( 292695 )  2025/05/21 05:19:29  
00

北九州市戸畑区にある資さんうどん1号店は、「讃岐うどん」をベースにした資さんうどんが関東進出し、成功を収めている。

他のご当地うどんも全国展開できる可能性があるかもしれない。

讃岐系や福岡系のチェーン展開成功の理由は、セルフうどん業態の普及と長時間・夜営業への対応である。

ビジネスモデルが重要で、資さんや丸亀製麺はセルフうどん業態で成功している。

他にも全国進出している武蔵野うどんや、関東平野には加須うどんや耳うどんなどのご当地うどんも存在する。

さまざまなご当地うどんがある中で、チェーン展開に向いているかどうかは評価が分かれる。

(要約)

( 292697 )  2025/05/21 05:19:29  
00

資さんうどん 1号店(北九州市戸畑区・一枝店) 

 

 香川県のご当地料理「讃岐うどん」をベースにした「丸亀製麺」「はなまるうどん」が全国制覇を果たし、北九州市のソウルフード「資さんうどん」は、すかいらーくHD傘下で関東進出を順調に進めている。他の「ご当地うどん」も、味覚に左右されず、全国各地に出店できるのではないか?  

 

 讃岐系・福岡系に続いて、チェーン店展開で全国区になれるご当地うどんを探し、各地を飛び回りながら検証してみよう。 

 

■意外と多い ご当地料理の全国進出 

 

 地方に根差す「ご当地料理」を提供する店が、東京進出とともに全国区のチェーン店に成長する。そこまで珍しい話ではない。 

 

 最近では関東1号店(千葉県・八千代店。130席)で「1日売り上げ200万円、来店客2000人」という、北九州市発祥「資さんうどん」の成功が記憶に新しい。 

 

 うどん業界でいえば、「はなまるうどん」「丸亀製麺」は香川県のご当地料理「讃岐うどん」を源流に持ち、どちらも東京出店を足掛かりに、全国チェーン店に成長を遂げた。 

 

 そして現在、東京・原宿に関東1号店を出店した「因幡うどん」、“ホリエモン”こと堀江貴文氏との出会いがきっかけで経営体制を一新した「うちだ屋」が、福岡発祥「博多うどん」の全国展開を視野に入れている。 

 

 うどん以外なら、「資さん」とおなじ福岡県発祥の豚骨ラーメンは「一風堂」「一蘭」など複数の全国チェーンが存在する。讃岐うどんの強すぎるコシ、豚骨ラーメンの匂いといった問題点も、蓋を開けてみれば各地で抵抗なく受け入れられており、多種多彩なご当地うどんも、意外とすんなり受け入れられるかもしれない。 

 

■成功の秘密 讃岐系は「セルフうどんを極めた」資さんは「うどんファミレス化」 

 

 讃岐うどん店の2社(丸亀製麺・はなまるうどん)が全国チェーン店化に成功した理由は「セルフうどん業態の普及」「長時間・夜営業への対応」にあった。 

 

 もともと香川県内に多かったセルフ形態のうどん店は、来客が自らうどん・天ぷらを取ってくれるため、薄利多売なスタイルの飲食店としては効率が良かった。 

 

 しかし香川県では、製麺所併設型・自宅併設型の店舗が、家族経営でうどんを格安提供しており、夜にうどん需要が激減するため、昼過ぎには店を閉めてしまう。営業時間が短い上に夜営業がないと売り上げも獲れず、競争してまでうどん業界で定着を目指す勢力など、生まれようもなかった。 

 

 

 その中で「はなまるうどん」は、家族で行けるテーブル席中心のきれいな店で「かけうどん1杯100円(当時)」を提供、その分天ぷら・稲荷寿司などをプラスで頼んでもらい、単価向上で利益を稼ぐスタイルを編み出した。 

 

 一方で、兵庫県で創業した丸亀製麺は1日を通じてゆでたて・切りたてのうどんを提供し、高単価・高利益な新商品の投入で経営を安定させた。美味しさはもちろんのこと、丸亀・はなまるはセルフうどん業態で集客・利益を両立できたからこそ、そのビジネスモデルを掲げて全国チェーンへと飛躍できたのだ。 

 

 一方で「資さん」は、丼物などのメニューが充実した「うどんメインのファミレス」のような業態を編み出し、一人客からファミリー層まで「とりあえず行けば、何か美味しいモノが食べられる」豊富なメニューで顧客を獲得してきた。なお、「うちだ屋」も、「資さん」と共通点が多い「うどんファミレス」業態だ。 

 

 すかいらーくホールディングスも「資さん」が編み出した「うどんファミレス」の存在そのものが「稼げるビジネスモデル」であったからこそ、240億円という大金をはたいてグループに迎え入れたのだ。 

 

 こうして見ると、讃岐系・福岡系は味だけでなく、ビジネスモデルが高く買われている。両地域とも日常食としてうどんが定着していただけでなく、「サッと安く食べたい」(香川県)、「仲間うちで集まれる店が欲しい」(福岡県)という常連の要望に応え続けたからこそ、全国に通じるビジネスモデルに変化したといえる。 

 

■すでにチェーン店が存在 武蔵野うどんは全国に普及するか 

 

 「武蔵野うどん」は関東圏での高い知名度に反して、他地域ではあまりなじみがない。 

 

 関東平野の中でも武蔵野台地は水源が少なく、水田より小麦栽培向きであったことから、郷土料理として広まったと言われる。讃岐うどんのようなツルツルとしたのど越しや、博多うどんのようなモチッとした柔らかさはないが、武蔵野うどんの麺は野太く、ゴツゴツした食感で、食べ応えは抜群だ。 

