもそも江藤農水相の問題発言は、今回に留まらない。率直に言って、消費者を逆撫でしてきたと批判されて仕方のない発言が目立っていた。
まずは2月28日、衆院予算委員会の分科会での発言だ。野党議員がコメの価格が高すぎると質問したのに対し、江藤農水相は食糧法に価格の安定は「書いてない」と答弁した。ところが実際は明記されており、江藤農水相は間違いを認めて謝罪、訂正した。
「ネット上では江藤農水相の不勉強をストレートに批判する投稿だけでなく、『コメの価格が1年で2倍に高騰したのだから、食糧法に価格の安定が書かれていると認めるわけにはいかなったのだろう』とか、『今の5キロ5000円という販売価格を安定させたいのだろう』といった、非常に皮肉の効いた投稿も拡散しました。そして江藤農水相の不勉強と言えば、『貧乏人は麦を食え』という有名な失言を知らなかったことも挙げられます」
今年2月の衆院予算委員会の質疑に関し、産経新聞(電子版)が2月7日、「『貧乏人は麦を食え』は誰の発言か…クイズ質問に江藤拓農水相、答えられず 衆院予算委」との記事を配信したのだ。
産経新聞は、れいわ新選組の共同代表を務める櫛渕万里議員が「『貧乏人は麦を食え』と言ったのは誰か」と質問すると、江藤農水相が「不勉強で知識がない」と答弁したことを伝えた。
この「貧乏人は麦を食え」は、現在と同じようにコメの価格が高騰していた1950年12月、参院予算委員会で当時の池田勇人蔵相が「所得の少ない人は麦を多く食う」という「経済の原則」について言及したことを指す。翌日の新聞各紙が「貧乏人は麦を食え」と報じたことで池田蔵相に国民の批判が集中した。
つまり江藤農水相は「池田勇人氏」と答弁すべきだったが、それができなかったというわけだ。
産経新聞は《国会質疑での「クイズ質問」には以前から批判がある》と櫛渕議員の質問を問題視しながらも、《多くの政治家が知っているエピソード》だとも指摘した。
「江藤農水相の問題発言は、まだまだあります。総務省が3月に発表した2月の小売物価統計調査で、那覇市のコシヒカリ5キロは5027円だったことが判明し、全国ニュースとして報じられました。ところが江藤農水相は4月1日の会見で、記者から“流通の目詰まりがあるという想定に対して、今回の調査結果をどう受け止めているか聞かせてください”と質問された江藤農水相は、“トイレットペーパーがオイルショックの時になくなりました。各ご家庭で、家庭の暮らしを守るためにみんなが買ったので、一気になくなりました”と切り出したのです」(同・記者)
ご存知の方も多いはずだが、1973(昭和48)年に第4次中東戦争が勃発。中東の産油国が原油の生産量を減らしたことで第1次オイルショックが起きた。この時、日本では「トイレットペーパーが不足する」というデマが飛び交い、多くの国民が買い占めに走った。
「トイレットペーパー騒動は、嘘の情報に日本人が踊らされたことで起きました。しかしコメの高騰問題は今、目の前で起きているリアルな現象です。コメが不足しているスーパーが散見されるのは事実であり、少なくとも首都圏では5キロ5000円の悪夢が再来する可能性を流通関係者が問題視しています。ところが江藤農水相はコメなら足りているという認識を改めません。それどころか、『コメがないのではないかという不安感』が消費者、流通関係者、集荷業者に存在し、それが『ネットや伝聞』によって増幅したことが高騰の原因だと指摘しました。これでは私たち国民全員がデマに踊らされてコメの買い占めを続けており、その結果コメが安くならないと断じるのと同じです」(同・記者)
他にも江藤農水相はコメ高騰を「転売ヤー」の暗躍が原因だとしたり、備蓄米が国民に届かない理由を担当者の人事異動やトラック不足などを指摘したりするなど、問題発言が目立ったと言わざるを得ない。
要するにコメ高騰の原因は農水省の失政ではなく、民間にあると責任転嫁に躍起なのだろう。しかしながら多くの専門家が「原因は農水省の失政」と口を揃えている。
備蓄米の放出を入札で行っていることも、自民党の小野寺政調会長は「なぜ国が儲けているのか」と疑問視した。
ところが江藤農水相は5月16日の会見でも「より多くの方々に入札にご参加いただけるように、1週間早く、本日公告を行うことといたします」と説明するなど、入札は継続する姿勢だ。
江藤農水相の公式サイトには「経歴」というコーナーがあり、そこには《1987 衆議院議員江藤隆美 秘書》との記述がある。
江藤隆美氏は江藤農水相の父親であり、建設相、運輸相、総務庁長官を歴任した大物政治家として知られた。
江藤農水相が父親の隆美氏の秘書だった時代を知るベテランの政治記者が言う。
「父親の秘書だった拓さんと打ち合わせを重ねたことがあります。ところが仕事は全くテキパキと進まず、『江藤隆美さんは、こんな息子に後を継がせるつもりか』と驚いたことがあります。拓氏は二世議員になりましたが、私の懸念は現実のものとなり、農水相として失言を連発しています。秘書時代の働きぶりを思い出すと当然という気がします」
ネット上では、支援者のコメを受け取ったことが収賄ではないのかという指摘や、即刻辞任が必要という意見が非常に目立っている。
デイリー新潮編集部
新潮社
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