 

 提供エリアはかなり広く、川越市・所沢市などの埼玉県西部から、東京都内の多摩地区まで「武蔵野うどん」を看板に掲げる個人店が点在する。肉汁・醤油ベースのつけ汁は共通するものの、添えるものも「天ぷら」「ごぼうきんぴら」「かて(茹で野菜)」など、各地でバラバラだ。 

 

 

 千差万別すぎて組織的・特徴的な店舗展開には結び付きづらい、と思いきや、近年は埼玉県発の「武蔵野うどん 竹國」が、チェーン店として頭角を現してきた。 

 

 「武蔵野うどん 竹國」は1954年に狭山市で開業した「山崎うどん」を原点としており、2005年から多店舗展開を開始。2025年5月現在、本部直営・フランチャイズ店を合わせて20店以上を展開、東京都(東久留米市、青梅市など)、愛知県(小牧市・豊田市など)にも進出しているという。 

 

■武蔵野うどんに入店してみると… 

 

 さっそく入店してみよう。看板商品である「肉汁うどん」のほかに「鳥汁」「カレー汁」など温かいつけ汁が6種類、冷たいメニューが3種類。ほか天ぷら6種類と、かなりシンプルなメニュー構成だ。 

 

 麺は並盛(350g)、中盛(500g)、大盛(700g)から選べる。10分ほどで提供された「肉汁うどん」の麺は仰々しい丼に盛り付けられ、「あぁ、ボリューム感を出すための上げ底か!」と思いながら食べ進めると……上げ底でなく、下までぎっしりとうどんが入っている。 

 

 噛むと押し返されるような剛麺と、「底から湧いているの?」と言いたくなるほど肉だらけの肉汁を楽しみながら、ボリューム満点にも程がある肉汁うどんを完食した。この武蔵野うどん、満足度がかなり高い。 

 

 ただ、うどん一食の満腹感・満足度が高すぎて、天ぷら・一品料理以外のセット注文にはつながりづらい。讃岐うどんをしのぐ剛麺は女性・子供・ファミリー層に訴求しづらく、ガッツリ食べたい方はラーメン・牛丼などとの選択で迷ってしまう。このあたりが、「武蔵野うどん」がご当地うどんの域から出なかった原因だろう。 

 

 その中でも「武蔵野うどん 竹國」の麺は、剛麺ながらもしなやかさを残し、荒々しい麺の断面がしっかりとつけ汁を吸う。柔らかめの麺が好まれる地域には向かないにせよ、どこまで「武蔵野うどん」で全国展開ができるか、注目したい。 

 

 ほか関東平野では、のど越しの良い麺を冷汁のつけ汁などで食べる「加須うどん」(埼玉県加須市)、しょうゆベースの汁で煮込んだ「煮ぼうとう」(埼玉県深谷市など)、平たくした生地を耳状に練り、汁に入れる「耳うどん」(栃木県佐野市)などのご当地うどん・麺料理が存在する。 

 

 

 いずれも量産化やチェーン展開は難しそうだが、名店を巡って味や歴史的な背景を噛みしめるのもいいだろう。 

 

■意外と多い「ハレ需要」「献上品」のうどん チェーンストア向きではない?  

 

 全国で「5大ご当地うどん」といえば、「讃岐うどん」(香川県)のほかに「稲庭うどん」(秋田県)、「五島うどん」(長崎県)、「水沢うどん」(群馬県)、「氷見うどん」(富山県)を指すことが多い。 

 

 うち稲庭・氷見などは幕府や藩への献上品だったこともあり、製法すら秘されていた高級品だ。 

 

 特に「稲庭うどん」は、稲庭家(佐藤家)が製造を始めた1665(寛文5)年から、300年以上も一子相伝(子供一人のみに製法を伝授)で受け継がれており、熟成と微調整を繰り返しながら3〜4日かけて麺を練り上げるという工程は、チェーン店のような「店内製麺、多量提供」向きではない。 

 

 上記の「5大うどん」のうち、稲庭・氷見は江戸時代に幕府への献上品として用いられており、製法は長らく門外不出。いまも高級品として扱われ、チェーンストアでの「安く、多量に」提供するようなものではない。 

 

 現状で、稲庭うどんは東京なら銀座・日比谷、海外なら香港・ソウルにある「佐藤養助商店」直営店で味わえる。 

 

 いずれも相応に値段は張るものの、滑らかな細麺と丁寧に取られた上品なダシの組み合わせが絶品!  かつ「これは庶民の食べ物ではない」「チェーン店で毎日食べるものではない」という高級品としての佇まいを、ひしひしと感じる一品だ。 

 

■他にもいろいろ 首都圏で食べられるご当地うどんも 

 

 書ききれないものの、全国には絶品のご当地うどんがまだまだ存在する。 

 

 讃岐うどん、福岡県のうどんがすんなり受け入れられていることから、「ご当地うどん」の定着に、麺の硬さ・柔らかさは関係ない……と思いきや、さらに柔らかい伊勢うどん(三重県)、伊勢うどんよりさらに柔らかい「鳴ちゅるうどん」(徳島県)まで来ると、さすがに好みが分かれる。 

 

 特に「鳴ちゅるうどん」の麺は、箸で持ち上げるとブチブチ切れるほどの柔らかさだ。 

 

 硬い麺なら、武蔵野うどんよりさらに麺が図太い「吉田うどん」(山梨県)も食べておきたい。一時期はカップ麺で商品化されたこともあり、今でも都内の専門店は、コアなファンがよく訪れているという。 

 

 

 
 

IMAGE